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リバーステイル・ロマネスク  作者: 旅籠文楽
prologue. 《夢の階》
2/125

02. 夢の階 - 2

 


     [3]



現実(リアル)の世界では只今、25時32分を少々回った所になります。ゲームへは常に25時30分に接続する設定になっておりますから、まだログインして2分ほどしか経っていないことになりますね」

「凄いですね……。もう仮想(こちら)の世界で15分ぐらいは過ごしている気がするのに」

「実時間の消費に対し、ゲームの中では体感できる時間の長さがおよそ7倍に拡大されます。つまり、こちらで過ごした時間の7分の1程度しか、実際には時間が流れていないことになりますね」


 ……簡単なことのように深見はそう言ってみせるのだが。それって、かなり凄い技術なのではないだろうか。

 すると2分少々の7倍だから、ゲーム内で経過した時間は時雨の感覚通り、ちょうど15分程度という計算になる。


「人間の睡眠は一般的に、毎日4時間から6時間程度が必要と言われていますが。これは『睡眠』の為というよりは、身体を休ませて疲労を取るために必要な時間でして。もともと脳のほうは、この15%程度の時間しか睡眠を必要としないように出来ています。

 ですので、身体は睡眠状態を維持して休ませつつ、脳だけを活性化させることで『夢の中』でゲーム世界を体感する―――それが〈リバーステイル・オンライン〉のプロジェクトになります」


 ―――リバーステイル。

 リバースは〝reverse〟? それとも〝rebirth〟のほうだろうか。

 テイルは『物語』とかを意味する〝tale〟だと思うのだけれど。


「時雨くんには、(かね)てより弊社の補助端末『カリヨン』をご利用頂いておりますね?」

「ええ、有難く使わせて頂いてます」


 『カリヨン』とは、カピノス・アーク社が幾つかの病院の長期入院患者に対してモニターを行っている、ウェアラブル医療補助端末の名称である。

 具体的にどの程度の人数規模でモニターを行っているのかまでは把握していないものの、自分のような若年から老齢の人に至るまで、病棟の同じ階に入院している知己の相手の殆どがこの端末機器を所持していることを時雨は知っていた。


 『カリヨン』は四つの部位から構成されており、スマートフォン程の大きさの本体機器、チョーカー、イヤーカフ、リストバンドから成る。

 このうち身体に装着すべきなのは後者の三つだけであり、本体機器は装着者から半径数百メートル以内にあれば携行している必要はない。

 本体以外の機器は全て装着しなければならないが、どれもシリコン製のシンプルなものであり、軽量なので身に付けていても邪魔になることはない。

 人によっては食事時や就寝時などにチョーカーだけは少し気になってしまうらしいが、時雨にはそういった経験も皆無だった。


 『カリヨン』は医療端末であるため、着用中は装着者の健康状態を常に監視し、そのデータを担当医師に提供する機能を備えている。

 また、他にも『カリヨン』は特筆すべき特徴として、装着者の『意志』による操作を可能にする機能と、装着者が(まぶた)を閉じていても、その内側に映像を投影することのできる機能を持ち合わせていた。

 何かと娯楽の少ない生活を余儀なくされている入院患者に対し、『カリヨン』はそれを提供する役割も果たしている。

 テレビやラジオをリアルタイムに視聴できる機能や、ネットサーフィンを行える機能を備えるのは勿論のこと、それ以外にも『カリヨン』はモニター参加者に対して自由に利用可能な膨大なデータ・コンテンツを提供してくれていた。

 映画やアニメといった映像コンテンツ、漫画や小説といった電子書籍、好きな歌手や演奏家の新譜といったものまで、大抵のエンターテインメントは『カリヨン』を通じて購入し、『カリヨン』によって視聴することができるのだ。


