第1話 仮面の暗殺者
頭が痛い。吐き気もする。
苛立たせるのには十分な理由である。
定期的に頭痛に襲われる。いつも持ち歩いている鎮痛剤を忘れたことに気づいてからは、心臓の鼓動を打つリズムに合わせて、痛みを強く感じていた。
大通りから枝葉のように伸びる裏路地へと入った。自宅へ向かうには、大通りを進むよりは裏路地を抜ける方が早い。と、足を進めていたが、目の前の飛び込んできた光景を見て、思わず舌打ちをした。
「痛いのは嫌いだろ?じゃあ、それをよこしな」と指をさした。
農業が盛んであるこの地区は、平和な国の中でも、ひと際、のどかなところである。だが、そんな地域にも、乱暴な人間は存在しているのが事実。若い男3人が、大きなバッグを大事そうに抱える男をとりかこんでいた。
「この中には、着替えしか……」
「なら渡せよ、オッサン」と、中年の男の太ももに膝を入れる。
オッサンという年では無さそうだが、老け顔に突き出たお腹。囲んでいる暴漢よりも年上には違いないので、オッサンなのだろう。
蹴られた男は顔をしかめたが、バッグを抱える両手の力を緩めようとはしなかった。
「大事そうだな、それ。悪いけど、知っているんだよなぁ。その中身」と、ニヤついている男の1人がバッグに手をかける。
「こ、これだけは」
「うるせぇよ」と中年の男の顔を殴る。が、中年の男はそれでもバッグを強く握りしめたままであった。
苛立っていた。その一方的な暴力に対してではない。この道を狭い路地をふさいでいるこの男たち4人にである。この頭痛はさらに痛みを増してくるのに、自分が行こうとする道を妨げるこの暴漢3人と老け顔の男が、邪魔でしかなかった。
暴漢の1人がこちらに気づいた。第一声が「なに、見てんだ。殺すぞ、クソガキ」だった。その目つきは、完全に威嚇する目つきである。
その声に、残りの2人の視線もこちらに向いた。そして、老け顔の男のものも。
「リ、リオじゃあねぇか。た、助けてくれ」
リオと呼ばれた少年は老け顔の男をチラリと見た。確か、同じ農園で働く男で、名前は……と思い出そうとしたときに、ズキンと鈍い痛みが走る。そんなことはどうでもいい。とにかく頭が痛かった。
「おい、そこのガキ。泣かされたくなかったら、どっか行け」と言いながら、バカにしたような笑みを浮かべた男がいた。
痛みとともに、苛立ちが怒りへと変わる。気が付けば、そのにやけた顔に拳をいれていた。男は何も理解できないまま、後ろに吹き飛び、動かなくなった。
突然のことに目を奪われていた暴漢2人が我に返り「お前、やる気か」と大声を上げる。リオに近づき、胸倉をつかんだ。が、すぐにその場で崩れ落ちる。もう1人も勢いをつけて殴りかかろうとしていたが、それもかなわず、うずくまった。腹部にリオが1撃をいれていた。
「すげぇ」と老け顔の男は、先ほどまでの恐怖感と突然訪れた安心感で、その場に崩れ落ちるように座り込んだ。殴るまでもなかった。
頭が痛い。
倒れている男の脇を通り過ぎようとしたとき、後ろから声が聞こえてきた。
「ありがとよ、リオ。いつもの作業着じゃあないけど、わかるだろ。俺だよ、カズゥだ。ありがとう。ホント助かったよ」と大声で言った。だが、振り向かなかった。それよりも、その大きな声が頭に響く。
角を曲がったところで、めまいに襲われ、足がもつれる。が、その体を支えられ、倒れるのは免れた。
「リオさん。ダメじゃあないですか」
長身の男。長い黒髪を後ろで束ねていられており、それが風で揺れていた。その長身の男は涼しげな笑みを浮かべたまま「忘れ物です」とリオに小さな紙袋を渡した。
リオは乱暴にその紙袋の中に手を突っ込み、中から1粒の錠剤を取り出し、口に入れた。長身の男は何も言わずに、水が入ったボトルを差し出してきたので、それを受け取り、喉の奥へと流し込んだ。
「リオさん。派手にやっちゃいましたね」
