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国外追放されたい乙女ゲームの悪役令嬢、聖女を超えた魔力のせいでヒロインより溺愛されて困まっています。  作者: 白藍まこと
王立魔法学園編

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22 ダンジョン攻略


 学園内に用意されているダンジョン。


 敷地内の一番外側に位置する岩山があり、その奥に入ると洞窟のような空間が広がっている。


 その最奥にある、低級魔獣の討伐と魔石の回収までが今回の課題だ。


「はあ……不安だわ」


「ご安心下さい、お嬢様の身は必ず私が御守致します」


 右隣にいるシャルロットが、わたしを安心させようと力強い言葉をくれる。


「いや、そこの心配はしてないんだけどさ……」


 わたしが溜め息を吐く憂鬱の原因はそこではない。


「う、薄暗くて怖いですね……」


 左隣には怯えるように体を震わせているリリーちゃん。


 うん、この子なんだよね。不安になってる原因。


 なんでこの子は攻略対象を無視しちゃって、このパーティーに入っているのかな?


「シャルロットが全部解決してくれるとのことですわ」


「あ、ちょっ、お嬢様!? 私はお嬢様のためであってその平民のためでは……!?」


「結果は同じではなくて?」


「そ、そうかもしれませんが……」


 今度はしゅんとなるシャルロット。


 うーん。


 シャルロットはリリーちゃんをずっと平民呼ばわりで良くないよね。


 言ってもメルローは男爵家なので、階級意識があるのは当然なのだけど。


 わたしの近くにいる人が、そういう認識があるのは気分は良くないよね。


 とは言え、その貴族意識の塊のような存在であるロゼ・ヴァンリエッタがそれを訂正するのもおかしな話なのが難しいところだ。


「あ、ありがとうございます。シャルロットさん、頼もしいですっ」


 上目遣いでペコペコし始めるリリーちゃん。


「べ、別に構いませんが……お嬢様がいるからですからねっ。あくまでお嬢様のためですからっ」


 しかし、それでシャルロットも毒気を抜かれてしまう。


 天性の人当たりの良さを持つリリーちゃんを相手にすると、さすがのシャルロットも反応に困るようだ。


 いい傾向だと思います。


「それにしても、結構大変なんですねダンジョンの探索って……」


 リリーちゃんは改まって感想を述べる。


 ダンジョン内は基本的に岩道になっており、凹凸や急こう配がかなりある。


 場所によっては飛び乗ったりする必要があったりなど、かなり険しい道のりだ。


 加えて道は迷路のようになっており、最奥の目的地に到着するにはかなりの時間を要する。


「そうね、リリーさんで大変なのですから他の生徒はもっと大変だと思いますわよ」


 リリーちゃんは田舎育ちで力仕事をしてきたため基礎体力がある。


 それに比べると、他の生徒は王都育ちが大半であり、整備された道しか歩いてきたことがない。


 皆、魔術に関しては優秀ではあるが、実践でその能力が通用するかはまた別の話。


 慣れない不整地、見えない道筋、低級魔獣が現れるかもしれない緊張感。


 それらによって体力と精神力を同時に削られてしまうため、大半の生徒は授業時間内に到達することが出来ないまま引き返すことになる。


 今すぐではなく、進級までに攻略できるように想定されているのだ。


 まあ、それを最初から達成するのがリリーちゃんや攻略対象達なのだけど……。


「お嬢様の方こそお疲れではありませんか? いつでも抱えますので仰ってください」


「シャルロットはそんな余裕あるのね……」


「はい、問題ありません」


 そうか、シャルロットは体力面も優秀なんだ。


 ほんと、この子いつの間にこんなに強くなったんだか……。


 聞いても『鍛えてましたので』の一点張り、どうやったらこんなに抜きんでるんだろ……?


「わたしは大丈夫だから安心して」


 ちなみにわたしは体力も筋力も大してないが、身体強化が使えるので問題ない。


 今もかるーく身体強化をしているので、整備された道を歩く程度の疲労しか感じていない。


「どこに向かえばいいか分かりませんね……」


「そうね」


 基本的には道を総当たりすることになる。


 幸運の持ち主であれば一発で行けるかもしれないが、そんな強運は少ない。


「た、多分ですけど、こっちだと思います……」


 そんな中、リリーちゃんが数ある分岐点の中の一つを指さす。


「何か根拠があるのですか?」


 シャルロットが訝しげに聞き返す。


「えっと、感覚なんですけど、何かこう……嫌な魔力の気配がするんです……」


 これも聖魔法の使い手の能力。


 リリーちゃんは魔族特有の魔力を感知することが出来るのだ。


 それゆえ、彼女は迷うことなく最短ルートを選ぶことが出来る。


「嫌な魔力……? お嬢様どうされます?」


「リリーさんの言う通りにしましょう。(わたくし)達に妙案があるわけでもないでしょう?」


「そうですが……いえ、そうですね。承知いたしました」


 一瞬不服そうなシャルロットだったが、その通りだと考えを改めたのだろう。


 すぐに頷く。


「迷ったら容赦しませんからね」


「へっ、あっ、え……」


「シャルロット?」


「……一度くらいなら許しましょう」


 何ともギスギス状態な三人組だなぁ。


 この調子で辿り着けるのか不安だ。


「あ、あわわっ」


 そう思った矢先にリリーちゃんが岩場に足を躓きバランスを崩す。


 絶対シャルロットが脅して動揺したせいだ。


「ほら、危ないですわよ」


 わたしはその腕を取り引き寄せる。


 身体強化をしているので、反射的に反応できるくらいの感覚や腕力が研ぎ澄まされていた。


「あ、ありがとうございます……」


「怪我をしたら大変でしょうに、貴女の聖魔法は自身の治癒は出来ないのでしょう?」


「そんなことも知ってくれていたんですか……?」


「あ、いや……」


 まずい、ふとした瞬間に原作知識が出てしまった。


 どうしよ。


「それで心配してくれてたんですね、嬉しいです……」


「へ? うーん、そ、そう?」


 おっとよく分からない方向に話が転がって……?


「それにロゼさん華奢に見えるのに、すごい力強いんですね」


「あー……たまたまですわ」


 『拳で岩を砕くくらいなら余裕ですわ』とは言えないよね、さすがに。


「あ、ああっ! お嬢様、私も躓きました!!」


 なんかヨロヨロしてるシャルロット……。


 わざとくさいんだけど、何なんだろ……。


 仕方ないから、空いてる手でシャルロットを捕まえる。


「……ほら貴女もしっかりなさい」


「はあっ!? お、お嬢様の手が私に触れてぇええ……!?」


 ……なにしてるんだ。この子は。


「あのそろそろ貴女は、お嬢様から離れてくださいませんか! もう大丈夫ですよねっ!」


 そしてすぐリリーちゃんに牙を向くシャルロット。


 忙しいな。


「へ、えっ、で、でもそれはシャルロットさんも一緒では……」


「私は貧血気味かもしれませんっ!」


「シャルロット、そんなに大変なら戻る?」


「治りそうです!」


 うーん。


 リリーちゃんの道案内があるはずなのに、全然スムーズに進まないのはどうしてかな。



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