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何故か完成してないのに公開されて、非公開の仕方が分からなかったので一旦消して、これは再投稿です。

再投稿ですが、これは完成されたお話で追加構成もあります。

(このお話は序 中 終の3部構成になっています)



生きるべき人間

死ぬべき人間


それを決めるは、

神じゃない事を私はわかっている


そして


それがいない事も

私は知っている。



      〜好きと伝えたくて〜

《序》



……朝が来た

幽霊団地の朝は 陽の光も通さない

影に 小さな電球が体を照らし

傷だらけの壁と対面する。


ホコリとダニと、何かがまとわりつく布団に

シワを作りながら 私は起き、

衣服も何もない 生まれたままの姿で

頭を上げた。


痛い

頭も身体もズキズキする

中も外もジンジンする

腕と足の迷彩柄が 私の過去を物語る

あざと打撲と小さな骨折 切り傷 擦り傷

炎症 膿み。

これまでやられたことが、

言葉でなくとも伝わる

そんな体をしている。


起きたって 何かあるわけでもないし

眠ったって 何かあるわけじゃない

ただ 生きてるだけ、

救いを待ってるわけでもないし

助けを期待してるわけじゃない

本当 目的もない 

ただ 死んでないだけなんだ。


こんな私をママは、

()()()()()()()()()