長身の男はクスクスと笑う。「派手にやっちゃあダメですよ」と付け加える。
「ああ、分かっているよ、ロイド」
長身の男、ロイドは笑みを浮かべたまま、満足そうに頷く。
「知っていますよ。念のため言っただけです。あと……」と言いながら、リオの耳元へ口を近づけて「変なのが入っているみたい」と告げた。
暦は真夏を過ぎたとはいえ、降り注ぐ太陽は真夏のものとまだまだ変わる様子は見えなかった。強い日差しが照りつけるなか、カンザ国の南東に位置するヤサキ区では、急ピッチで最大1000人程収容出来る建物を建造が進んでいた。
このヤサキ地区では農業を主産業とし、見渡す限り田畑が、山間部では果樹園が広がっている。
10年前、カンザ国は保有していた軍事を放棄した。
武力を一切持たない完全平和主義を宣言した。そして、それに合わせて、国の形も変えてきた。
その大きな変革の1つの中に、区画の見直しがあった。
国全体の人や物の流れ、生産の効率化が図られた。地区ごとにその役割を決め、人や産業に合わせて、設備投資がなされた。
南東部に位置するヤサキ区は、他の地区に比べ、平らな土地と緩やかな斜面を持つ山間部もある。また、農業に重要な、安定した水源と日照時間が確保出来る地区のため、主産業を農業と定められた。その役割を担う土地として機能し始め、カンザ国の農作物の九割以上をこの地区で生産することを目標にし、農業の知識に明るいものや、それに従事する者をこの地区に集められているのである。
広大な農業地を保有する緑豊かなこの地区に、無機質で飾り気のない大きな建造物は、住民の目には異質なものに映っていた。
「ほんとに、あんなもん。この国にいるのかねぇ」
タオルで汗を拭いながら、遠くに見える工事が続けられている建造物を眺めていた。
「ああ。あれって、たしか、隣のダーシィ国の軍人が入るんだろ。ワシにはよくわからねぇけど、完全平和を言っているこの国が、軍人の施設作るっておかしくねぇか」
「やっぱり、そう思うだろ。そうだよなぁ」という会話が耳に入った。
思わず別の男が、汗で濡れたタオルをしぼりながら2人の会話の中に割り込み「いやいや。あれは悪くねぇ」と言い切った。老け顔のカズゥである。
「だいたい、完全平和主義ってぇのが甘ぇんだよ。軍事大国のダーシィが周りの国ににらみをきかせているから、成立しているんだよ。ダーシィのおかげで、この国の周辺では争いが起こってねぇってのは、うちの5歳のガキだって知ってるぜ」
「でもなぁ。やっぱり、よその軍が入ってくるのはなぁ」
そのため息まじりの言葉に、カズゥは思わず反論したくなった。
「だけどよ、考えてみろよ。完全平和主義を宣言してから、国の軍事費が必要なくなった。その分、税が軽くなったんだ。それを聞きつけて、この国には人が集まり始めている。おそらく、もっと増えるぜ。だから、商売も今まで以上に元気になりつつある。おかげで、俺らの米やら、野菜やらも、10年前と比べたら、よく売れるようになったくらいはわかるだろ?これでも、まだ、始まったばかりだと思う。さらにその売上は上がっていくはずだ。つまり、俺らの取り分も、さらに多くなる。それ以前に比べたら……思い出したくもねぇ」とカズゥは頭を抱えるようなしぐさをした。その後、表情を真顔に戻し、さらに言葉を続ける。
「だがよ、そこが問題なんだ。そんなお金が集まるような発展をし始めているこの土地なんだから、みんな欲しくなるはずだよな。俺が言いたいのは、山賊が荒らしに来るとか、そういう小さい話じゃあねぇぜ。商売繁盛している土地は、国にとっては金のなる木。今までは、完全平和をバカにしたり、無抵抗の国を攻めるというのは正義に反するとかっていう自分勝手に美学を唱えている国もあって、今まではこのカンザ国は侵略にあうことはなかったが。だが、そんなこと言っている場合じゃあないってほどのものがここにはある。金のなる木どころか、金があふれる国になりそうなカンザ国が欲しくなった近隣の国の矛先はこちらに向く、だろ?」