 これらは身体の不自由な時雨にとって、非常に有難いものだった。

 下肢に重度の障害を持つ時雨は自力で車椅子に乗ることも出来ず、自分の病室から出るためには必ず看護師の補助を受けなければならないからだ。

 トイレの利用時などであれば、やむを得ない事情なので看護師の方に逐次補助をお願いすることも問題無いのだが。例えば―――病棟1階の売店で文庫本や雑誌を買いたいという理由だけで、わざわざ看護師の方の手を煩わせるというのでは、やはり申し訳ないという気持ちが先に立ってしまう。

 けれど『カリヨン』があれば大抵の娯楽はベッドの上で、移動しないまま求めることができる。

 コンテンツの購入は有料のものも多いのだが、幸い時雨は両親の遺産を運用することで金には不自由していなかった。


(……便利すぎるお陰で、すっかり『本の虫』になってしまったけれどね)


 僅かに苦笑しながら、時雨は『カリヨン』を利用してからの日々を思い出す。

 ベッドに身体を横たえながら本を読むというのは、小まめに体勢を変えていても長時間続けていると案外疲れることだが。『カリヨン』を利用すれば、どんな体勢で横になっていても何不自由なく本を読むことができるのだから非常に便利だ。

 おまけにページ送りから単語の辞書検索まで、全て『意志』による操作ひとつで簡単にできてしまうのだから。その快適さは一度体感してしまえば、もう手放すことができない程のものだった。


「ふふ。どうやら、お気に召して頂けているようですね」

「それはもう、大変に助かっています」


 時雨の表情を読んだかのように、柔和な笑みを向ける深見。

 実際大変に気に入っているし、お陰様で入院生活が非常に充実してもいる。

 当然ながら時雨はモニターという(てい)で『カリヨン』を貸与し、自由に利用させてくれているカピノス社に対して強い感謝の気持ちを抱いていた。


 今回カピノス社から『ゲームのモニター参加依頼』という名目で面会の希望を受けたとき、時雨が迷うことなく即座にその依頼を受理したのも、先方への感謝の気持ちがあればこそだ。

 両親に遺された莫大な遺産の一部を用い、相当数のカピノス・アーク社の株式を購入したりもしてみたが、そんなことで()の企業に対して十分な礼ができているなどとは思わない。

 モニターでも何でも、自分に協力できることがあるのなら、時雨にそれを惜しむ気持ちは毛頭無かった。


「〈リバーステイル・オンライン〉では、就寝中も装着されたままである『カリヨン』端末を利用して、毎晩の睡眠時間のうち25時半から28時半までの三時間を、ゲームにログインする時間へと割り当てさせて頂きます。

 また、ログイン時間内の睡眠を安定させる為の補助を『カリヨン』が行います。このため〈リバーステイル・オンライン〉のモニターに参加頂きます場合、『カリヨン』を装着していると24時を過ぎた辺りから徐々に眠くなり、24時半ともなるとかなり堪え難い眠気を感じるようになりますが……」

「問題ありません。普段から日付が変わる前には眠っていますので」


 時雨が入院している『清座研究会病院』の病棟は、消灯が22時に設定されている。

 個室内は消灯の対象外となっているものの、時間を過ぎればナースコールを押して看護師の方を呼び出すのにも申し訳なさを感じるようになるため、基本的には消灯時間を過ぎた時点で大人しく眠るようにしていた。

 そもそも入院生活では、食事が提供される時間が完全に固定なこともあり、生活時間は乱れにくいものとなる。消灯の頃合いで自然と瞼が重くなるため、夜更かしをしようなどとは考えることもなかった。


「一応、病院の非常ベルが鳴ったり、あるいは時雨くんの健康状態が急に変化するなど『カリヨン』本体が異常を検出した場合には、眠ったままですと危険な可能性がありますので端末機器が逆に時雨くんが睡眠状態から覚醒するよう促す仕様になっております。この際にはゲームをプレイしている最中であっても強制的にログアウトされ、現実に引き戻されますので予めお含み置き下さい」