とよくそう言う

私の名前より言われた…

それより 私に名前なんてあったのかな…


よく考えてみたら、

ないや…名前なんて、なかった


妹には、名前あるのに…


『メメ』

愛でるって言葉から来てるらしい

現に私より可愛くて 私より愛されてる。


なんでこんなに、扱いが違うのか考えても

答えは出ない…きっと好みの問題だと思う

思い描いてた娘と私は別物で、

妹は理想的だった、ただそれだけの事。


ママの態度を見れば分かる

私をこんな物置に押し込めて、

メメには立派な部屋がある

まだメメは、

言葉だってマトモに話せないのに。


私の存在意義は、私が決められず、

全部ママ達が決めてる、

人間として、ごく一般に成長させず

それ以下に育ててるんだ。


パパは私がもっと成長したら

私を()便()()にするって

性の家畜だって言ってた。


捨てるより 孤児院に送るより

お金にした方が良いって思ったんだろな

私は思い描いた子供じゃなかったけど、

女だから、幸いに女だから

ここしか利用価値もないんだと思う。


お股が痛い

昨日はニンジンを捩じ込まれた。

少し裂けて血が出て、

痛くて泣いたら お腹を殴られた

それで吐いちゃって いっぱいゲボしたら

顔を蹴られて 床のゲボを舐めさせられた。


いっぱい辛い

身体が避ける感覚が全部

私は常に動いてる

痛いっていう神経が

よく 研ぎ澄まされてる


この物置から出られたら

どんなに良かっただろな

早く死んで この場所から逃げたい

そう、思う。


……

“ダンっダンっ“


……


床を雑に踏みつけて 

音を鳴らしている。


きっとこれは、

音が大きいからパパだ

大きなあくびをして

こっちに来ている。


これが、いつもの日課。


ガチャッ


「起きてたか…

じゃあ 分かってるだろ

さっさとケツ向けろ」


朝一番に 私はパパに犯される


“ズズッ“


「んんっ…挿れずれぇな、おいっ」

“ドコッ“

腰を殴られた

前にも同じ所を殴られたから

痛みが重なってもっと痛い。


私はいつも濡れてないのに挿れられるから

やりづらいのは私のせい。

だけど、ずっとずっと痛いだけだもん

気持ちいいだとか快感だとか

そんな物感じた事が無い

だから怖い いつも怖くて

乾いた膣になる。

それでまた殴られて…


…今日はおしりの穴に挿れられた。


挿れれるようになるまでの過程は…

思い出したく無い。

大きなディルドとか、アナルビーズとか、

もう、見たくない。

何回も何回も裂けて、

お尻の割れ目から血が噴き出して、

血塗れになって、

治ってもまた裂けて…

痛くて、痛くて、たくさん泣いて

でも泣いたら怒られて、殴られて

広がった今も、痛みしかない。


あれだけ、酷い事をされたからかな、

もう簡単に開きすぎて 、

いつもうんちが漏れそうになって

凄く 嫌だ。


「あぁッんんっ」


ズコズコと大きなパパの身体は

私の身体にチンコを突き刺す。

一突き 二突き

傷口に擦れて 凄く痛くて苦しい。

早く終わって欲しい、

そう思うと

パパは生暖かい液体を

うんちに混ぜた。


「んっ」


“ビュービュー“

腸の中には溢れる精液

ぬるい液体が直接お腹に注がれて

気色の悪い感覚が背筋を走った。


「ん…漏れる…あぁ…あ」

お尻の穴を絞めても、下痢みたいになった

精液とウンチの混合物は、

小さな穴から“ブップチュ“と音を立てて

抑えきれずに、

少しずつ少しずつ流れ出てくる。


“ブリップチュ…ブッブップチュ…“

「あぁ、漏れちゃう…あ、あ、…いや」


もう抑えようが効かない

一度流れが来てしまえば、

止める事は難しい、

泣きそうになりながら

手で、お尻を抑えるけど

あんまり意味をなしてない。


「んんーごめ…ごめんなさい…ん」

泣きそうになりながら、

私はひたすら抑える

けど…もう…無理だ。


「チッおい 漏らすな」


“ドンッ“


パパは私を蹴り飛ばす、

必死に抑えてたのに、

お腹を直接蹴られて、

もう、諦めた。


おしりから白く茶色い液体が沢山出てくる、

私はそれをひり出す。

もう嫌だったけど、全部漏れそうで、

辛くて、そこで諦めちゃった。


パパは私の部屋がウンチや精液で汚れてると

凄く怒る、だから、ここで汚くなったら…

舌で舐める。

全部舐めて掃除して、

吐いちゃったらそれも舐めて、

掃除するの。

だから、我慢してたけど、

結局、こうなっちゃうんだな…


いつからこんな風になったんだっけ

そもそも ずっとこうだったっけ

過去の記憶は皆

白く汚れて見えなくなった。


愛がお腹に溢れる時

幸せなんて 微塵も感じない。


不幸な風が目を切ってくる

今日もまた 始まるのかな…なんて





…ママは…私を嫌いだ。


流せば良かったが口癖で

アンタには要らないって

子宮を殴られる、蹴られる

切られて、刺されて、また、殴られて

きっと、多分、実感してる

私にもう子供は出来ない。


人間の女としての部分が

ママとパパに溶かされて、壊されて

ただ 受け止めるだけの 肉の便器になってる

そうなった日から…

私は人間でもなくなった…なんて


お昼頃 今日はお休み

ウチにはパパもママもいて、

メメがテレビを見てるのかな、

変な音と、皆んなの笑い声がする。

楽しそうだなって…なんて思ったりして

望んでいたのかな、

愛されたいって、よく…わかんないけど。


でも、メメだって子供、

小さな小さな子供、だから

思い通りになんて動かない、

だから、愛してるからって、

ママもストレスが溜まるんだろな。


メメが泣いてる。


子供の泣き声が嫌いなのは、

私だけじゃ無い、ママも、パパも、一緒。


だから、私が泣くと、

いつも酷くなる、だから、メメにも

何かするのかなって、そう思った。


けど、期待なんて、

そうしないほうが、やっぱり良い。


ストレスが溜まるのは、

どの人間も共通で、

その発散は、人それぞれ違う、

でもママとパパは…仲良いのかな

二人とも同じなんだ。


”ガチャ“


「…なんだよ、メメちゃんがうるさいとでも

言いたいのか!? 

なぁ…おいって…

…おい黙ってんなよクソ女

殺すぞおい、なぁ!?

お前がいるからダメなんだよ、クソ女、

寄生虫がさぁーっ!マジで

…… なんだよ その目はさぁ

あんたも私が悪いって言うのか?

クソガキがよぉ!

さっさと死ねクソ クソ クソ!」


ドンッ! ボコッ!ドガッ! バキッ!ボコッ


ママは私の顔ばかりを殴る、

手の出っ張った骨が、

鼻に当たって鼻血が出て、

両頬が膨れるくらいに打たれる。

同じ様に身体に凹凸を増やし

色をかえて 模様にする。


「ごめっ…ごめんなさい、ごめんなさい…」


「死ねっ!死ねっ!死ねっ!死ねっ!死ねっ!

なんで生きてるんだよ なんで死なねぇーんだよ!

死ね!ッ死ね死ね死ね死ね死ねよ!

