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魔法世界と闇の英雄  作者: 雪野 透
第1章 〜魔術科の英雄と鮮血の記憶〜
6/40

6話 新たな発見

************


ーーこの世界の住人は、ほとんどが魔力を持っている。

そして、魔力を持っている者は魔法を使える。


しかし、ほんの一部だけ魔力を持たない者がある。

産まれながら魔力を持たない者は、どう頑張っても魔術を使えるようにはならない。


そんな人々は魔術師を妬み、苦しめる計画を立てた。


魔術師を研究のモルモットにして、100体もの魔獣を作り上げたのである。

魔獣は、地下100階まである洞窟に強さ順に1階ずつ入れられた。

そして通路には小さな化学兵器を大量に仕込んだ。


彼らはその洞窟を【魔獣迷宮】と名付けた。

しかし、とある魔術師はモルモットにされる寸前決死の覚悟で【魔獣迷宮】に呪いをかけた。


『この迷宮をクリアすれば魔力を持たない者から邪心をなくし、共に平和を築く』というものだった。


それから魔術師たちは、様々な力を使い魔獣と戦った。

それでも今現在、64階までしかクリア出来ないのだ。


闇の英雄の本当の力があればもっと進めたのかもしれない。


そのせいで、森で突如現れる対魔法組織に襲われてしまう魔術師が減らないのであるーー


************


「女子トークって何を話すんだろうか……」


蓮は、音に"何か"を問い詰められる真っ赤な顔の莉愛を思い出していた。


何をあんなに焦っていたのだろうか。

音は何を聞いていたのだろうか。


分からない。女の子は本当に分からない。

あの美しさも強さも、そして弱さも。俺には何一つ分からない。


「!!」


それは突然だった。

脳裏に、とある光景が浮かんだのだ。


ーー北校舎側の森。その中に莉愛が歩いていた。

その背後にいるのはグレーのマントを羽織った男二人組だ。

彼等の手の中には切れ味の良さそうなナイフが握られていた。

一通り光景を把握したと思ったときには、男たちが莉愛に話しかけているところだった。莉愛は疑うことなく応対しているようだ。

その瞬間、男たちは莉愛を押し倒した。


これはまずい……! 莉愛の周りに人はいない。

どうするべきか? この光景は真実なのか?


行かなければ、そう思った。

俺が今すぐ行かないとダメだ、と本能に訴えかけられていた。


瞬間移動を使おう。

瞬間移動とはその名の通り、一瞬で想像した場所に移動できる。ドラ○もんでいう "どこでもドア" みたいなものだ。

これは今使える能力の中でもかなり便利な能力だ。


超能力はこういうときにとても役立つ。


俺は北校舎側の森に移動しているシーンを想像する。


「あれは……!」


移動した先には男二人組にシャツを剥がれ、ナイフを突きつけられて、怯えている莉愛の姿があった。


俺と話していたときとは全く違う真っ青な顔で、まさに恐怖そのものだった。


莉愛を助けるにはあの二人を倒すしかない。

しかし、あいつらを倒すにはどうするべきか。


そこに、ある術式が頭に浮かぶ。

……よくわからないがこれを使ってみよう。


右手を対象物に向けて呟く。


「ダークネス バースト オブ フレイム」


闇に包まれた炎が右手から現れ、手を向けた先に突撃する。


それを受けた相手は悶える間も無く一瞬のうちにパタンと倒れた。


「え、っと……何が起きたの?」


ひどく驚いた顔をした莉愛が辺りを見回す。


「俺だ、遅くなってごめんな」


「……れ、蓮!!

なんでここにいるの?」


莉愛が、安心して泣きそうになった目をこちらに向ける。


倒れた二人には見向きもしなかった。相当な憎しみがあるようだ。


恐らく二人は死んでいる。

俺の方が気になるじゃないか。


ここに放置していて良いものなのか? というか殺しても大丈夫だったのか? 少し不安になる。


「なあ、こいつら……」


「死んじゃってるよ、どうすればいいのかな……?」


予想と反して、莉愛は結構気にしていたようだ。

心配そうな顔で二つの死体を一瞥した。


「ここに置いておくしかないか」


今は解決策が思い浮かばない。変に移動させても無意味だろう。

とそのとき、死体がチカチカした。


「なんだ!?」


思わず、莉愛の腕を取り後ろに下がる。


チカチカしたのは二人の足先だ。消えかけているように見える。


「一体……何が起きているの?」


莉愛がそう言った頃にはもう、彼らの膝から下は消えていた。

飛んでいったわけでも蒸発したわけでもない。消えたのだ。


何がなんだか分からなくなる。


ーー俺の魔術のせいなのか? 魔術の効果か副作用か?