「承知しました。ところで、毎晩の睡眠から三時間を割り当てると言うことは、ゲーム内での体感プレイ時間は一晩あたりおよそ21時間程度になるという理解で合っていますでしょうか?」

「合っております。実質的に『ほぼ丸一日』と申し上げてよろしいでしょう。感覚としては〝現実〟と〝非現実〟の世界を、毎日交互に過ごして頂くような形になりますね」


 確かに21時間ともなれば、殆ど丸一日と言って遜色ない。

 何しろ現実世界でさえ、一日のうちに起きていられる時間は18時間ぐらいしか無いのだから。21時間という制限内でフルに活動出来るのなら、寧ろそれは現実世界以上に潤沢した時間とさえ言えるのかもしれなかった。


「いえ、ゲームの中でもちゃんと『眠って』くださいね?」


 そんな時雨の心を見透かしたように、苦笑混じりに深見はそう告げる。


「眠って起きる、という生活を切り替えるプロセスが重要なんです。睡眠行為を通して〝現実の世界〟と〝非現実の世界〟の間を行き来する―――そのような感覚で利用者の皆様に理解して頂くことが、脳認識の面でも健全であり、良いことだと私共は考えております。

 現実世界で眠った翌朝にはゲーム世界での一日が始まり、ゲーム世界で眠った翌朝には現実世界での一日が始まる。〝現実(リアル)〟の自分と〝仮想(ゲーム)〟の自分、二つの生活を交互に体感して頂く感じですね」

「なるほど……」

「現実世界での生活リズムを『カリヨン』が調整するように、プレイヤーの皆様がゲーム内で過ごす生活時間もまた、ゲーム上のシステムによって調整されます。

 ゲーム内の時間で活動可能なのは朝の6時から翌朝の3時までになりますが、現実世界で24時を過ぎると『カリヨン』の補助により眠くなるのと同様に、ゲーム内でも24時を過ぎるとプレイヤーの皆様は自然と眠くなる仕様になっておりますので、予めご承知おき下さい。

 またプレイヤーの皆様にとって『ログイン時間外』にあたります、ゲーム内時間の朝3時から6時までの3時間は、操作するゲーム内のキャラクターが『絶対に目を覚ますことができない時間帯』になります。街の外で夜営などをなさるのは自由ですが、魔物などに襲われると当然無抵抗の状態となりますので、可能な限り街の宿屋を利用するなどして、安全な場所で眠るようにしてください」


 時雨は昼間に国広から〈リバーステイル・オンライン〉の世界観が一般的なファンタジーRPGのそれを踏襲した、ごく有り触れたものだと説明を受けている。

 そうしたファンタジーの世界に於いて、街の外で野営を―――つまり、キャンプのようなことをしてみるというのには、少なからず時雨も興味があった。なまじ現実世界での自分が自由に外出できない身の上なればこそ、そう思ってしまうのかもしれないが。

 しかし、深見が話すように『絶対に目を覚ますことができない時間帯』が存在する以上、それは無謀なことなのだろう。

 5人ぐらいのプレイヤーが集まってパーティを組んだとしても、夜間に交代制で見張りの番をする―――といったことは不可能なわけだ。プレイヤー全員が揃って眠りに落ちる時間帯が存在する以上、基本的には街から日帰りできる範囲でしか行動できないことになるのだろうか。


「それからゲーム内では眠気の他に、空腹なども感じます。そうですね……10時間ないし12時間ぐらい、でしょうか。さすがにそれ程の長時間に渡って何も食べないでいますと、ゲーム内でも空腹を苦痛に感じますのでご注意下さい。

 もちろん空腹以外でも、戦闘で魔物に殴られると痛みを感じますし、毒などの状態異常を受けると気分が悪化してしまいます。その辺は現実と一緒ですね」

「……えっ?」


 深見の説明に、思わず時雨の口からは驚きの声が漏れ出た。



     [4]