死ねっ 死ねっ 死ねっ死ね死ね死ね死ね死ね死ね

おいっ!おいって!死ねよ! 死ねよ!」


「うぅぅ…あぁ…ごめん…なさい。ほんとに

ごめんなさいぃ…お願い…です…

やめ…やめてください…

ごめん…なさい…ごめんなさい…

痛い…痛い…から…許して…く…ください

ごめんなさい…ごめんなさいぃ」


どれだけ謝っても、ママは許してくれない、

また…おなかを殴られて、また裂けて

血が垂れて…ごめんなさいって言って…

でも、許してくれなくて…

ほんと…もう……


「はぁ…はぁ…死ねよ…クソガキ」


息を切らしてる

ほんとに殺す気だったのかな…

やっぱり、ママは私を嫌いだ。


扉の外からは、

パパが、ママが静まるのを待っている


そして、ママの様子を見て口を出す。


「おい、もうやめとけよ、メメに悪影響だ」


そう、制止したけど、

メメは相変わらずテレビ見てる。


そしてようやく、終わった

顔が自然と下を向く、

意識はしてない、けど、

ぽたぽたと、膝の上に水が垂れた


「うぅ…ウッ…うぅ…う」


声を殺す。


痛みから来てるのか、

メメとの差に感じているのか、

両方か…分からないけど、

涙が流れてくる。


まぶたから流れる血と混ざって

目の前が赤くなる…けど

涙の味はしょっぱくて

久しぶりに…

味を感じた気がした。


言葉は時に、心のうちにあるものより、

純粋な真実を話す。

諦めた様な私の心より、

涙と出る私の嗚咽の方が、

感情なんだろな。






これが日常、

いつからなんだろうな

こうなっちゃったのは、

分からないし、分かりたくもないけど、

少しでも、

メメみたいに扱われてた時があるなら、

やっぱりもう、死んでもいいかな…


人生に幸せがあったなら、ほんと、

少しでもあったなら、もう、

早く……死んでしまいたいな。




ママとパパはいつも私をここに監禁して、

私を虐めてる。


メメは、私の存在を知らない。


そもそも私の存在は、

この家にはないのかもしれない。


概念ですら無いのかも、

生きてすらも無いのかも、

なんか…こう、浮遊感

そんなのがある。


でも死んですらもない…から

どうしたって、生きてて…


きっとそう…そして

…これは、死ぬまで終わらない

………うん…死ぬまで…




………また…足音

今度はなんだろう

犯されるのかな

殴られるのかな

どっちでも…

…死にたいな…


“ガチャッ“


扉の外には、パパがいた。


「…出ろ」


「えっ…あの…えっと…」


「良いから出ろっつってんだよ!」


“ガシッ“


パパは私の髪を掴んで、

そのままあの物置から追い出した。


「なに…なんで?」


私は戸惑って、息が喉に詰まる。

今まで、物置から出た事なんて無かった

生まれて初めての事で、

まともに言葉もでない、

だけど、はっきりとした疑問が、

この混乱が、脳を突いて

肺を追い抜き、パパに届く。


「…ちょっと…行かないといけない所がある

だが、メメは連れていけないから、

お前がメメ見とけ」


なんだか、様子が変だ、

いつもは、私が言葉を出せば、

うるさいって、殴られたけど、

今は、私の事を気にしてる場合じゃないって

そんな感じかする。


初めて、パパと会話出来た

そんな、新鮮な気持ち。


そして、メメのおもり、

こんなことを頼まれるなんて…


私がして良いのかな、

いつもは私の姿を極力見せない様にしてるのに…ママに怒られないのかな…


私は心配という、

初めてに近い感情を感じた

今日だけで初めてを何個も知った…

なんだか…嬉しいのか…嬉しくないのか

よく分からないな…


でも、メメを見とけって事は、

ママもパパと行くって事だから、

凄く…大事な用…なのかも…


黙る空間には、

私の感じる感情が少し混ざった


そして、明るい妙な日差しを打って、

わたしを嬲って、撫でる。


「んっんん、……ん」


言葉が出ない、

ママとパパの姿を見ると喉が締まる。


パパとママもなんか歪んでる、

笑ってるのに、かからない…


なんか、怖いな…



「それじゃあ…俺たちは行くからな」

「….」


パパはそう言って扉を開く、

ママは黙ってこっちを睨んでた。


“ガチャンッ”


