ボウリングでスペアをくらったペンギンが気づかせてくれたあたしの見えない翼と空
やっと、こうゆうの描けました。
翼がないことをいいわけに 飛べないじぶんを
かわいそがっていたくなかったから
翼はあるのに飛ぶことをやめたペンギンどもに
やつあたりをころがして
ボウリングごっこするのは もうやめよう
そもそもあたしが飛べるいきものなら
翼なんかなくたって どーにか こーにかして
飛べるはずだろうし むしろ
翼のほうが かってに どこかから
はえてくるはずだよね
そうやって うだうだ考えこんでたら
さっき第3レーンであたしから
スペアをくらったペンギンどもは
にやにやしはじめた
うすきみわるいんで しかたなしに
くちばしをわらせてみたら
「おれたちが空を飛べないなんて 決めつけやがって
それはいったい どの空のはなしなんだい?
首が痛くなるまで
うえばっかり 見あげやがって
そんなんじゃ おれたちの飛んでる空は
いつまでたっても
おまえには見えやしねえぜ」
ずいぶんとなまいきなくちを
たたいてくれるもんだから
どうせ スペアをくらったはらいせに
てきとうなこと言ってるだけだと
あいてにしなかったあたしに
さいごのひとことがストライクをきめる
「おまえだって見えない空を飛ぶつもりなら
見える翼なんかいらねえだろうに」
あぁ そうか
あたしは目に見える空のあまりの高さに
気をとられて
空にあわせた翼をほしがってたんだ
そうじゃなくて あたしに必要なのは
すでに どこかにはえてるはずの
あたしの翼で飛べる どこかの空だ
空にあわせた翼をはやすんじゃなくて
翼にあわせた空を
たとえば 心のなかにひろげればいい
そして 心の空を飛ぶのなら ひらくのも心の翼
だれかからは見えないけれど だからこそ
すでに あたしには はえてるもん
だけどさ! ペンギン
あたしはみやぶってるよ
あんたたちだって見あげた空に
ちっとも興味がないわけじゃあるまいに
でも そこを飛んでる鳥たちだって
あんたたちの飛んでる 見えない空のことは
よくわかんなくても
あんたたちの泳いでる海のほうには
興味が尽きないことだろう
そして きっとそれでいい
それでいいんだけど
それはうらやみじゃなくて
あこがれじゃなきゃいけないよね
そしたら そのあこがれは
あたしたちに あたらしい翼をくれて
その翼で飛ぶための あたらしい空が
また どこかにひろがるはずだから
翼も 空も ひとつきりじゃなくたっていいし
あたしはいくつもの翼をはやして
いくつもの空を飛ぶいきものに
なりたいんだって気づいたよ
そんなことをはなしたらペンギンどもは
このごうつぐばりめって あきれた顔をしてた
その態度はやっぱりなまいきだったけど
いろいろ気づけたのは あいつらのおかげだから
ひとまず ありがとうは言っておこう
こうして あたしは とりあえず
あたしにしか見えない翼で
あたしにしか見えない空を飛ぶ
そんないきものになれたのだ
ふたつめの翼と空を手に入れるまでには
もうちょっと時間がかかるだろうけど
いまは このひとつめの翼と空を
おもうぞんぶん 楽しむことにするよ
だけどさ! ペンギン
首を洗濯して 待ってらっしゃい
つぎそこそは あんたたちから この一投で
ちゃんとストライクをとってみせるんだから
ペンギンでボウリングをしてはいけません!










