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超短編小説『千夜千字物語』

『千夜千字物語』その36~スカート

作者: 天海樹

「もう最悪!」

走ってきた男に突き飛ばされたうえ

水溜りに尻もちを突いてスカートは水浸しになるわ、

デートに遅刻して彼は不機嫌でもう連絡すらない。

「大体ぶつかって謝りもしないって最低!」

リョウコの愚痴は止まらなかった。

それを聞いて友達のレナは

「だから言ったじゃん。あのスカート呪われてるって」

そうは言ってもリョウコはあのスカートがとても気に入っていて、

「勝負になるとどうしても穿きたくなる」

と言った。


リョウコに大きなチャンスが舞い込んできた。

たまたま見た彼女のイラストが気に入ったので

「弊社の50周年記念プロジェクトの

 イメージキャラクターコンペに参加して欲しい」

とイマイタクヤという名前でDMで依頼がきたのだった。

二つ返事で了承し、すぐさま会うことになった。


リョウコは合同オリエンに出席し、

そこで初めてタクヤがプロジェクトリーダーであることを知った。

「難しいけど、ぜひ取ってほしい」

そうタクヤはリョウコに声を掛けた。

プレゼンまでの1ヶ月間、

リョウコは何かあればタクヤに電話をしたり

実際に会ってアドバイスをもらった。

タクヤも積極的にリョウコの力になった。

いつの間にか二人は仕事を一歩超えた仲にまでなるほど

何もかもが順調だった。


リョウコは会社近くのカフェで

コンペの結果をドキドキしながら待っていた。

やがてタクヤが息を切らしながら満面の笑みで

立ち上がったリョウコのもとへやってきた。

「おめでとう!!」

そう言ってリョウコを抱きしめた。

すぐに周りに人がいることに気づいて照れくさそうに離れた。

二人は席について改めて喜びを分かち合った。

そしてタクヤは終わったら言おうと思っていたと言って

「好きだ。これからも傍にいて欲しい」

と告白をした。

リョウコは驚いて、そして首を縦に小さく振った。


「プレゼンの時と同じスカートだね。

いいよね、似合ってる」

リョウコはすごくうれしかった。

そしてこのスカートに纏わる出来事を話した。

それを聞いたタクヤは

「もしかして…」

とそれは何時頃で場所はどこかと尋ねた。

リョウコが答えると

「ごめん!それオレだ」

と告白した。

実はその日元嫁から息子が緊急入院したとの連絡があり

走って病院に向かっていて…

気にはなったが急いでいたのでそのまま行ってしまったのだと。

それを聞いてリョウコは

「むしろ感謝してる」

と言った。

これまでのことがあったからこそタクヤに会えた、

そう思ったらますますこのスカートが好きになった。

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