そして、扉は閉まり、

面白さとかけ離れた家の中は、

愛されたメメと、愛されない私だけになる


「………」


とにかく、

メメと一緒にいるしかない…よね


リビングに行くと、

メメはテレビの前の、

大きなソファに寝っ転がって、

スヤスヤ寝息を立てていた。


「………」


やっぱり、私より可愛い顔をしてる

愛らしいとは、この子の事を言うのかな

ほんと、可愛い顔してて、

ほんと…憎らしい。


凍ってるのに動かない、

ひどく浅い空間に、

死にかけの子供と、

無防備な赤子が一人。


不自然だけど、型にはまる、

そんな、組み合わせ、

うまく比例して。


初めて、こんなにはっきりと、

メメを見た気がする。


笑い方も泣き方も、

卵が一緒だから、

すごく、見覚えがある。


見守って、ほんとに、

今日は不思議な日、

別に楽しいわけじゃない、

ただ、新鮮で、

ただ、なんだか変な感じがする

笑えもしないけど、

メメは眠ってる。


殺意っていうのかな

今まで感じた数が一番多い感情、

でも、これは、なにかされたから生まれたわけじゃない

ただの嫉妬から来てる。


あと、単純に、

メメなら私でも殺せる、

いくらバカでも、

それぐらいはわかる。


メメを殺して、私も死ぬ。


そうしたい。


そう…できる、今ならできる。


けど…なんで、パパは、

私を野放しにしたんだろう…


こんなチャンス…

滅多にない


「メメ……」


そうおもった、瞬間だった……












七年後…




《第三次世界大戦について》


【xxxx年x月x日

日本の岐阜県土岐市に、

核ミサイルが着弾。


あまりに唐突な攻撃に、

日本中はパニックに陥り、

政府の機関が機能を停止、

自衛隊が独自に攻防を開始した。


核を打ったのは、隣国の北朝鮮であり、

その後ろには中国、ロシアの影。


日本に核が落とされた事で、

アメリカが日本救援に入り、

側近の国々と共に連合となり、

日本を守る。


第三次世界大戦は、核戦争となり、

二年の激戦の結果

アメリカは負けた。


中国はアメリカを支配下に置き、

ロシアは日本を吸収、

連合軍は敗北。


世界的に共産、

社会主義が大きな力を持つこととなった】



と、教科書には書かれている、 

……かなり被害者ヅラな文章


まるで北朝鮮が、

いきなり攻撃してきたみたいな…


日本はなすがままにやられたーみたいな…


やっぱり、今の一般教育では、

そうゆうことになってんかな…


xxxx年x月x日


私達の家の真横に、核爆弾が落ちた。

目の前が真っ白になるくらいの光と、

窓が粉々になるくらいの衝撃波、

そして熱波と爆発、放射線。


物凄かった


本当、生きてたのが不思議なくらいに…


下半身壊死、全身やけど、左目失明、

皮膚損壊、内臓破裂、左頬複雑骨折、失血

肋骨折、肺破裂、脳震盪…

その他、割れた破片による擦り傷多数。


世間から見たら、ただの核被害者、

可哀想な『被爆者』だ…


“タッタッタッ“


“ビクッ“


体が震えた…

だれかがこっちにきてる…


その足音に、体が自動的に震える…


あの日々から、もう何年も経つのに、

いまだに足音が怖い。


“タッタッタッ“

「あ、いた!」


私の許可もなしに、

部屋へ入ってきたのは、

『メメ』を持った『シュレ』だ。


「こんなところにいたんだ、

…何読んでるの?」


友達のシュレを足代わりに、

メメは私を探しに来ていたようだった。


「別に、民家から押収したただの教科書、

てか、シュレちゃんかわいそうだから、

あんま足代わりにしないであげなよ」


私がシュレを見ると、

シュレは目を逸らす。


「べ、別に大丈夫ですよ〜

メメちゃんはこんな状態なんですし、

みんなで支えてあげないと〜」


「…そう、シュレちゃんがいいなら、

……いいけど……」


…シュレ…私と喋るの苦手なのかな……


私が目を合わすたび逸らすし、

喋ると変に早口になるし……

まぁ別にメメの友達だから、

嫌われてても、どうとも思わないけど…


「そもそも私は一人じゃ歩く事さえできないんだから、ちょっとは労えよ」


メメはシュレの腕の中でこっちを睨む。


息を吸う度に肺がヒューヒューと

音を立て、風船のように膨らむ、

膨らんでは縮んで…


「あ、そうそう、『ドルクス』が、

私たちに話があるって言ってて

それを伝えにきたの…」







《ドルクスの部屋》


“コンコンコン”


「ドルクス入るよ」

返事を待たずして、私は部屋の中へ入った。


扉の内側は、真っ白なコンクリートの壁が、六つ繋がっただけの、

精神障害者の部屋みたいで、

その真ん中のベッドに、

ドルクスは横たわっていた。


禿げた頭に、

たくさんのチューブが顔中ついて、

体は野良猫くらいに痩せている。


「来たよードルクスー」


メメが私の腕の中でドルクスに挨拶する、

その声に反応してか、ベッドの関節を鳴らし、ドルクスはこちらを向いた。


「…あぁ…来て…くれた…か」


喉にタワシでも入ってるかのようなしゃがれ声で、しわくちゃの顔をこちらへ寄せる。


「相変わらずひどい状態だね、」


「お前に…比べたら…全然…だ」


ドルクスは末期のガンを患っている、

核の放射線によるもので、

もう先は長くないのが、目に見えてわかる。


そんな人が逆にメメを憐れんでるのが、

なんか変な感じ…


「…で、話って何さ

依頼の事?」


私は本題に入ろうとすると、

ドルクスは徐にノートPCを取り出した。


彼は『情報屋』で、

ずっと前に、

ある事を調べるよう頼んでいた、

多分その話だと思う。


「…あぁそうだ…依頼の…事なんだが…

ほら…見てみろ…」


ドルクスが開いた画面には、

私達が求める、“それ“が写っていた。


「工作員に…賄賂を払って…撮って貰った、

お前達の両親は…今、名古屋にいる…」


ドルクスの言う通り、

画面には、はっきりと、

あの二人が写っていた…


何年も前の記憶なのに、

あいつらも老けてるはずなのに、

ちゃんと私は覚えていた。


「…凄い…ありがとう」


「この人達なの?……ありがとう!」


私がお礼を言うと、

一呼吸置いて、メメも感謝した

私よりメメの方が態度では喜んでるけど、

絶対に私の方が喜んでる。


すると、ドルクスは喜んでる私たちを見て、微笑んだ。


「報酬は…大丈夫だ

これは俺が…奢ってやる」


「え、いやいや払うって」


「いや…いらない…

長い時間待たせた…

それに……メメが…そんな状態なんだ…

金なんて…もらえ…ないよ」


「そっすか」


良くしてもらってるのに、

わたしはどうも悪態をついてしまう、

でも、どうせあとで金もらっとけば良かったってなる癖に…ドルクスは偽善者って思う。


望み通りお金は払わず、

簡素なお辞儀して、

私たちは部屋を出ようとした


“ガチャッ“


「ちょっと……待て……」


だけど扉から出ようとした瞬間、

ドルクスが呼び止めてきた


「何?」


「姉の方……だけ…こっちに……来い」


ドルクスは、

私だけ部屋に戻れと言い…

メメは怪訝な顔をした。


「私入っちゃダメなのー?」


「少し……だけで……いい…から…

メメ…少し待っててくれ」


「だってさ、

メメ、ちょっとここで待ってて」


不服そうなメメを近くの椅子に置き、

私だけで、ドルクスの部屋へ戻った。


“ガチャ“


「お前に……だけ……

聞きたいことが…あってな」


ドルクスは少し真剣な雰囲気で、

私の目を見てる。


「俺は…お前の……願い通り、両親の…居場所を特定し…渡した…

だが……用途は…なんだ?」


「……別にー、

疎遠だったし会えたら嬉しいなぁーぐらいの気持ちだよ…」


そう言う私に、

ドルクスは返答しず、

私から目を逸らさない、

そして、目を見開く。


「お前は……両親を…殺すつもりか?」


……なんで…


「…………な、なんでそう思うの?」


「『パブロ』から…聞いたよ……

お前は…酷い虐待を……受けてたと…」


…………


「………」


「私から…何か……命令する…つもりは無い…

た、ただ…メメを巻き込むな…

あの子は…何も知らないんだろう?