 VRゲームでは一般的に、プレイヤーに対して苦痛や不快感を与える表現や刺激といったものは、大幅に規制されるのが常識だった。

 これは現実感(リアリティ)を伴いすぎるゲームであるが故に、キャラクターに与えられる仮想の刺激を、プレイヤーの脳が『嘘』の情報だと認識することができない場合があるからだ。

 とりわけ『痛覚』はその最たるもので、VRゲーム黎明(れいめい)期の頃に出た幾つかのゲームタイトルでは、まだ当時は無規制だったゲーム内での痛覚や流血表現を認識させられたプレイヤーの脳が、自分自身を『非常』な状態であると判断してしまったが為に、脳や精神を冒されて一種の恐怖症のようなものを発症したり、酷い場合には廃人同様になってしまうようなケースまで生じたのだという。

 なので現在一般的にサービスされているVRゲームのタイトルはどれも、敵から攻撃を受けてもキャラクターが流血することもなく、プレイヤーも『押された』かなという程度の体感しか得られないレベルに抑えられてしまっている。『痛覚』などというものは全面的に排除されてしまっていると言っていい。


「……それって、大丈夫なのですか?」


 だというのに、深見が案内するこのゲームには『痛覚』が現存するのだという。

 ならば当然、過去に存在したそういったトラブルもまた起こり得るのだと、そう時雨が考えてしまうのは無理のないことだろう。


 率直に訊ねた時雨に対して、その反応が予測できていたからだろうか。

 深見もすぐに頷き、回答してくれた。


「問題ありません。我々『カピノス・アーク』には長らく医療科学分野に携わってきた先端企業ならではの、確かな技術とノウハウがあります。他企業には決して真似のできない、現実の健康に影響を与えない『安全』ラインの内側ギリギリにまで体感刺激を拡張した、臨場感ある世界をお届け出来るかと」

「は、はあ……」


 深見は笑顔でそう告げるが、それはさながら一種の脅迫のようでもあった。

 ―――ゲーム内で怪我をすれば、現実同様に『痛み』を感じることになる。

 そしてMMO-RPGというものは大抵、モンスターとの戦闘ありきで進行するものなのだから、おそらく『痛い』思いをすることは避けようがないのだ。


「ふふ。とはいえ逆に申し上げれば、『痛覚』を初めとしてプレイヤーの皆様が苦痛に感じる要素に関しては、十分に安全と判断できるレベルにまでは緩和を行っているということでもあります。

 痛みは間違いなくゲーム内でも『痛み』として感じられますが、現実のそれに比べれば随分と軽い刺激に抑えられております。

 それでも『痛み』というものを過敏に感じてしまう方は、ゲーム内で戦闘行為は避けるようになさっておられるようですが。そういった方にも街中での『生産』などには好評を―――」

「痛みには慣れているほうですので、おそらく自分は大丈夫だと思います」

「そうですか。それは、何よりです」


 遮るように告げた時雨の言葉に、深見はにっこりと微笑む。


「ある程度の『痛み』は、必要なものであると開発チームは考えております。

 私共が提供したいのは『ゲームの世界』ではあっても『嘘の世界』ではありません。参加下さいます皆様からお金などを徴収しない関係上、名目としては〝モニター〟という(てい)にさせて頂いてはおりますが……。私共はこのプロジェクトを先程も申し上げました通り、無期限的に継続したいと考えております。

 ゲーム内で過ごす夢の世界。現実の裏側にある一日もまた、時雨くんにとっての『もうひとつの人生』であり、『現実』のひとつとして楽しんで頂きたいのです」

「……それはまた、大きく出ましたね」

「ふふ、そうですね。確かに大きく出てしまっているのかもしれません。ですが、私共の追い求めている理想のそれが、決して大言壮語で無いということは、実際にゲームを体感して頂ければご理解頂けますでしょう」


