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第1話 出会いは割と最悪だった

「なぁ、とっとと金返すようにてめぇの親父に言ってくれよ。じゃないとどうなるか、分らねぇぞ」


 そんな物騒な言葉が聞こえてきたのはとある日の下校中のことだった。


「ちょ、ちょ、ちょっとそれはオレに言われても困るというか……。オレの腕が飛びかねないというか」

「あ? 絞められてぇのか?」

「父さんに直接、って、あ、衛藤(えとう)さん!」


 通学路に繋がる路地裏から聞こえてくる物騒な会話。あらこれは裏社会の会話みたいな感じと思いながら、路地裏の入り口からちょこっと路地裏を覗く。


 金返せとか、腕が飛ぶとか、絞められるとか現実で中々聞かないよ。あと、なんか、片方の声に大変、聞き覚えがある。


 そんなことを思いながら路地裏をのぞいたのが運の尽きだった。


「ああ? そこに誰かいんのか?」

「オレの同級の衛藤(えとう)麻奈(まな)さんがいます!」

「おいこら、荒々木(あららぎ)ぃ!!」

「ごめん」


 路地裏には二人の人物。


 一人は私が通う羽流々(うるる)高校の生徒。私の同級生、荒々木(あららぎ)雅人(まさと)。いつも頼りない顔をしていて、態度も頼りなくて、へにゃあと笑っているタイプの人間。なので、今、目の前でヤクザ然とした人と普通に話しているのはビックリである。


「ほぉん、同級生ねぇ。おい、逃げんな、お前」

「え、嫌です。荒々木君への脅迫容疑で通報します」

「通報されるようなことしてるように見えるか? あ?」

「見えます」

「ぶっ……よく言うね、衛藤さん」

「「お前/てめぇは黙っとれ」」

「はい、すみません」


 そして、荒々木君と話しているヤクザ然とした30代くらいのピアスした、茶髪の物騒そうな男。明らかにそっちの筋の人では、と直感が私に叫んでくる。

 ってか、この人顔良(かおよ)っ。


 まず、私の姿を見つけて私を呼んだ荒々木君。いや、荒々木。お前は許さない。いつかぶちのめす。


「あー、ま、んなら、ちょーいと止めさしてもらうわ。頼む、大介(だいすけ)」

「はいはい。人使いが荒いよ、優介(ゆうすけ)。こう見えて僕、幹部なんだけど」

「暇してたんだからいいだろ」


 逃げようと後ろに足を動かしたところで物騒そうな人が私の腕を掴む。力強い。

 イラッとして言い返していると物騒そうな人、いや、物騒と言おう。物騒は私の背後を見ながら「大介」と名前を口にする。その瞬間、何もなかったはずの背後に壁がある感覚がした。胸筋という名の壁が。

 さらには聞き覚えのない声が。聞き覚えのない声は私の目の前にいる物騒を「優介」と呼んでいた。


 全っ然、優しくねぇよ、この優介。


「は?」


 背後に視線をやると目の前にいる物騒と同じ顔をした人がそこにはいた。


「ま、一回、お話しましょうか、衛藤麻奈さん」

「な、話しようぜ、麻奈ちゃん?」


 同じ顔をした物騒と「大介」と呼ばれた人はニヤリと私に笑いかけた。同じ顔なのに、クズ顔とゲス顔だ……。


 腕を動かそうとするが二人の力は強い。圧もすごい。怖いどころではすまないくらい怖い。


「荒々木、お前、殺す。絶対、許さない。絶許」

「ねぇ、言葉強い。ごめんって」


 私を巻き込んだ荒々木君を私は一生、許さないことを誓った。

ゲス(ヤクザ)の弟のクズ(ヤクザ)との出会いは割と最悪だった

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