お前の…私情で……メメを…これ以上…

傷つけるな………

それが、渡した情報の…代金替わりだ」


……


…………


「……分かった…」


「…ま、」


“ガチャンッ“


まだ何か言いたそうなドルクスを背に、

私は部屋を出た。


ドルクスは…何も分かっちゃいない、

私の気持ちも、メメの境遇も、

ただの正論だけ言って、

結局は自分の思想をぶつけてるだけ、

意味の無い時間だった。本当に。


部屋から出ると、

椅子の上から、

メメがこちらを見ていた。


可愛い顔で、目が大きくて、鼻が高くて…

首から下が無いこと以外、完璧な人間…

嫉妬が、ない訳じゃ無いけど…

やっぱり憎たらしい……


「…何話してたん?」


「別に…仕事の話…

メメには関係ない事だよ」


露骨に目を逸らしながら嘘をつく、

私は嘘が下手くそだ。


メメは不審そうだったけど、

そこまで気にすること無く、

私を待った。


「ほら、抱っこしてよ」


「はいはい…ヨイショっと…」


メメの重さは、

新生児の重さとほぼ同じで、

丁寧に持たなければ、

メメにとって負担となってしまう、

その為、色々と意識して持たないといけない。


メメは首の下には、

最低限生きれるくらいの

臓器が詰まった皮膚の袋がぶら下がっている。


その皮膚袋に手を添えると、

体温に近い温かみと、心臓の動く振動、

肺の膨らみが直接伝わってくる。


…ドルクスが言っていた事。


その通り。全くその通り。


メメは、これ以上傷つくことないくらいに、

傷ついて、生きる事を望んだ。


相応の覚悟を持って、

あの姿になる事を望んだ。


だけど。だけど私は。


……この温かみが、冷たくなるのを…

わたしは少し…望んでる…


………


「どうしたん?」


「…なんでもない」


「なんかではあってよ、

こう…動けなくなってからさ、

何もせずに運ばれるのってさ、

めっっっちゃ暇なのよ」


「…じゃあなんで…」


「ん?」


生きる事を選んだの?

なんて…言えない


「…メメ…はさ、後悔してない?

そんなさ、姿になって…」  


「…後悔かー…後悔というよりも…

心配が大きい。

すぐ死んじゃうんじゃないかなって…

ねーちゃんやシュレちゃんより先に死んだらって考えるとさ、すごく…怖くなるよ…

でも、胴体を切り離さなきゃ、

私はもっと早く死んでた、だから、

まだ生きられるって事に…安心もしてるよ。

悪い事ばっか考えても仕方ないしね」


「…メメはポジティブだね

私にも少し分けて欲しいよ」


「ねーちゃんはネガティブ過ぎるからね、

あっそうだ、…じゃあッんんんっ」


メメは私の胸に顔をギュッと押さえつけた、

結構力を込めているのか、顔が少し震えている。


その割には圧迫感も痛みもない、

誰かに胸を触られるみたいな感覚。


「んんんんっっっあぁっ!

ヨシっ、これで少しはポジティブになった?」


メメの行動は、

私をポジティブにさせるための行動だったらしい。


…胸の辺りが温かい。

メメの体温がそのままここにいる。


……なんとも言えない気分だ


「少しはなれた…のかな?」


「うッ力込めすぎて頭痛いぃ」


馬鹿かコイツ。


「…バーカ」


メメは私を向くと、また笑顔で、

「バーカ、バーカ」と私に言った。


廊下には、私達の笑い声だけが響いた。







三角木馬って知ってるかな、

昔の人が作った、拷問とか尋問とかに使われてた道具。


馬を模した木とか鉛の造形で、本来人が乗る馬の背中が鋭く尖ってて、その上に人を固定する。

乗った人は常にお尻に力を入れてないと

尖った胴体が股を刺して、下手すれはおしりの穴が裂けて、

そのまま脱腸しちゃう結構恐ろしい品物だ。


私は、その存在自体は知ってたけど、

実物は今日初めて見た。


「あぁ!あ“ぁぁぁぁ!

