雪の叶え事
むかしむかしとある国の小さな小さな村の中。
髪も、肌も、雪のように白い。
だが、眼だけは血のように深紅の赤の少女が一人で暮らしていました。
家事も修理も遊びもその少女一人だけでした。
けれど、ある日一人の少年が迷い込んできました。
薪を集めている中、少女は行き倒れている少年を見つけ、家へ連れて帰りました。
パチッパチ…と囲炉裏に火をともし暖をとっていると、少年が目を覚ます。
「…ん、ここ、どこ?」
少年は不思議そうに辺りを見渡した。
その行動がいきなりだったから少女は驚き、ふすまの陰に隠れてしまった。
「ねぇ、君、ここの住人さん?」
急に訊ねられて肩をすくめた少女だが、
「大丈夫。僕は君に何もしないよ。」
優しい声だったから安心してふすまから出てきて少年の近くに座った。
「ねぇ、君の名前、聞いていい?」
少女は頷き、真っ赤な顔で、
「わ…たしの、名前、は、雪羽…です。」
「雪羽って呼んでいい?」
「はい…」
か細い返事が聞こえた。
「ありがと。
僕は久嶋の方からやってきた、吾妻涅 紅南。よろしくね。」
手を指しのばしてきたので雪羽は、手を出して握手した。
「わ、雪羽って手が冷たいんだね。」
ヒヤリとした感触があった。
「外で薪を集めていたから…かな?」
「へー、あんまり、冷やしちゃだめだよ。」
「うん…」
このとき、雪羽は紅南に嘘をついていた。
あれから数日が過ぎた。
けれどまだ、紅南はこの土地にいたのだ。
「ねえ、紅南。なんであなたはまだ、ここにいるの?」
初めて、胸の中に秘めていた疑問を吐き出した。
「え、なんでかな?」
彼は、何にも考えていなかったらしい。
「でも、これだけは言えるかな。雪羽…君と一緒にいたいから。」
と、付け足した。
「だから、いちゃいけないかな?」
「ううん。ありがとう、一緒にいてくれて。」
「あとね、」
「うん、なぁに?」
「ここらの土地にいる妖怪に会いに来たんだ。」
「え、」
「その妖怪は雪の妖精で、願いを一つだけ叶えてくれるっていう噂があるからね。
会いたいんだ。その雪の子に…」
「へー、そうなんだ。」
「ねぇ、雪羽は知らない?」
「ううん。聞いたことないや。」
「んー、そうか知らないのか…」
ハハッと雪羽は笑ったが、彼女はまた紅南に嘘をついていた。
それは……
雪羽がその妖怪の雪女で雪の妖精であるということだ。
それから、また聞いてみた。
「ねえ、それってどんな願いでも叶えてくれるの?」
「うん。そう聞いた。」
へー…と、相槌を打ちながら紅南の叶えたいことを聞いてみた。
「僕はね、妹がいるんだ、雪羽ぐらいの年の。梓紗っていうんだ。
けど、ある病にかかってんだ梓紗は。
もう助からないって言ってた。
だから、雪の子に会って、病気を治せとまでは言わない。
せめて、せめてこの世にあるきれいなものすべてを見せてあげれるくらいにまで、
回復させてあげたいんだ。」
「…じゃあさ、探しに行こうか、雪の子。
そのついでに、きれいなところも探しにいこ。」
「いいの?」
「うん。私にできることがあるならやらせて。」
「ありがとう。」
「ううん。けど、今からはさすがに無理だから、いろいろ準備してから行こうか…」
「うんっ!」
笑顔でうなずいてくれた…
それから、紅南の妹、梓紗ちゃんの写真を見せてくれた。
「きれいだね。」
「うん。だから君にもあわせてあげたいなぁ…」
そういながら、写真をしまって、
「じゃあ、行こうかっ!」
「うん。」
これから、私たちの旅が始まる。
まずは、紅南の住んでいる土地に行くことにした。
「ふー、やっと、辿りついた。」
三日ほどかかったが無事に到着し、
山のふもとに近いところの家を訪ねた。
「ただいまー。梓紗、いる?」
「あ、紅ちゃん、おかえり。」
漆黒の腰辺りまである長い髪に、すらりとのびた手足、きれいな容姿…
すべてがきれいで表せれるこの人が、紅南の妹の梓紗であった。
