表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法世界と闇の英雄  作者: 雪野 透
第1章 〜魔術科の英雄と鮮血の記憶〜
9/40

9話 解呪魔法

「じゃあ、解呪魔法を使えない限り記憶は戻らないの?」


「ああ。

ただ、俺や兄さんが解呪魔法(それ)を使えないのは特殊らしく、普通の魔術師は頑張れば使えるらしい」


後に音から聞いた話によると、特殊というのは月夜待家が原因らしい。

つまり、月夜待家の血を引く人間は解呪魔法を使えないということだ。


月夜待家であることは良いのか悪いのか……よくわからないな。


「なるほどね……」


「もう正直、記憶を戻す必要はないんじゃないかと思っている」


「諦めたらダメだよ!

一緒にどうすればいいか考えようー!」


とはいえな……解決策なんて元々ないのだ。


これは俺の宿命。過去を全て忘れて新たな人生をスタートさせるためのスイッチボタンだったんだ。


そこまで考えると胸がチクリと痛んだ。

なんだろう、この痛みは。


「解呪魔法を使える人なんて数少ないだろう。それを探すのは無謀すぎる」


「それ、本当なの?」


「え?」


「それは蓮の本心なの? 本当にそう思ってるの?」


俺の、本心……。


そんなこと考えたって仕方ないだろ。


また胸がチクリと痛んだ。

ああ、イライラする。俺の体なんだから俺の意思に従ってくれ。


しかしそんな心とは反対して、俺は過去のことを考えると心が苦しくなる。

ーー過去なんてどうでもいいはずなのに。


「もし本心だったなら、寂しいと思うな。


だってそれは、今まで時間を共にした人達を全て忘れてしまうってことだよね? それで良いってことだよね?


そんなの私は悲しいし寂しいよ。


君が一生懸命たくさん足掻いて生きてきた人生はなかったことにするの?

君を支えてくれた人達のことはなかったことにするの?」


俺を支えてくれた人達を忘れるなんて、ありえない。

顔も名前も分からないけど、俺の胸の中には大切な人がいる。そんな気がする。


忘れたくない。ずっと想っていたい。


「いやだよ……そんなこと望んでいる訳がない。


思い出すべき人や事は数え切れないほどあるはずなんだ。俺は何も分からないけど、それだけは分かる。


諦めたくなんかない。思い出したい。


でも方法がないじゃないか。


望んで、期待して、無理だと知って絶望する。

そんな愚行はしたくない。


やっぱり、俺は俺が大切なんだ」


人間は本当に愚かな生物だ。


解決策もないまま望みをもって、変に期待して。

最初から不可能であることを知っているのに、そのことから目を背ける。


常に何かを目指してないとやってられないのだ。


それで期待を裏切られたら、勝手に怒って絶望して。


一番悪いのは、変に望んで期待してしまった自分なのに。それでも責任は他人に押し付けて自分は被害者ぶる。


結局は自分が可愛いくて仕方ないのだ。


そんな人間の類だから、俺は愚かなのだ。俺はこんな自分の全てが嫌いだ。


自信家である兄さんとは正反対だ。


「そうだよ、それでいいんだよ。

蓮はちゃんと自分を大切に思ってるんだ、安心したよ。

完璧だけど、しっかり人間で安心したよ」


「莉愛も俺以上に完璧だよ」


しかも俺より人間性が優れている。


彼女なら、この愚かな世界を変えることが出来るかもしれない。

照れくさそうに笑っている莉愛を見て、ふと思った。


「ありがと。


そうだ!いいこと思いついたよ!

確実に記憶を取り戻す方法」


莉愛は人差し指を立てて、嬉しそうな顔をする。


「なんだ?」


嫌な予感なする。


「私が蓮の呪いを解いてあげるの。

だから解呪魔法を頑張る。頑張って、早く使いこなせるようになって、記憶を取り戻させるよ!」


……予想通りだった。


莉愛は拳を夜空に振りかざし笑う。

その瞬間、月が、星が、より綺麗に輝いた気がした。


「けど、それだと莉愛への負担が大きくなるぞ」


解呪魔法はかなり高難易度の魔法だ。使いこなすには相当の努力が必要になる。


だからこの案は最初からナシだと思っていた。

彼女に無理はさせたくない。


「大丈夫だよ。絶対やり遂げてみせるから、待っててね」


莉愛の意思は固いようだ。

あまり乗り気にはなれないが、俺は任せてみたくなった。


莉愛になら期待してもいいかもしれない。


「ありがとう、莉愛」


「どういたしまして!」


莉愛は笑顔で答える。

今度こそは正真正銘、素の笑顔だった。


「そういえば、7月の対校戦は誰が選ばれるんだろうねー」


「さあな。俺はあんまり興味ないかな」


「でも蓮は優秀だから選ばれるかもしれないわね!

もしそうなったら応援するね」


選ばれたとしても、出来れば拒否したいところだ。

面倒ごとは避けたい。というよりは、自分のやりたい事に集中したい。


「……そろそろ帰ろうか。家まで送って行くよ」


暗い道を女の子一人で歩かせるのは流石に危険だろう。

というか、俺がいないと莉愛は校則違反で捕まってしまう。


俺の透過は、選択した人物にかけることも出来るのだ。


「うん、ありがとう!」


透過をかけられていることを知らない莉愛は、やはり明るく笑った。


今回は少し短めです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