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YUMA20→40  作者: 玉城毬
6/12

天地3

 それから2年。

 限られた時間で、おいしい食事をして、たくさん話して、淋しさを埋めてきた。

 手頃で居心地のいい関係を、疑うことなく消費してきた。

 私も28歳になり、今の恋愛に満たされていた。

「久しぶりに、焼き鳥にしない?」

 二人が初めて会った店だった。

「いらっしゃーーい」

 なじみの店長が、元気よく迎えてくれる。

「今日は、奥の席でいい?」

 いつもはそんなこと気にしないのに、今日は少しかしこまったようだった。

「うん、いいよ」

 彼の提案に応じながら、いつもと違うなと感じた。

 遠藤は、緊張した感じで私の方を見た。

「今日は、まじな話があって」

 なんだろう、こっちまで緊張する。

 まさか、プロポーズ?

 それとも、……破局?

 両方の事態を想定した。

 手短に注文すると、彼はぼんやりと中空を眺めた。

「結麻と会って、3年目になるんだね」

 彼の様子は、明らかに変だった。

 ああ、潮時か……。

「結麻といて、俺本当に楽しかった、ありがとう。

 だけどごめん、俺向こうと結婚することになった。

 だから、今日が最後になる」

 彼は目を強く閉じて、テーブルに頭をこすりつけて詫びた。

 突然やってきた、感謝と謝罪による、サブかの終了宣言。

 いつかはこうなるだろうとどこかで思っていたつもりだったけど、気持ちの準備が間に合わず、とてもショックだった。

 もしかしたら私が本命になるかもしれない淡い期待とか、大人の関係維持してるみたいな勘違いとか、……。

「そっか、……」

 物分かりがいいように答えてみたものの、内心はぐちゃぐちゃで、収拾がつかなかった。

「ひょっとして、おめでた?」

 確か彼女は私より7つ上だったはず、35歳くらいなら大いにありそうだった。

「いや、違う。

 彼女の親が介護になって、それでね……」

 彼は真剣に、暗い表情で教えてくれた。

 そうだったのか。

 自由人だと思っていたけど、相手の事情が変わって、それで真剣に向き合うことにしたってわけだ。

 私といる方が、身軽で気楽なはずなのに。

 なんでわざわざ、苦労するのか。

 丁度そこへ料理が来て、二人は無言のまま食事した。

 彼は、私の言葉を待っているようだった。

 彼の気持ちが変わってもう続けられないんだから、私もお別れしなくっちゃ。

「ごちそうさま。

 じゃあ最後ってことで、ゴチになります」

 目を合わせられない彼のことを断ち切るため、私は気力を振り絞った。

「スマホの個人情報全部消して、清算しましょう」

 二人は黙々と自分の操作をして、お互いに確認し合った。

「2年半、ありがとう。

 すごい勉強になった。

 彼女と家族のこと、大事にして下さい」

 どうにかそれだけ言うと、私は支度して店を後にした。

 数歩踏み出して、涙が止まらなかった。

 好意はもらえたけど、パートナーには選ばれなかった。

 最初から知ったうえで、それでいいって思ってたけど。

 人の気持ちって生きてる、こんなに辛くて、惨めだなんて。

 幸せになりたい、苦労も共にしたい。

 長い春を結果的に実らせた彼女が、妬ましかった。

 2年間、すごく春気分だった。

 でも、一人でいる時、不安としんどさもあった。

 自分の気持ちに向き合ってきたから、後悔してない。

 でもかなり疲れたから……、恋活はしばらくお休みしよう。

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