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YUMA20→40  作者: 玉城毬
3/12

憧憬3

 21歳のクリスマス。

 るりは残念ながら、仕事が忙しいため今年は企画できないと言われた。

 「仕事で忙しい」「友達と楽しむ」「恋人と過ごす」

 無理して都合をつける必要はないのだけど。

 家族でチキンとケーキを食べるのとは別に、家族以外の人とも楽しんでみたいという日本独自のクリスマス幻想に、私は踊らされていた。

 なにかしたい、なにかないかなとそわそわしながら、Xデーは近づいてくる。

 別に人からチェックされるわけでもないし、パーティーとかプレゼントとかない分出費も抑えられるから、逆にコスパいいじゃん……。

 そんな風に切り替わってきた20日、なるからメールが来た。

「もうすぐクリスマスだね!

 イブの日空いてたら、俺ん家来ない?」

 ストレートなお誘いだった。

 24日、土曜日なんですけど……?

 私達は友達だけど、告られるとかーー。

 一人で悶々としてしまい、るりに相談した。

「えっ、空いてるんならいーじゃん?

 まぁ友達なわけだし、結麻が大丈夫なら行くべきだよ」

「別に、おかしくないよね?」

「全然ありでしょ?

 聖夜、男と女、酒とケーキ、プレゼント……。

 結麻史上初じゃない?

 行ってきなよ~~」

「なんか楽しんでないーー!?」

「楽しいし、なんかうれしい。

 私は仕事だから、その分二人で楽しい夜を過ごしてねっ」

 彼女はすごい後押ししてくれた。

 ……。

 うれしいような恥ずかしいような気持ちになりながら、21日、行きますの返事をした。

 

 当日。

 私は少しでもオシャレに見える服装を選び、普段しないメイクやアクセをして、約束の時間に彼の自宅近くにやってきた。

「おうちの近くまで来ました」

 夕刻でも真っ暗ななか、街灯の下メールを送る。

「今行く、待ってて」

 2分程して、なるが玄関から出て招いた。

「今日は来てくれてありがとう。

 どうぞ」

「おじゃましまーーす」

 私はドキドキしながら、なるの家に上がった。

 こぢんまりとした戸建て、ごく普通の一般家庭だ。

「友達遊びに来ました~~」

 なるの後についていくと、居間でテレビを見ながらくつろいでいる彼の両親に出くわした。

「あのっ、こんばんわ、おじゃまします……」

 突然のことで頭が真っ白になったけど、なんとか挨拶した。

「いらっしゃい、ごゆっくり」

 二人はにこやかに返答してくれた。

 親との対面は一瞬で終わり、2人は真っすぐなるの部屋へ入っていった。

「あのこれ、プレゼントです、どうぞ」

 私は忘れないうちにと、来る前に買った靴下とハンカチの贈り物を彼に渡した。

「えーーほんと??

 ありがとう!

 俺、プレゼント用意できなかったんだけど、夕食でお返しってことでいいかな」

 なるの部屋のテーブルには、デパ地下で買ったと思われるオードブルと、軽そうなフルーツワイン、小さなかわいらしいケーキが並べられていた。  

 彼が私のために準備してくれたと思うと、私はとてもうれしくなった。

「うん、うれしい。

 こちらこそ、ありがとう」

 特別な日が雰囲気を高めるのか、さっそく二人は乾杯してディナーを味わった。

「ちょっと古い映画なんだけど」

 それは20年くらい前のクリスマスの映画で、30歳くらいの男女の恋、少しのラブシーンと、切ない別れがあった。

 クライマックスの残り20分くらいの時。

 ふと、なるが立ち上がったかと思うと、私をぬいぐるみのように抱きかかえて密着して座ってきた。

 えぇ、なになに、どういうことーー!?

 私は急に接近されたことになにも言えず行動できず、パニックになりながら固まっていた。

 なるもそれ以上なにかすることもなく、そのまま最後まで見終えた。

 映画が終わり、彼が私を覗き込んで聞いてきた。

「映画、おもしろかった?」

「う、うん……。

 すごく大人な恋愛だった!」

 私は恥ずかしさで途中から映画の内容も入らなかったし、そう言うだけで精一杯だった。

「そっか、よかった!」

 なるは笑顔でそう言うと、最後に軽くぎゅっとして、私を解放した。

 やっと息ができたような気がして、慌てて呼吸を整える。

 今のって、ハグ!?

 どうなるの、これ~~!!

 私は次の展開に、期待や興奮を感じていた。

 彼はそんな私を見て、優しく笑って言った。

「今日は俺につき合ってくれてありがとう。

 遅くならないうちに、近くまで送るよ」

 えっ……。

 舞い上がっていた私は、冷静に現実に引き戻された。

 さっきのスキンシップは、なんだったの!?

「そ、そうだね、じゃあお願いします、……」

 気まずくなりたくなくて確かめられず、私は彼の言葉通り、支度をして送ってもらうことにした。

 なんだかよくわからないまま、一緒に外に出た。

 歩き出した二人は無言だったけど、3分程して、彼が口を開いた。

「手、つないでいい?」

 今度はまた、スキンシップ……。

 少しの間ためらっていたが、おずおずと手を差し出した。

 あったかい、カサついてない本物の男の人の手。

 彼から仕掛けられる友達以上恋人未満ごっこに振り回されながら、私は翻弄されるのも悪くないのかなと思い始めていた。

 周りからみたら、カップル??

 下がったり上がったり、女心は忙しい。

 それから5分くらいで、人の多い通りに出た。

「あの、ここで大丈夫」

 私はそう言って、なるに向かい合った。

「結麻ちゃん、今日はありがとね」

「うん、誘ってくれてうれしかった」

 二人は礼を言い合った。

 私達って、恋人候補なのか……。

 なんとか少しでもはっきりさせたかった。

 すると次の瞬間、真顔だった彼の顔が崩れて、いきなり笑い出した。

「結麻ちゃん、わかりやすすぎ!

 もっと警戒しないと、危ないよ?

 でも俺の心温めてくれて、ありがとねっ。

 もっと恋愛の駆け引きすれば、きっと彼氏ゲットできるから、がんばって」

 なるは勝手に言いたいことをぶちまけた後、手を上げて夜の光に消えて行った。

 私はショックの余り、しばらく立ち尽くしていた。

 恥ずかしいのと悔しいのとで、味わったことのない屈辱だった。

 体の傷は少なかったけど、心はすごく傷ついた。

 純朴だって思うんなら、初めからイジらないでよ!

 私は真剣に異性の友達や恋人を求めていただけで、恋愛の駆け引きなんか知らないし、そんなことしたくないっ。

 奥手娘にだって心があるんだよ、私はおもちゃなんかじゃないんだから……!!

 淡い期待を台無しにされた、21歳の苦いクリスマスだった。

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