お、降ろしてぇ…あぁ!あ“ぁぁぁぁぁぁぁ」


目の前でそれが使われてるとなると、

拷問器具はしっかり人の苦痛を考えて作られてるって言うのがよくわかる。


そしてあの女の人は多分もう限界なんだと思う、女性器から血がだらだら流れてるし、

三角木馬の先端が錆だらけだから、

見てて痛々しい。


「うん、僕も早く降ろしてあげたいからさ、

正直に言ってよ、

組織のお金盗んだのは、君だよね?」


『パブロ』さんは冷たく女性に言い放つ、

いつもの優しい雰囲気と変わって、

拷問してる時の顔は、まるで悪魔みたい…


「おーいパブロさーん!!」


メメが声をかけると、

パブロさんはスッと斜め後ろに突っ立ってる私に笑顔を向けた。


「あ、メメちゃん達じゃないか

…丁度よかった、これね、

『カイロ』くんにちょっと、

作らせてみたんだ。

爪を剥ぐのは時間がかかるし、

うるさいし…でもこれはさ、

僕の匙加減ですぐにでも、

真実を言いやすくできるから、

結構画期的だよ。

いやー中世のこうゆうの作ってた人間さ、

尊敬しちゃうよ尊敬をさ…

今度は、ファラリスの雄牛とか鉄の処女作ってもらうかなーって思って…」


「あ!あ“ァァァァ!あぁぁぁ」


「ちょっパブロさん!後ろ後ろ」


拷問官の役割は、対象を痛めつける事。


その為の拷問道具は、人をどれだけ効率的に痛めつけられるかを考えられた物だ。


だけど、簡単に人を殺せてしまう。


拷問官は対象を生かす事も、

また大切な役割なんだ。


「あ…あ、あ、ぁ」


「あちゃードジしちゃったよ……

子宮口まで裂けちゃったか」


「裂けちゃったかじゃないですよ、

あーあー血があんなに、

もう助からないですよあれ」


女性にはもう力を込める意思もなくなり、

今だに体がジリジリと裂け続けている。


もっと早い段階で嘘でもいいから言えば、

まだ助かるかも知れなかったのに…


「うっわグッロ、見てらんないよこんなの、

ねーちゃん私の目塞いで」


手のひらでメメの目を塞いだ。

メメはグロテスクな物を毛嫌いしてる、

無論私も好きじゃない、

だけど、こうゆう光景が日常に組まれると

自然と慣れてくるもので、

最近はあまり苦手に感じなくなってきた。


「……あ、で、

二人とも僕に用があってきたんじゃない?」


「えっと、外出許可の申請を…」


「パパとママの居場所が分かったんですよ!」


メメは自慢をするかのように、

まるで面白い事が起こったかのように、

私をさえぎり、

大きな声でそうパブロさんへ伝える。


だけど、多分メメの予想と違う反応をパブロさんは起こした。


「へ、へぇ〜よ、良かった(?)ね……

良かったの……?」


ほら、なんと答えればいいかわからなくなっている。


当たり前だ。

パブロさんは私が虐待されていた事

その内容も全部知ってる。


だからこそ、満身の笑顔を向けるメメを不思議に思うのは仕方の無いことだ。


「……ま、まぁいい事ではあるんで」


「…そっか、

じゃあ…後でシュレに渡しとくね」


パブロさんは何か言いたいことがありそうだったけど、言うべきか悩んでるみたい…


「ちょっとメメ、外で待ってて」


「えーまたぁー!?まいっか、早くお願いね」


冗談っぽく不満を言うメメを拷問部屋から出して、私はパブロさんへ近づく。


「パブロさん……何か、私に言いたい事でもあるんじゃないですか?」


「……君は、さ…本当にいいの?

あんな酷いことされてたのに、

ギリ僕の拷問よりキツイ事されてたんだよ

なのに会いに行くのかい」


「私は……愛ってものを知りたいんです

それだけです」


本当の事を言った、嘘は無い。


「……殺すんだろ」


「…………殺すなんて…私言ってません」


「…僕は…殺す事を否定しない

この世には、死んだ方がいい人間が大勢いる、その大勢の中に君の両親がいる。

だから、生かすも殺すも僕は構わない…

けどね、君はその後どうする?

…いままでちゃんと聞かなかったけど、

君の…生きる意味は、

生き続ける意味はなんだい?

