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正しい依存の作り方

作者: 爱丽丝
掲載日:2026/03/30

柊真は、オンラインゲームで「ミユ」と出会った。

顔も本名も知らない。

それでも、毎晩のように同じ時間にログインして、同じステージを攻略して、同じことで笑っていた。

「ナイス、今の完璧!」

ヘッドセット越しの声は、少し高くて、よく笑う。

ただのゲーム仲間。 そのはずだった。

「大会、出てみない?」

ミユがそう言ったのは、何気ない会話の中だった。

軽いノリの提案だったのに、気づけば本気になっていた。

そして――初めて会うことになる。

会場で見つけたミユは、思っていたより大人びていた。

「……シン?」

少し不安そうに笑う顔。

「ミユ?」

「うん、やっと会えた」

ぎこちない会話。けれど、不思議と落ち着く距離感。

違和感が生まれたのは、その後だった。

大会の合間、別の女性プレイヤーに話しかけられる。

「さっきの動きすごかったです」

ほんの短い雑談。笑って、軽く返しただけ。

それだけだった。

だが、振り返ったとき。ミユの表情が、一瞬だけ固まっていた。

大会後。

「ねえ、シン」

「うち、来ない?」

迷いはあった。

けれど、それ以上に“いつも通り”の延長のように感じてしまった。

彼女の家は、妙に静かだった。

生活感が薄く、音が吸い込まれるような空間。

玄関に入った瞬間、理由の分からない違和感が胸に残る。

「どうしたの?」

背後からの声。

「いや……静かだなって」

「ふふ、そう?」

リビングに通される。

座った瞬間、ミユが立ったままこちらを見ていることに気づく。

「ねえ」

その一言で、空気が変わる。

「さっきの人、誰?」

問いは続く。逃げ道はない。

真が答えようとした瞬間、視界が揺れた。

床が近づく。意識が途切れる。

目を覚ましたとき。体は思うように動かなかった。

手首と足が固定されている。

完全ではないが、逃げられない程度に。

「起きたね」

ミユは椅子に座り、こちらを観察していた。

「なんで他の人と話すの?」

責める口調ではない。

ただ、本気で理解できないという響き。

真は黙る。

それが唯一の抵抗だった。

沈黙が、空気を変える。

「答えて」

距離が詰まる。呼吸が浅くなる。

空気が重くなる。

限界の直前で、圧が消える。

真は荒く息を吐いた。

「なんで言わないの?」

その声には、怒りではなく、焦りが混ざっていた。

やがてミユはスマホを取り出す。

映像が再生される。薄暗い場所。

手ブレした画面。そこに映るのは大会で話していた女性。

途中で止まる。だが、それで十分だった。

「選んで?」

ミユは微笑む。

「私と、この子」

言葉は軽い。 だが、選択の意味は重すぎた。

真は気づく。もう、どちらを選んでも同じだと。

「……お前だよ」

その一言で、すべてが確定する。

ミユは泣きながら笑った。

「よかった……」

拘束は解かれる。だが自由は戻らない。スマホは奪われる。

「もういらないよね?」

外との繋がりは断たれる。

「シンが連絡取る相手、私だけでいいでしょ?」

ミユは優しくなる。

食事を作り、穏やかに話しかける。

だが、その優しさには条件がある。

「ちゃんとやろ?」

少しでも拒めば、空気が変わる。

ある日、彼女は語る。

「シン、優しかったから好きになった」

ただの一言一言が、彼女の中で積み重なっていった。

「もっと一緒にいたいって思った」

「でも足りなかった」

「私だけじゃダメだった」

その言葉に、歪みはない。ただ、方向が壊れている。

「だから、こうするしかなかった」

ミユは迷いなく言う。逃げ道は、もう存在しない。

「……ミユ」

名前を呼ぶ。

「ちゃんと見るよ」

それが嘘かどうか、もう分からない。

ミユは涙を流して笑う。

「やっと繋がれた」

時間が過ぎていく。どれくらいかは分からない。

外の世界は、薄れていく。名前も、場所も、人も。

思い出そうとしても、輪郭がぼやける。

「シン」

呼ばれる。反応する。それでいい。

それだけで、満たされるようになる。

「好きだよ」

「うん」

そのやり取りだけが、繰り返される。窓の外は見えない。だが、もう気にならない。ここがすべてだからだ。

二人だけの、閉じた世界。その中で、静かに、確実に。

“外”は消えていった。

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― 新着の感想 ―
この作品は、かなり純度の高いメンヘラ小説だと思いました。一体どうしてこのようになってしまったのでしょうか、考えることは無意味ですね。ですが、なかなかに描写もよく、言葉回しもよく、完成された作品と感じま…
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