「ねえ、この人だあれ?」
「ああ、この人は、僕の命の恩人の雪羽。」
「はじめまして、雪羽です。」
「あ、はじめまして。梓紗です。」
そうして、梓紗の病気のことを詳しく教えてもらった。
「で、梓紗は、この家から出てはいけないんだ。」
謎の病。こういうのが一番しっくりきた。
「なら、早く雪の子見つけて、お願い、叶えてもらわないとね。」
雪羽がそういい、紅南は頷いた。
「じゃあ、梓紗にこのことを伝えて、行かないとね。」
「そうだね。」
そういって、2日後には梓紗に伝えてもう一度旅に出た。
「いってらっしゃい。二人の帰り、待ってるから。」
雪羽らは、北の方のいろんなところを訪れた。
旭区、尾井弓、掖川などといき、
ある土地の近くの森の中にある氷っている湖に訪れた。
その、ある土地とは初めに雪羽と紅南が出会った、『あの土地』だった。
「あの近くにこんな場所があるなんて知らなかったっ!」
紅南の目はキラキラしていた。
「うん。あのね、紅南、私、紅南に言わないといけないことがあるんだ…」
「なに?」
「最初から、私、紅南に嘘をついていたの。」
「え、ちょっと、待って、」
「私は、私が、あなたが探している、妖怪なの…」
「まってよ、僕は……」
「私ね、あまり人の願いを叶えたくなかったの。
だから、最初紅南に嘘をついたの。
けど、初めて、人に願いを叶えてもいいかなって思ったんだ。
紅南がいい人だったし…
私、紅南のことが好き。愛してる。
だから、あなたの願い叶えてあげる…」
「待ってよ。僕は、君と一緒にいたいんだよ。
君のことを愛しているから、君の手を離したくない。」
「あのね、今まで秘密にしていたけど、私は人に恋をしてはいけなかったの。」
だから…
「あなたにはきっと、いい人が見つかる。
あなたが願っていたこと、叶えるわ。」
あたりが急に雪のように白い光を放ち、輝きだした。
『私、雪女の雪羽は、人、紅南の願いをかなえるべく、この身をを捧げます。』
と聴こえたら、パァンッと音がした。
「…ゆ、きは?ねぇ雪羽っ!どこ?!」
紅南はあたりを見渡した。
けれど、彼女は見当たらなくて、湖の近くに、小さな雪だるまがあった。
その、雪だるまの目の石は雪羽の色の、血のような深紅の赤だった。
「雪羽?」
その雪だるまに近づいた。
「この、雪だるまが、雪羽…?」
その雪だるまの足元には、
『紅南ありがとう。あなたに会えてよかった。ありがとう。
幸せになってね。愛してる。』
と、書かれていた。
「雪羽、ありがとう。
けど、本当の願いは君と生涯を暮したかったんだけどな…」
涙が流れていた。
「また…会いに来るね。…その時まで待っててね。」
紅南が住んでいる土地に帰って、家に入ると、
「おかえりっ!紅ちゃんっ!」
「おわ、梓紗、もう大丈夫なの?」
「うんっ!急に楽になったの!それに、外にも出れるよ!」
「本当!?よかったね。」
「うん。」
梓紗は元気になっていた。
だが、何かが心のどこかに引っかかっていた。
「…ねえ、梓紗、雪羽のこと、覚えてる?」
「え、誰それ?」
「いや、ううn。なんでもないよ…」
彼女、雪羽のことは紅南以外、覚えていなかった。
それから、数年経ったある日、紅南と梓紗は、旅に出ていた。
雪羽と旅をしたところを訪れてゆき、
あの土地の近くの森の中にある氷っている湖に行った。
まだそこには、あの日の雪だるまがあった。
「雪羽、会いに来たよ。」
そういって、梓紗のもとに帰ろうとすると、
『おかえり、紅南。ありがとう。愛してるよ。』
と、聞こえ、振り返ると、雪羽らしき姿が見えたが、すぐに消えてしまった…
「ただいま、雪羽。僕もありがとう。愛しているよ…」
と、もう聞こえないかもしれない姿にそういい、
その場を最後にした。
初めて、童話書きました…
ここまで読んでくださった皆様ありがとうございました。