 大した自信があるらしく、深見は胸を張り堂々とそう告げる。

 そこまで開発側が自信を持って作り上げているゲームの『モニター』ということであれば、時雨としても期待せずにはいられない。

 ふつふつと胸の内から、早くゲームを始めたいという思いが期待感となって沸き上がってくる。


 そんな時雨の期待を余所に、こほん、と深見はわざとらしい咳払いをひとつ。


「さて、『痛み』の話に戻しますが―――魔物に攻撃された場合などに『痛み』を感じるのは何もプレイヤーだけではありません。ゲーム内の世界に存在する住人、いわゆるNPC(エヌピーシー)の方々もプレイヤーの皆様と同様に『痛み』を感じます。

 例えばNPCの人と―――ゲーム内ではNPCのことを『星白(エンピース)』と申しますが。星白の方と一緒にパーティを組んだ場合などにはもちろん、敵から攻撃を受けてHP(ヒットポイント)が低下すればNPCの方は『痛み』に苦痛の声を上げるでしょうし、十分な手当を受けられないまま戦いを続けるよう要求しても、当然ながら相手は嫌がるでしょう。

 プレイヤーのことはゲーム内で『天擁(プレイア)』と申しますが、基本的にこの辺の感覚は『天擁』と『星白』の間に相違は無いものとお考え下さい」

「……プレイヤーとNPCで、一緒にパーティを組むことが可能なのですか?」

「はい、可能です。そうですね、ちょうど良いので今のうちに申し上げておきますが―――まず根本的に〈リバーステイル・オンライン〉のゲーム内では『天擁(プレイア)』と『星白(エンピース)』は、互いに殆ど見分けが付かないものとご理解頂けましたら」

「見分けが付かない……。それは、単純に外見が同じという意味ですか?」

「外見もそうですが、それ以外の部分も含めてですね。もちろん『天擁(プレイア)』にしか通じないような話題―――例えば『現実世界』の話などを振れば、相手を判別することは可能でしょうが。逆に言えば、そういった質問でもしない限り、判別することは難しいと思われます。

 ―――と申しますのも、弊社では十数年ほど以前より人間に備わっている思考力や感情といった『知性』を、電子的に総合再現する『電子クローン』の研究と開発を行っておりまして。その技術が試験も兼ねて〈リバーステイル・オンライン〉のゲーム内では積極的に運用されているんです。

 個々の『星白(エンピース)』には『電子クローン』技術により高度な『知性』が再現されており、誰であっても現実の人間と全く遜色ないかのように会話などを交わすことが可能になっております」

「……さすがにそれは、(にわか)に信じがたいのですが」


 古き良きRPGのように、話しかける度に『同じ会話ばかりを繰り返す』とまではいかなくとも。最新世代のVR-MMOゲームであってもNPCは所詮NPCであり、プレイヤーに比べれば機械的な反応しか返すことしかできず、随分とお粗末な思考や発言しか出来ないのが一般的だ。

 それが、このゲームに限って『プレイヤーと比べて遜色ない』と言われても。その言葉を容易に信じられよう筈も無かった。


「そうですね、こればかりは口頭で幾ら説明申し上げても、理解を得るのは難しいでしょう。ですから、ゲーム内で実際に『星白(エンピース)』の方と会話することで体感して頂けたらと思います。

 露店などで店員さんに値引き交渉を持ちかけることはもちろん可能ですし、あるいは商売と全く関係の無い雑談を交わすようなことも可能でしょう。相手に好意を持たれれば友達になることも可能でしょうし―――あるいは、口説いたりすることも可能でしょう。上手く行くかは保障しかねますが」

「は? 口説く……ですか?」

「はい。NPCも当然、恋をしますので」


 それは―――随分とファンタジーなことのように、時雨には思えた。


「実際、大変良く出来たファンタジーですよ?」


 まるで時雨の心を読んだかのように、すかさず深見はそう告げる。

 先程から深見は、会話の間々にこちらの心理を見透かしたような合いの手や突っ込みを入れてくるものだから。もしかしたら本当に自分の心が総て読まれているのではないかと―――時雨は少しだけ、深見が湛える笑顔を怖いとも思った。

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