「そりゃあ、そうだけど。だけどなぁ」
「だから、完全平和主義っていう甘い公約に危機が迫っているわけだ。よその国から目をつけられているってことだからな。だから、隣のダーシィに守る力をお金で買ったんだよ。ダーシィは同盟国であり、ロルク王の弟であるハルク王が統治している国だから、1番信用出来るからな」
「なるほどなぁ。だから、こんな田畑しかない土地にも、こんな施設が出来るわけだ」
「そのとおり」
カズゥは、目の前の男に理解されたことに満足し、笑みを浮かべながらうなずいた。
「強固な治安を手に入れることになるんだから、ますます豊かになるぜ、この国はよ」と付け加えた。
「へぇ。すげぇ、話だなぁ。リオ、知ってたか?」
寝転がっていたリオは「さぁ」とそっけなく返事をした。
たまたま通りかかったところで助けられたカズゥは、あの日以来、リオのそばでいることが多くなっていた。
リオの愛想のない態度にカズゥはため息をついた。
「これだからいけねぇ。最近の若いもんは、無気力で興味もねぇ。リオにおいては愛想もねぇ。それじゃあ、女にもモテねぇぞ」と豪快に笑う。
そんな会話の途中で、誰からともなくぞろぞろと立ち上がり始めた。
カズゥは時計に目をやり「もう時間か。おい、リオ。休憩終わりだ。仕事に戻るぞ」と声をかけた。
リオは、ポケットから薬を取り出し、それを水で喉の奥へ流し込んだ後、カズゥの後に続いて、広大な畑の中へ入っていった。リオも含め、ここの地主に雇われ広大な土地で何種類もの作物を栽培していた。
カンザ国の完全平和主義を主とする国の政策がもたらす効果のひとつに、税率の引き下げがあった。武力を放棄することによることで、これまでの国の予算の中で高い比率を占めていた軍事が不要になったのである。その不要になった予算を別のことに充てるではなく、税率を下げることをカンザ国は選んだ。そのことに過敏に反応したのは、近隣の商人たちであった。
利益を重んじる商人にとって、税率が下がる、税率が低いという土地は、商人たちにとっては、魅力的なものである。カンザ国ロルク王の思惑通り、人が集まった。人が集まれば、物流が活発に動き始める。その結果、商業、工業、農業すべてが活性化され、宣言から10年経った今、すべての分野で好景気に湧いていた。税率を下げたが、人口が増え、経済も発達し始めているため、以前よりも税収は増え、国庫は潤い始めていた。
リオやガズゥの雇い主もまた、その景気の動きを察知した他国から入ってきた商人であり、その投資により、さらに財を増やそうとしている野心家の1人である。
ガズゥは、苗木の手入れをしながら、隣で作業をしているリオにだけ聞こえるだけの声量で「あの時、助けてもらったバッグ。あれには、俺にとっての軍資金が入っていたんだ」とリオの方を見た。
リオは特に興味を示さなかった。だが、ガズゥは、気にせず言葉を続ける。
「俺はなぁ、もう少しで目標にしていたお金が貯まるんだ」と、再度、リオの方を見た。リオも、ちらりとカズゥに視線を向けた。
「パッときた他国のヤツでも、これだけ大きな商売が出来るほど、今、この国は勢いにのっているんだ」
「俺は独立するぜ」と強く自分に言い聞かせるように言った。
リオは、かまわず作業を続けた。
「いいか、リオ。この国の整備は、ダーシィの軍人施設が完成したら終わりじゃあねえ。これが始まりだと俺はにらんでいる。カンザの治安が保証されるうえに、インフラも整備されつつある。他国間との往来が絶対に増える。カンザはさらに人が増えていく。人がさらに集まれば、物流だけじゃあないものも活発になってくる。なにかわかるか?」
