〜能力不適合者〜
あの事故から3ヶ月。
「はぁー。暇だなぁ〜。」
鏡が空を見上げ呟いた。
「いいから、兄さんは仕事終ったら手伝ってよ。」
そんな、兄を弟の慎子が怒る。普通なら弟を兄が怒るというのが一般的だが、この兄弟は別である。
「はいはい。能力持ってると早いですからねぇ〜。」
嫌みたらしく言ってくる兄。
「僕だって……。」
「あ?なんだ?なんか言ったか?」
さらに煽る兄。
「僕だって、能力が欲しいさ!!」
慎子はどこかへと走っていってしまった。
「お、おいっ!……ったく。世話の焼ける弟だぜ。」
鏡は慎子の仕事をぱぱっと終わらせ、フライカーに乗り慎子を探しに行く事にした。
「ぐすっ……。僕にだって能力があれば、兄さみたいに楽が出来るのに……。」
慎子は自分を恨んだ。憎んだ。能力さえ身につけていない自分の哀れさを。
時計塔から見える夕日は絶景で、世界文化遺産にも登録されるほどのとても美しい景色である。
そんな景色と共に街全体を一望出来るのが、時計塔の40階にある、展望デッキだ。
そんな所に1台のフライカーが停車する。
「こんな所にいたのか。探したぞ?」
フライカーから降りてきたのは、兄である鏡だった。
「今は一人にしてほしい。」
夕日に照らされた頬から涙が流れ落ちる。
「そんな事言ってないでさっさと、飯作るぞ?
それとも、ここにずっといるのか?」
すると、さっきまで泣いていた慎子が鏡を張り倒し、胸座を掴み鏡に言った。
「兄さんはいいよね。勉強もできて仕事もできて、能力は身に付くし、女の子にもモテるし。」
「あ、あのー。最後のは関係ないと思うのですがー?」
「兄さんはずるいよ。いつも……いつもいつも兄さんばっかり出来て。なんで僕には出来ないんだよ!!」
能力というのは、人それぞれで身に付く速度と能力が違う。ましてや、兄弟にいたっては能力が身に付く確率は極めて低いと言われている。
「あのなぁ……。能力って言うのは……」
と、鏡が言いかけた時、
「いや!兄さんは分かっていない!」
と反論する慎子。
「兄さんはわかってるはずだ。兄弟なら能力が開花する確率が極めて低い事を!!」
慎子は信じていた。父が亡くなる間際に残したあの一言を。
「お前達には、能力が身に付く」
その一言を信じ込んで来たからこそ、悔しかった。
兄さんの後ろでいつも隠れているだけだった自分が。何も出来ない無力さが。これで兄さんと並べると思っていたのに、兄弟という壁によって能力が身につかないと知った時の絶望を。
「悪かった。少し俺も言いすぎた。」
鏡は俯く慎子に向かって話し出した。
「俺も子供の頃初めて弟ができた時すごく嬉しかった。お前が生まれて、俺が兄になれた時しっかりとした兄になろうとした。けど、頑張っても頑張っても可愛がられるのは弟である慎子の方だった。俺は悔しかった。頑張っても頑張っても評価されないこの世の中。だからこそ俺は頑張ろうとしたんだ。」
それはまだ父が亡くなる20年前のことであった。
第3部〜能力不適合者〜を読んでくださってありがとうございました!!
今回は過去編へと繋がるお話でした。
過去と聞くと皆さんはどんな事を思い出しますか?
僕は、色んな食べ物の事を思い出してしまいますwww
さて今日は兄弟のプロフィールを話したいと思います。
まず兄の鏡から。
神道 鏡 年齢 28歳 男
身長は178センチ 好きな食べ物は肉じゃが
という感じですね。弟がいるので割としっかり者だけど、弟の前だけではいつもだらけているキャラですね。次に弟の慎子
神道 慎子 年齢25歳 男
身長は168センチ 好きな食べ物は甘い物全般
兄と違って引っ込み思案なキャラとなっています。
そんな二人の過去編は次話発表となります!
いったい過去の鏡に何があったのか。
そして、二人は仲直りする事ができるのか!
乞うご期待!!