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YUMA20→40  作者: 玉城毬
1/12

憧憬1

 私、岡本結麻、女子大生、今日で20歳になりました。

 誕生日早い方じゃないから、友達が先に成人していくのがすごくうらやましかった。

「結麻の20歳を祝って!!

 かんぱ~~い」

 友達のるりが、二人きりの「結麻の20歳をリアルに祝う会」を開いてくれた。

 初めての、お酒。

「どうよ??」

「……なんか、熱くなるねっ」

「いいリアクション、頂きましたーー」

 るりは超絶ポジティブな性格で、ネガ寄りな私をいつも盛り上げてくれる。

「ワイングラスに入れて飲むだけで、すごいオシャレ!」

「でしょ?

 結麻の初めてのお酒デビュー、スペシャル感出しますよぉ」

「るり、今日はありがとう!

 でも、全部は飲めないからね、……」

 るりはかなりの酒好きだからか、何種類もの酒が置いてあった。

「ま、ま、これは自分がいつも通り飲みたいだけだから、気にしないで」

 そう言って、いいペースで飲み始めた。

 私が飲めるようになって、一緒にお酒が飲めてうれしいみたい。

 うちの家系からして飲めない見込みがあるけど、それでも大人の階段一つ上った気がして、彼女の計らいがありがたかった。

 3%の軽~~い缶チューハイで、私はすぐにほろ酔い気分になった。

「あ~~、いい気分!!

 幸せだなぁーー」

「結麻、もう顔ピンクだよ、かわいくなっちゃって。

 とりあえず、ファーストお酒はこのくらいにしとこう」

 るりは私の酔いっぷりを見て、お酒を下げて水を出してくれた。

「るり、慣れてるね~~」

「お楽しみは、まだまだあるから!」

 そう言って彼女は、自分のバッグから小さな箱を取り出した。

「ファーストたばこ、いってみる?」

「ーー」

 そういや、たばこも吸えるんだっけ。

「あ、無理しないでね?

 100%、体に悪いから」

 るりはバッグに戻そうとした。

「あ!

 1本だけ、もらっていい??」

 るりは目を丸くして、一瞬止まったが、

「どうぞ。

 けど、その先は責任持てないからね?

 私が言っても説得力ないけど」

 彼女はそう言って、たばこ1本と、ライターと、灰皿を差し出した。

 ーー依存症になっちゃったら、どうしようーー

 ぐるぐる考えながら、ライターを点けようとした。

「あれ、点かない!

 ライターってこんなに重いの!?」

「安全第一になってるからね。

 カチッとライターとは、訳が違うのよ」

 彼女が慣れた手つきで、火を点けてくれる。

「ありがと、じゃ、ーー」

 もらったたばこに火をつけて、口に含んでみた。

「どう??」

「!!

 ゲホゲホッ」

 うまく吸い込めなくて咳き込んで、慌てて灰皿に置いた。

「吸うのもコツがいるからね。

 大丈夫??」

「うぅーー。

 おいしくなーーい、いらな~~い……!」

「それがいいよ」

 彼女は笑って、灰皿を片づけた。

「とりあえず、20歳からの体験はできたね!

 今の気分は、どう?」

 ちょっと考えてから、私は感想を述べた。

「軽いお酒は、おいしかった!

 でも、たばこはなし~~」

「うんうん、貴重な初体験だったね!

 気をつけないと私みたくなるから、結麻はそんな感じでいいと思うよ」

「大人の階段、一気に上ったーー。

 ねぇ、お楽しみのケーキ、食べようよっ」

「そだね、甘い物でお口直ししましょ」

 彼女は冷蔵庫から小さなホールのケーキを出してくれた。

「ろうそくして、カメラ撮ろっか?」

「いい、いい、そんなの。

 とにかく食べようっ」

 記念の一枚より、とにかく甘いもので体を満たしたかった。

「じゃあ。

 結麻、20歳おめでとう!」

「ありがとーー!

 では、いただきまーーす」

 それぞれがフォークを持って、甘味の塊をすごい勢いでシェアしていった。

「あーー、食べ終わっちゃった。

 年に一度の、贅沢……」

「ケーキでお腹いっぱい、若さと健康に感謝!」

 友達と好きなように誕生祝いができて、すごく幸せな気分だった。

「ねぇ、結麻にお願いがあるんだけど」

「えーー、なに~~?」

「私がメイクしてもいい?」

「えぇ~~」

「今日、もう帰るだけでしょ?

 結麻ってナチュラルっていうか、いつもほぼすっぴんじゃない?

 だから、前からやってみたかたんだ~~」

「うーーん」

 はじめは気乗りしなかったけど、日頃から仲良くしてくれてる友の頼みだし、帰ってすぐ落とせばいいし、いっかーーと思った。

「じゃあ、かわいく綺麗にしてね?」

「オッケーー!!

 るり姉さんに、任せなさい」

 そう言って、彼女はすぐに自分のメイク道具一式を持ってきた。

「終わるまでちょっと、がんばってね」

「うん、……」

 その「ちょっと」は、結局30分以上かかったんだけど、私には倍の1時間くらいに感じられた。

「じゃーーん!!

 できたよ、見てみて~~」

 彼女が鏡を手渡してくれた。

「ーーお、おぉーー……」

 そこに映り込んだ私は、確かに目力強めでいつもより変身していたんだけれども、明らかに似合ってないなと思った。

「どう、どう??」

「うん、斬新!!

 目がすっごくおっきくなった」

「でしょお?

 じゃあ、記念撮影するから、笑顔下さーーい」

「アハハハ……」

 苦笑気味に撮られた私の画像が、20歳最初の記念すべき一枚になった。


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