もし…両親を殺して

…その後、自ら命を断つというなら、

絶対、外出許可は出したくない」


パブロさんは優しい人だ。

だからこそ、厳しい事を言う、

そういうことを言われると、

私は自分の心が分からなくなる。


「…私は………私は結局、

自分で何がしたいのか分からないんです

アイツらに会いたいわけでも、

殺したいわけでもない、

愛されていたのか知りたいって…

そう思って行動してたけど…

どうせ…私の考え道理には行かない、

無意味なんです…全部…

だけどメメは違う、

あの子は愛されてた、

そしてあの子は私を愛してる。

メメはあんな姿になっても私と居続けてくれてる…だからこそ、メメが死ぬまで…

私も死にません、死ねません」


言葉は時に、

心の内なんかよりも本当のことを話す、

自分に自分で嘘をつく私は、

それが凄く分かりやすい。


パブロさんにどう伝わったかは分からない、

だけど、パブロさんは優しい人だ…

少しは、わかってくれるはず。


「……信じるからね…」


「失礼します」


ここの大人は皆、死を怖がらないし、

殺す事に躊躇をしない。


だけど、仲間内になると急に考えを変える、

それが子供になると、もっと厳しくなる。


ドルクスやパブロさんは、外の人間を何人も殺してるし、裏切り者を何人も燃やしてる。


そんな人達に心配されるのは、

なんか…嬉しいような、

なんとも言えないような…気持ちになる。


この場所は、なんか変だけど、

愛が…あるんだな…


外の世界も、こうならいいのに…








多くの避難者は核の避難所『NO-2』へ避難してきた。

食料も水も電気も酸素も、

自給自足で助け合って分け合える、

そんな場所。


パブロさん達はそこに毒を撒いた。


私達が住めるのは、そうゆうことだ。


外に出る事はたまにある、

少しづつ文明が生き返ってゆくさまは、

無様で惨めだけど、人間の凄さが改めて分かる。


未だ、過去の水準には戻れそうもない日本だけど、いづれまた、汚いあの国にもどる。


それに続いて人間はただの肉の塊だ。

生きる意味も、何かをする意思も、

全て役になんて…立ちはしないのに…

何をそう、努力してるのか、

私には分からない。


…メメ……の頭に虫が止まる、

それを手ではらいながら、

未だ炭に塗れた地面を歩く。


シュレちゃんも心配だから着いていきたいと言ってたけど、流石に着いてこさせる訳にはいかなかった。


「ねーちゃんねーちゃん、

あれ見てよ、べー」


メメは指をさせないから、

舌を指替わりにする、

メメの指す方向には、

木に括られた…燃えた死体。


よく見ると地面には沢山の死体が、

バラバラの状態でそこら中に散らばっている…


「メメ大丈夫?アンタグロいの苦手じゃん」


「まぁ、燃えカスは炭と変わらんし

そこまでかな」


「そっか、……それにしても、

文明が進化したのか退化したのか、

分かんないね…」


確かに建物は徐々に建っているし、

最近鉄道も開通して、

少しばかりは車だって走ってる。


でも、それは見栄だけって事。


人間は人間同士で争って、

少ない物資を奪い合い、

小さい集団で群れになって生きて、

最初の爆心地だからって言うのもあるけど、

岐阜が元に戻ることはそうそうとないと、

心底感じる。


「ちょっと歩いて瑞浪駅まで行こっか、

土岐駅は浮浪者が多すぎて危ない」


「OK」



地下と違ってこの地上の空気は澄んでる。


草や木は全て燃え尽きてしまったけど、

その子孫は粘り強く生きて、

少しばかりの雑草が生えてる。


割れたコンクリートも、倒壊した建物も、

焦げた死体も、私達も、

あの日から変わらない、日常。


「ママとパパ、今どうなってるのかな?」


「……きっと、昔とは違うんじゃない」


それは願望でもあるけど……

昔とは変わっていて欲しい…




死体の匂いが強くなる、

爆心地の近くだ。


……どの死体もそうだけど、

死体を見ると、

毎回…手足のあった頃のメメを思い出す。


指先が熱で溶けて、骨が見え、

体の九割が酷い火傷になり、

それにプラスして放射線で皮膚が剥がれ落ち、臓器も肺が腐って呼吸が出来なくなった。


そこの死体も、あの死体も、

あの時のメメを放置した、

未来を表してるみたいだな……


メメの様子を見ると、

なんだか、息苦しそうにしている、

少しだけ灰を吸ってしまったのかも…


本当はメメは、

こんな処に出て外出すべきじゃなかった。

少し寿命が延びたとしても、

その命の蝋燭は、極端に短い。


だけど、

これはこの子が望んだことでもあるし、

私が強要したわけでもない……


「……メメ、本当に着いてきてよかったの?

アンタに此処は危なすぎない?」


「ん、でも、いつ死ぬか分からないし、

死ぬ前に、両親に会ってみたかったんだよ…

ねーちゃんだって、

同じことかんがえてたんじゃないの?」



元々私一人で行くつもりだった。


だけど、メメは偶然ドルクスと私の会話を聞いて、半ば無理矢理連れて行くことになった。


この子が本当に何考えてるのか、

よくわからない。


「あ、そいえばここら辺かな、

昔の私達の家」


もはや団地でも無くなったコンクリートとアスファルトの混合物を私は指差す。


メメは覚えてるはずないけど、

私はよく覚えてる。


あの変色した場所は、昔の私。


ヤニで黄色くなった大きな壁と、

割れたスリガラス、あれは…私の部屋。


あの部屋がこうやってボロボロになってると、すごく清々しい。


「ここなんだー初めて来た……

…かなりボロボロだね、

ねーちゃん昔の部屋分かる?」


「流石に分かんないよ……

メメはどう?」


「んーとねー」


メメは全く違うところを指す。


いや、合ってるのかも知れない、

メメの部屋は他の他人の家同様、

とても綺麗な部屋だから、

間違ってるかどうかも私には分からないな。


「ここまで来たから、

あとちょっとで瑞浪に着くね」


「以外と近かったね」


「まぁ、私義足だし、

普通よりかは早く歩けるしね、

…てか、歩いてるってよりかは歩いてもらってる感じ」


「分かるー、

私も一時期おんなじ義足使ってたから、

その感じ分かるー」


「だよね分かるよね、

そういえば思ったけどさ、

メメも義足くらいは付けれないの?

胴体なくても、付けれない事はないでしょ」


「いや、体の筋肉とか神経諸々なくなってるんだから無理、Bluetooth型のやつとかならいけるんじゃないかなーとは思う。

思うけど、今更いいわ、ねーちゃんが運んでくれるし」


「良くない…わけじゃないけど、

自分で歩きたいとは思わんの?」


「思わないし、めんどくさい」


「あっそ」


気を遣ったのに、結局は末っ子の思想。

体を失ったことに、あんまショック受けてなさそうなのがメメの良く分からない所だ。

 





