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俯棺風景  作者: ししゃもふれでりっく
第一話 少女の見た世界
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エピローグ





 それから数日後、NEROが言っていた城址公園付近にあったランキングを見た所、5位がDEMON LORDなる人物から入れ換わり、SCYTHEという名が刻まれていた。キルカウント6。きっと、GOTHICの事だろう。そう思った。そして、それに間違いはなかった。NEROの時は気付かなかったがパーティ表示の所で彼女の名を選択すれば彼女の二つ名、という運営が与えた名前が表示されていた。ちなみに僕の表示には無い。一度でもランキングに入ったら付けられると言う事だろう。


 そして、ランキングを見ていて、もう一つ気になった事があった。1位と2位の差がかなり減っていた。NPCのキルカウントがカウントされた結果に違いなかった。関東に残っていたプレイヤーがNPCに軒並み殺されたのだろう。その瞬間を見られなかった事に僅かな後悔を浮かべた。


 そして、その2位の進撃に対して愚痴を言いに来たのか何なのか、先日、WIZARDが態々転送ターミナルを使って僕を探しに来た。それから更に一週間程たったのが今日である。


 現在のレベルは20。


 あの少年達から得たマシンガンの使い勝手の良さもあり、数匹同時であっても悠々と倒せるようになっていた。御蔭で弾丸生成能力と相まって、レベリングはかなり捗った。そして、漸く他の場所に行こうという気になってきた。


 アリスの店にもちょくちょく通っては情報が無いかを聞いていた。もっとも大した情報はなく、客も僕ぐらいのものだそうだ。御蔭で、普通に会話できるぐらいには仲が良くなってしまった。現実の世界で僕が妹と会話するようなそれぐらいには。ちなみに、相変わらず、彼女には『鬼畜様』と呼ばれている。


 GOTHICもといSCYTHEは別の都市に移ったらしいとアリスに聞いた。掲示板のキルカウントが増加している所を見れば随分頑張っているようだった。その内、殺す所を見に行くとしよう。


「ところで、前の時も気になったが、どうやって僕が居る場所を?」


「今更それ聞くの?NEROよNERO。殺しに行ったら教えてくれたのよ。ちなみに、シズが浮気しているってのもNEROに聞いたのよ?」


 あぁ、SCYTHEの時も見ていたのか。見終わってから城攻めをして30分程度で落城させたのか……もはやチートと言っても良いぐらいだった。まぁ、チートだろうと何だろうとどうでも良いが。それを責める気は毛頭ない。真偽はどうであれ、それで助けられている以上、特に何を思うわけもない。


「NEROの城に……良く攻め入る気になったな。流石、狂人」


「あら、褒めても何も出ないわよ」


 ケタケタとWIZARDが笑う。見目だけで言えばSCYTHEよりも相当に良い。創られたものとはいえ、ここまで見目良く作れるというのもある種才能だろう。これで殺し方が、作り出す死体が綺麗だったら僕のSCYTHEへの執着も無くなっていた事だろう。


「でも残念。城には入ってないわ。街の方でNPCを爆発しまくっていたら怒って出てきたのよ。間抜けよね。きっとNPCを盾にしたらそっこーで殺せるわよ!ま、NEROを領主だとか言ってるNPCの数が多過ぎてソロじゃ私以外には無理だと思うけど。あ、でも、シズだったらアンチマテリアルで超遠方から撃ちまくってればいけるかしら?」


「やらないからどうでも良い。で、ということはNEROを殺せなかったと?」


 あれを怒らせて生き残れる人間はきっとコレだけだろう。その事には素直に尊敬する。そんな彼女が手をふりふり、はぁ、とため息を吐く。


「無理、無理。HP多すぎ。あっちも私の事は殺しきれないみたいだったから、条約締結?ま、その内破るけど」


「条約……」


「NPC殺すなってねぇ。その代わり情報提供と物資提供してくれるってね。ま、貰うだけ貰ってぽいよ、ぽい。……いい年してお人形遊びをしている奴なんて、どうでも良いわ。ほんと、気持ち悪いわよね?」


「爆弾遊びが好きな奴の台詞ではないね」


「トリガーハッピーの台詞でもないわよね」


「誰が」


 言って、再びWIZARDの顔面に向けて銃口を当てて引き金を引く。


「ほらやっぱりそうじゃない。そういうSMプレイがしたかったなら早く言ってよ。私はいつでも準備完了よ?」


「断る。で、用がないならそろそろ帰れ」


「どこによ」


「北海道」


「なんで北海道なのよ、っていうか寒いから嫌よ。でも、シズが人肌で温めてくれるなら可。二人で逃避行とかちょっとしてみたいし」


「断固拒否する。で、何かまだ用が?」


「あぁ、今度こそNEROを殺すためにレベル上げ~よ。レベル上げ~。それをシズに手伝ってもらおうと思って」


 ちなみにこの爆弾魔、爆弾投げて爆殺するのは得意ではあるが、戦闘が得意というわけではない。持ち前の火力でごり押すだけである。その辺りが更に不愉快である。


「人殺しを?僕が人を殺すと思っているのか?酷い言われようだ」


「そんな無機物みたいな目をして言っても説得力無いわよ?でも……残念ながら悪魔なのよね。良いポイントを見つけたのよ……爆弾投げてれば簡単なんだけど、ちょっと億劫なのよね……御礼に裁縫ぐらいならしてあげるから!」


「意外に家庭的……なるほど、その格好はお手製か。設計図じゃなくて?」


「そそ。どう?可愛いでしょう?」


 にひひと服を見せつけるようにその場でくるりと周りながら笑う銀髪の魔術師の顔面に再度弾丸を射出してから、いい加減別の土地に移動しようと思っていた所だったのでまぁ良いと納得する。


 そもそもレベルを上げる事に否定はない。しいていえば、ヒモっぽいのが悩ましいぐらいだ。


「で、どこに?」


「サンシャイン」


 というわけで、NEROの膝もとに行く事になった。どのみちいつかは行かなければならない場所だ。NEROが関東を押さえた所為でスミスがいる場所は現状、NEROのお膝元しかないのだから……。まったく、そういう意味では面倒な事をしてくれたものである。


「じゃ、パーティ申請ね。私からするね。というわけで……抜けたりしたら殺すわよ?」


「じゃあ、断る」


「ちょっと!もう嘘よ、嘘。ハニーでスィートな嘘だから安心して!……でも、爆弾一発ぐらいなら大丈夫よね?」


 面倒臭い。


 そんな事を思いながらも、パーティを解除する。


 そこに名前が乗っていたGOTHICの名を見て、思う。


「また、会おう」


「ねぇ、それって浮気っていうのよ?ねぇ、誰とパーティ組んでいたのよ。教えなさいよ。もしかして例のSCYTHEとかいう奴?だったら完璧に浮気じゃない!?」


「煩い」


 その言葉と共に、


『パーティを解散しました』


 そんなテロップが視界に映った。






―――






 あの人が私を殺してくれる。


 自らを殺す事のできない世界で、あの人が私を殺してくれる。


 他の人とは違う、汚くない人。


 あんな抜け殻のような生き物が人間だなんて、私はもっと死にたくなった。


 けれど、あれが人間なのだ。


 お母さんに聞いたから間違いない。


 でも、あの人ならちゃんと殺してくれる。


 だから、あの人に殺されるまで、がんばろう。


 こんなにも醜悪な世界で、たった一人、人の形をしたあの人に殺されるまで。


 がんばろう。


 だから……




 シズ。


 どうか、醜いにくのかたまりを殺して……







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