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魔法世界と闇の英雄  作者: 雪野 透
第1章 〜魔術科の英雄と鮮血の記憶〜
2/40

2話 夢は記憶の片隅か

* * * * * * * * * * * *


「やめて! お父さん!! お兄ちゃんを連れて行かないで!! (さく)お兄ちゃんもなんとか言ってなのです!!」


「……音、もうどうしようもないんだ」


(兄さんが何故こんなところに……?この女の子は誰だ?)


「朔の言う通り、仕方ないんだ。世界を救うためなんだよ。蓮は無事に戻ってくる。絶対だ。それまで待ってなさい、(のん)


「連れて行かないで!!」


「音! やめろ!!」


「朔お兄ちゃん!?なん、で……?」


「もう諦めてくれ……」


「お兄ちゃん、音は、音は……!いつまでも待っているのです……!!」


(連れていく?どこに?待ってるってどういうことだ……?)


|

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《音は、いつでもお兄ちゃんの味方なのです》


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* * * * * * * * * * * *


「調子はどう? もう平気かな?」


朦朧とする意識の中で、女性の声が聞こえる。


……ここは、どこだ?


起き上がって辺りを見回す。


見たことのない部屋だった。

現在寝ころがっているベッドも、いつも使っているものとは違う真っ白なものだった。


目の前にいる女性は俺がキョロキョロしている様子に気付いたようだ。


「医務室よ。先生の名前は……とりあえずカヨということにしておいて?

みんなからは "カヨ先" とか "カヨちゃん" とかって呼ばれてる。

ごめんね? 先生、匿名希望なの」


カヨさんはバツの悪そうな顔をする。


あぁ……そうか。頭痛で倒れそうになって、運ばれたんだっけ。


ということは、カヨさんという人は医務室の先生か。


「君、ずっとうなされてるみたいだったけど、悪い夢でも見てたのかな?」


白い部屋がよく似合う、優しそうな先生である。


語尾に疑問符をつけるのが癖のようだ。


なんというか、看護師になったら人気がでそうな雰囲気がある。


「悪い夢……」


俺はさっき見た夢を頭に浮かべた。


音という少女。いないはずの父。

あれは、一体……


「何かあれば、いつでも相談に乗るからね!

医務室ってなんとなく敬遠されがちだけど気軽に訪ねて来て良いからね?

むしろそっちの方が先生は嬉しいし!」


「……ありがとうございます」


俺は、もうすぐ入学式だったことを思い出し時計を探す。


部屋の白い壁の隅の方に、木製のシンプルな壁掛け時計があった。


12時20分。そろそろ入学式が終わる頃だ。

どうやら入学式に出席できなかったらしい。

生徒代表挨拶、断っておいてよかった。


俺は学年で最高成績だったらしく、入学前に学校側から生徒代表挨拶を頼まれていた。


もちろん、面倒臭さそうだったから全力で拒否したが……

その否定する工程が、かなり面倒臭いというパラドックス。人生に矛盾はつきものだ、と痛感した。


ーーとりあえず、早く教室に行こう。


そう思い、立ち上がってドアに手をかける。


「失礼します」


「はーい」


医務室を出ると1年Aクラスの教室へ早足で向かった、と言いたいところだが……


教室の場所がわからない。


行くあてもなく、人気(ひとけ)のない廊下をただただ歩く。


まさか入学式に出れないなんて……

思わぬ事故だったな、この1ヶ月は体調を崩すことなんて全くなかったのに。


完全に八方塞がりだ。

名案もでないまましばらく歩いていると、おそらく新入生が落としたであろう学校の地図が落ちていた。


これは幸運だ。

この学校は名門というだけあって、校舎が引くぐらい広かったのだ。


俺はそれを拾うと、地図の中の1-Aクラスを探して歩いた。

1年の校舎はた2階、2年の校舎は3階、3年の校舎は1階のようだ。


ーーガラガラ


教室のドアを開ける。

先生の話に耳を傾けていた生徒たちの視線は、一瞬の内に俺へと変わる。


「あぁ、月夜待くん! 入学早々大変だったなー!」


どうやら担任は、このフレンドリーな男性らしい。


担任は黒縁のメガネをかけていて、ジャージ姿だった。

俺を見つけると、フラットな笑顔を見せた。


歩き疲れていた俺は丁度良い言葉を探すのも疲れると思ったので、事務的に返す。


「いえ、自分の体調管理が甘かっただけです。すみません」


「自分に厳しいんだな! 良いことだー!

えー……お前の席はそこだ」


担任はハッハッハ、と高笑いをして窓際の1番前の席を指差した。


「ありがとうございます」


俺は教室の前を通って自分の席に座る。

窓際の1番前というのは、結構良い席のようだ。

窓から景色を眺めることが出来るし、何より教師の死角だ。


「さっき配布したプリント類や教科書は机の中に入れてあるぞー。

まあ不幸な少年よ、俺はこのクラスの担任だ。

これからよろしくな」


不幸な少年とは失礼だと思うが、あながち間違いではないのが痛いところだ。


ただ、なんというか、この担任のフラットな感じは素じゃない気がする。

ーーどうでもいいか。


「はい、よろしくお願いします」


席に座るとクラスのメンツを見渡してみた。


「あ……」


そこには、朝話しかけてきた謎の少女がこちらをじっと見つめている姿が。


席は近くないが、口パクくらいなら通じる距離だ。


「……!」


俺と目が合ったことに気付くと、慌てて目を逸らされた。


この子……よく見ると、夢に出てきた『妹』にそっくりだ。白く繊細な肌、長い睫毛、華奢な身体。


もしかしたら、本当に……?


「それでは、今日はここまで! さようならー!」


そんなことを考えていると、いつの間にHR(ホームルーム)が終わったようだ。


「よう! 月夜丸? だっけ?」


そう話しかけてきたのは、後ろの席の男子生徒だった。

天然パーマらしい明るめの茶髪に青い大きな目をしていて、チャラそうなイメージだ。


「月夜待 蓮だ。蓮と呼んでくれ」


「おーけー蓮!

俺は永瀬(ながせ) 千裕(ちひろ)! 千裕って呼んでくれ!」


「あぁ。よろしくな、千裕」


「クールだな、お前。いかにもモテそうだ」


「いやいや。恋愛に興味はないよ」


「なーんだ。

あ、これから昼飯食べに行かね? 俺まだ友達いなくてさー」


自己紹介し合っただけで、一緒に昼食か。思った通りチャラいようだ。

まあ、あの(なぞのしょうじょ)に話すのはいつでもいいし行くか。


「ああ、いいよ」


「おう! ありがとな!」


こんにちは!2話目です!

《次回、過去をもっと覗けちゃいます!(過去の話どんだけ引っぱるんだよ)》


よろしくな!

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