私達が向かう瑞浪駅は、

かつて中央線という括りで名古屋まで各駅に停車して繋がっていた。

だけど、今は中央線を大きく遠回りをして名古屋まで向かうようになっている。

その理由は…


「うわぁ〜凄い燃えてる、

あれいつ消えんのかな〜」


ガタガタ揺れる私の膝の上で、

メメは窓の外を覗く、

その先の光景は、

淡々と燃え続ける多治見駅の姿だった。


これだけ遠くからでも、酷い火災というのがみて分かるくらいに懇々と燃えている。

戦後七年、未だ消えない、

戦争の傷跡的存在の場所だ。


何故炎が消えないのか、

それは解明されてないけど、

無限に燃える炎は年々温度を上げている。


流石にあそこに電車を突っ込むわけにもいかず、国は線路を遠回りさせて、

中津川から名古屋まで、多治見を抜いた、

新中央線を作ったらしい。


「年々大きくなるね、あの炎、

なんか仕切りでも作れば良いのに」


「構ってる暇がないんでしょ、

あんな熱いだけでなんの魅力もない処にさ」


「陶器があるじゃん、美濃焼とか」


「私、お皿は木のやつの方が好き」


「それはそう、

わたしも木の方が好きだわ」


遠く離れても、

窓の外のオレンジの光が目の端に映る。


日本文明レベルが下がり、

逆に地球温暖化が食い止まってきて、

神がその代わりをあの場所にしたんだなって

私は思う。


電車の中は、

私とメメの声だけが小さく響く、

他の乗客は生気のない顔で俯く老人しかいない。


もう岐阜の若者はもう、私たちくらいだ。


みんな都会へ逃げた、

逆に、老人は都会から逃げた。


この困窮した時代に、

都会では老人は不要だと、

若者がこぞって老人を殺して金品を盗む、

そんな風になって、

みんなこんな爆心地へ逃げてきたんだ。


ここにいる人たちがどこへ向かうのかは知らないけど、自ら死にに行く人間も珍しくはない。


生まれてから何十年と生きて、

永く生き残った先にあるのは、

素晴らしい未来なんかじゃなくて、

ただの地獄だと分かった時、

この人達は、何を思ったんだろう。









…………何分経ったかな

次の駅を見ると、神領駅……に着くらしい。

まだ後ちょっとあるな……


「それでねーその時のカイロの顔が真っ青でめちゃくちゃ笑ったのよ」


メメは手持ちのラジオみたいに、

永遠と思い出を周波数の様に私に届けてくれる。


聞いてて愉快だし、面白いし、

何よりメメも楽しそうにしてる。


座席の暖房が少し暑くなって、

前屈みになった……


「てか、ねーちゃんなんか元気ないね」


「…分かんないわ」


「何が?」


「何でもない」


肌寒い電車の中では、

焼けた皮膚も冷たさを感じて、

背筋が震えた。


「寒ッ」


「本当寒いね……」 


「…………」


「んでねーシュレちゃんがさー」


「うん」


私は……どうしたいんだろう…

ママとパパに会って、何がしたいんだろう。


名古屋に近づくたびに、

私の心臓は吐き気を催す。


冷気とは別の寒気が、心に氷柱を立て、

メメの体温だけが、私を温めてる。


無くなった下半身がズキズキ痛んで、

昔の感覚が浮かび上がってくる……


……やっぱり


「……会いたくないな.……」


やっぱり、

こんな事するべきじゃなかったな


……なんでこんな事してるんだろう、

私はなんで、あんな事思いついたんだろう。



…………………………死にたいから……か



結局、死ぬ理由が欲しかっただけなのか、

理由なんてなんでも良いのに…

縋るように愛を求めた。


今の私には、生きる意味も、生きる意義も、

何もかも…分からない、

分からない……けど、私は結局……


メメの為に生きてる?


なんで?

私はメメが好きなの?


違う、私はメメを好きじゃない、

きっとそうなんだと思う。


この電車で、この座席で、この膝の上で、

メメを守る意味は?意義は?

姉だから?


何が、なんで、私はこんなことしてるんだ?


そもそも、すぐ死ねなかったのも、

メメが無理矢理生きたせいだ。


メメはもっと早く死ぬはずだった…

だから……


……ダメ……今度は、メメのせいにしてる…私

死にたい理由と死んで良い理由を、

全部メメに今押し付けてる。


私が死にたいのは…私が死にたいから…

それだけで良かった……な。


こう、灰塗れの外の景色を見ると少しだけ、

なんか…落ち着く…


頭の中で、心に起こる惨劇をどうにか止めようとして、全部ダメにする。


もう帰りたい……な

帰ろう.……かな


気付けば、

メメの頬に沢山の雫が溢れていた。


この涙が恐怖なのか、悲しみなのか、

なんで、涙なんかが出るのか…

よく分からない。


目が潤んで、メメの顔さえまともに見えないけど、メメの目からも涙が流れてるって何故か分かった。


…………私は何がしたかった?


メメを傷つけたかった?

メメを一人にしたくなかった?

何も考えてなかった?


私は…………





言葉は時に、心の内にあるものより正しい、

純粋な本音を吐き出す時がある。

私は…私に嘘を付くから、

それが凄くわかりやすい。


結局私は、メメと死にたかったのかな…


メメは……生きてたかっただろうな……


生きるべき人間

死ぬべき人間


それを決めるは、

神じゃない事を私はわかっている


それがいない事も

私は知っている。


だけど……決まってた。


「ごめんね……」


メメは、冷たくなっていて、

首から垂れる血が、腕に滴る。


赤子の様な体温はもう、

ただの肉の塊になっていた…



この作品は、以前描いたHILUの中に描こうとしていた、姉妹の短編話をめちゃくちゃ大きくしたお話です。愛とはなんなのか、死とはなんなのか、

人が基準とする感覚の起伏に疑問を持ってもらい、

この先、中、終 も読んでもらえると嬉しいです!

(Twitterの方にこの作品の表紙を挙げているので、

気になる方はどうぞTwitterへ来てください)

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