カズゥはリオの方をちらりと見た。やはりリオは黙々と作業を続けていた。苦笑いを思わずした。これは、己を奮い立たせるために、自分にとって、大事な会話だ。たとえ、一方的だとしても。
リオの視線がこちらの方を向いた。自分は、今、どんな表情をしているのだろうか。と思いつつ、言葉を続けた。
「まあ、こんな俺でも、ここまで読んでいるんだ。今、商売をしている人や、すでに大規模に展開している組織、富豪なんかは、こんな情勢の読みをしている人間もいるはずなんだ。いや、それ以上の読みを展開しているかもしれない。事実、他国からの資本で、宿泊施設を建設する計画が進んでいるという話も耳にしている。しかも、噂では、あの軍人施設より大きいのが出来るらしいんだ。だからよぉ、ここを辞めるが、ここと縁は切らねぇ。ここの農産物を俺が仕入れて、宿泊施設を専門とする食品卸売業をしようと考えているんだ」
リオの視線は、カズゥの方に向いたままだった。
ガズゥは思わず笑みを浮かべ「いいアイデアだろ」と言った。
「来月、給料を貰ったら俺はここを出ていく。だから、リオ。未来の大富豪、ガズゥ様の名を覚えてきな。あの時のお礼もしたいしな」と親指を立てた。
「この事は、誰にも言うなよ。マネされると面倒だからな」とカズゥは小声で付け足した。
リオは再び、自分の手元に視線を戻していた。
その日の夜。
切っ先の鋭い刃のような月が天に浮かび上がる闇夜。
フード付きの黒装束で、くちばしのように尖った鼻先を持つ黒い仮面をつける姿が5つ。口元は見えているが、知らない人間には、誰なのか、いや、男女すら区別がつかない。
伝令部隊が到着する。
「ヤサキ区南部、ターゲット確認」
「315部隊、了解した。任務開始する」
言葉を聞き遂げると伝令部隊は、姿を消した。
その後、5つの影がうごめいたかと思うと、闇に溶けて消えた。
息を切らす声と、草を踏み、地を蹴る音が真っ暗な林の中で響く。
道なき道を3人組が疾走するのを確認した。
先頭の男は眼前で、ちょっとした窪みが見えたので、進路を変え、そこに転がるように飛び込んだ。あとに続く2人もそれに従ったようだった。
こちらに気づいていない3人のうちの1人が、息を切らしながら、「オヤジ。アレがそうなのか?」という声を上げた。
オヤジと呼ばれた中年の男も「たぶんな」と吐き捨てるように言った。それ以上は何も言わなかった。
「たぶんなじゃあねぇよ。アレは……だめだ。あの医者が言った通りだ。あんなの許しちゃあいけねぇよ。しかも、あの2人の話。最悪だ。腕っ節の強いサルトバでも、一瞬だった」と首を激しく横に振った。
「お前らも一瞬だ。怖がることはない」
その言葉に、弾かれたように3人の男が身構えた。5つの黒い影が立っていた。
逃げ込んだ浅い窪みを見下ろすような位置に立っていた。
「お前らもか、あの……」
「知っていても意味のないことだ」
その言葉と同時に、先頭に立っていた小柄の黒装束が、目の前の1人との距離を一瞬でつめ、腰に差していた短刀を抜いていた。
声をあげるどころか、苦しそうな表情も見せず、3人組の1人がその場に崩れ落ちた。首元を斬られたことにも気づかずに。
鮮血を噴きながら、崩れ落ちるその様子に半狂乱になったもう1人の男が、別の長身の黒装束に飛びかかったが、体をひねってかわし腹部に蹴りを入れた。その一撃で男はそのまま前に倒れ込んだ。そして、横に立っていた大柄の体格の黒装束が、うつ伏せになっている男に馬乗りになり、頭を両手でつかみ首をひねった。
オヤジと呼ばれていた男だけが残った。オヤジは、短刀を抜いている黒装束に向かって、腰に差していた剣を抜くと同時に水平に薙ぎ払った。だが、黒装束は軽く後ろに跳び、それを難なくかわす。
そのとき、最後尾にいた黒装束。ただ一言「半歩、左」と叫んだ。女の声である。
