序章
結果から推測すると、創造神ラーウェアによる世界創造は完璧ではなかったようだ。
世界創造を手伝わせるためにまず天使を創り上げ、彼らを酷使することでこの地上を創り上げるまでは良かったのだろう。
だがその地上を働いた天使たちにではなく、新たに創り上げた人間や様々な動植物の住処にすると告げたことが原因で、天地創造を担っていた天使たちがストライキに入ってしまう。
困った創造神は地上の遥か上に天界を創造することで天使たちを宥めることとした。
だが、今度は天使たちのサボタージュ期間に生まれた歪な存在……所謂魔物と呼ばれる存在が地上を闊歩し、人間達を苦しめ始めたのである。
その結果、思い通りにならない世界に業を煮やした創造神は、魔物たちを地下に広がる魔界へと押し込めると世界創造を放り出してしまったのだ。
……申し訳程度に天界・地上界・魔界を統括する神々を創造して。
当たり前の話であるが、地下にある魔界へと押し込められた連中が己の境遇に納得する筈もない。
……何しろ魔界には光すら当たらないのだから。
彼らは光の当たる世界を求め、地上界を攻め落とそうと画策し始めた。
魔界に君臨する神である、破壊神ンディアナガルと邪神カンディオナを筆頭として。
だが、この二柱は……魔界を任されるために創られた神々だけあって、協力し合おうという心が欠片もなかったのだ。
それからの長い間、魔界を支配する二柱の神はどちらが地上を攻め落とす主導権を握るかを巡り、血で血を争う戦争を繰り広げていたのだが……魔界の住人が全滅しかけた時、お互い同士で争う無意味さをようやく悟る。
そして、両者は……一つの賭けを行った。
──お互いが選んだ四人の戦士を人界で争わせ、最後まで生き延びた方が魔界を百年の間支配すると……
……それから、七百年。
三度に渡る邪神の勝利とその度に告げられる破壊神の異議申し立ての結果……
四回目の戦いの、何度目になるか分からない仕切り直しが始まろうとしていたのだった。