「も、もう……分かんないよ。

この人たちのことは忘れよう。気にしないことが一番だよ」


莉愛の言葉にハッとする。


そうだ、いくら気にしていても状況は変わらない。

ここは気にしないのが最善だろう。


冷静になれよ、俺。


「そうだな」


「あ、あの……これ……」


莉愛が右腕を上げた。それと連動して俺の左腕も上がる。

……ん?


嫌な予感がしたが、とりあえずは自分の左腕を見てみた。


俺の左手は莉愛の右手をしっかり掴んでいた。


「ああ、本当だ。悪い」


パッと素早く手を離す。

きっと莉愛は嫌だったのだろう。しばらく下を向いていた。


なんか申し訳ないな……そこまでされると俺も少し傷付くのだが。


「いえ、キニシナイデ。ダイジャウ……ダイジョウブナンダカラ」


なんでカタカナなんだ?

しかもちょっと噛んだよな?


やはり、女の子はよくわからないな。


「後で洗えばいい。本当にごめん」


「そんなことするわけないよ!

じゃなくて、なんで私の危険がわかったの?」


莉愛はワントーン明るい声になる。

もう気にしないで、という暗黙の意であろう。


俺も同じように明るい顔にする。


「なんとなく、だよ」


「意味わかんないよ!?」


莉愛は頰を膨らませて怒るフリをしてから、


「でも、ありがとう。本当に助かったよ」


と言って向日葵のように明るく笑う。


俺は少し顔が赤くなりそうになるのを感じた。


「ああ、無事で良かったよ」


俺は、軽く微笑んだ。


「なんで襲われてたんだ?」


一応、聞いてみた。


こういうときは何があったか聞くべきって兄さんが言ってたからな。


「あのね、音ちゃんと別れて私はこっちの道に来たの。

それで歩いてたら、いきなり


『四つ葉のクローバーあげるよ」


とか言ってあの人が話しかけてきたの。


気持ち悪かったから


『三つ葉のクローバーを踏んで見つけた四つ葉のクローバーなんていらない』


って言って突き返したの。


そしたら狙い通り、みたいな顔をして襲いかかってきたってわけ」


「地味に名言、誕生したな」


『三つ葉のクローバーを踏んで見つけた四つ葉のクローバーなんていらない』


ーーいい言葉だ。全くその通りである。


人は自分の正義のためなら他を省みない愚かな生物だ。

四つ葉のクローバーはそのいい例だと思う。


「……蓮ってクールだよね」


「そうか?」


「うん。声に気持ちこもってないし、情熱とか感じないし。今の話きいたら、もっと驚いたり心配したりしてくれて良いと思うんだけどな!」


「まあ、そうだな。俺は情熱的な人があまり好きではないんだ。自分が冷めている自覚はある」


熱い人は、一緒にいて面倒くさいし鬱陶しいと思う。

だから苦手だ。


あの熱気とか近くで感じるの、ほんとムリ。


「えぇ、自覚あるんだ。直そうとは思わないの?」


「別に直す必要はないと思うが?」


むしろ、冷めている方が効率的に敵を倒せる。


「やっぱり冷めてるね、蓮は」


「そうだな」


「ついでに卑屈で面倒くさいし……

強くてカッコいいのに、勿体無い」


なるほど、一度落としてから一気に上げ、気持ちの変化を狙うパターンですね。わかりますよ、黒姫様。


そんなことを考えながら、次の授業の準備を始めた。


ーーしかし、あれはなんだったんだろう。


ふと、莉愛が襲われる景色が浮かんできたときのことを思い出す。


千里眼だろうか。


でも、あの術式は?

闇系統の呪文など聞いたこともないが。


もしかしたらあれが、月夜待家の魔術なのかもしれない…

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