女の声に反応し、小柄の黒装束は反応する。それとほぼ同時に、風を切るような音が耳に入ってきた。何をしたのかはわからないが、このオヤジと呼ばれる男が何かを放った。
雲の影から出てきた月の光に照らされたオヤジと呼ばれていた男の表情は、目を丸くしたまま固まっていた。
「これでもだめなのか」
「最後だ」と隊長の抑揚のない声が耳に入った。
「ちょ…ちょっと待ってくれ。お前らは、あそこで何が起きているのかわかっているのか」
オヤジと呼ばれた男の声が闇に溶け込むのを待たずして、一瞬で距離を縮めていた小柄の黒装束の姿があった。それまでだった。
まっすぐ横に光の筋が走ったあと、遅れてオヤジの顔は吹き出す鮮血で真っ赤に染まり、その場に崩れ落ちようとした。が、その男は目の前の黒装束の服をつかんだ。
それを振りほどこうとしたとき「本当に……いいと思っているのか……」とだけ言い残し、ゆっくりと握っていたその手の力が緩んだ。
崩れ落ちたその男の首元に手をやる。脈を確認するが、その強さは、みるみるうちに弱くなっていく。それと同時に、オヤジと呼ばれた男の目に生気がなくなっていった。
それを確認した後、オヤジの袖をまくる。腕には黒光りする筒状のものが一本ついてあり、2本のベルトで固定されていた。筒の中を覗くと、弦のようなものが見える。詳しい仕組みはわからないが、矢をセットして飛ばす暗器なのだろう。
「これがさっきの。でも、よく気がついたよね、ミーナ」と明るい口調で長身の黒装束が声をかける。
「私ならわかる。あと、任務中よ。名前で呼ばないで」と抑揚のない返事をするミーナと呼ばれた黒装束の女が返事をした。
「もう、敵はいないんだから、いいじゃん。ねぇ、リオさん」
小柄の黒装束に向かって、長身の黒装束が言った。
「それにしても、リオさんに何もなくてよかった。ミーナの声がなかったらやばかったんじゃない」と長身の男が明るい口調で言った。
その言葉に気にすることなくリオは、倒れた男の体や衣服のポケットなどを調べる。
身分を示すようなものは何もなく、先ほど腕に装着されていた暗器と、ペンダントが月の明かりに照らされて青く光っていたのが目についた。そのペンダントを覗くと、今にも雫が落ちてくるのではないかと感じさせるようなみずみずしく、透き通る青色の石がついていた。
それ以外のものといえば、特に目にとまるものはなかった。荷物の量からいえば、旅行者ではないのがわかる。商人でもない。それ以上の詮索は必要なかった。これからは、別部隊の仕事である。リオは男から暗器を外し、大柄の黒装束の男に渡す。その後、倒れている男の体を少し起こし、ペンダントを外し、これも、大柄の黒装束に渡そうとしたが、すでに、現場の痕跡を残す処理を進めていたので、これは自身のポーチに入れた。
リオは男の横で、しゃがんだまま「任務完了」と抑揚のない声で言った
「わかりました。報告します」と、ロイドが返事をした。
倒れている残りの2人は、大柄の黒装束と戦いには参加していなかったリオとは別の小柄な黒装束が調べを終えていた。
リオが、ちらりとオヤジと呼ばれた男へ視線を落とした。それにつられて、ミーナもその男へ視線を向ける。
苦しそうな様子はない。だが、どこか悲しげな表情を残している。
リオは「あとは、別部隊に任せる」と、仲間4人の方を見ることなく静かに言った。その言葉に応じ、リオと共に、闇に溶けていった。
登場人物:
ロルク王:カンザ国国王。ダーシィ国国王ハルクの兄。
リオ:ヤサキ区の農園で働く少年。315部隊隊長。
ミーナ:315部隊
ロイド:315部隊
黒装束4:315部隊
黒装束5:315部隊
カズゥ:ヤサキ区の農園で働く男。商売の独立を目指す
ハルク王:ダーシィ国国王。カンザ国国王ロルクの弟。
オヤジ:カンザ国にて315部隊にて殺害される。青い石のついたペンダントと暗器を持つ。