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黒騎士と姫とミノタウロス農場2


 その後、戻ってきた農場職員に案内されて行った小屋で、俺はようやくミノタウロス農場の主人と会うことができた。


「本当に申し訳ございません……!!」


 ミノタウロス農場の主であり、自身も牛の獣人であるノールさんが頭を下げ謝った。


「いえいえ、大丈夫です。幸い誰も怪我していませんし」

「でも驚いたでしょ? あなたの赤ちゃんもまだ落ち着いていないみたいだし。本当にごめんなさい。私たちの管理が甘かったせいで……!! ハンナも驚いたでしょ!?」

「大丈夫です! ナイトさんが守ってくれましたから!」

「それでもごめんね! ハンナちゃん!」


 ノールさんが堂々と答えるハンナを抱きしめ、撫でる。

 すぐに抱きしめられたハンナには見えなかったようだが、牛に似た大きな瞳に涙を浮かべるのを見ると、ノールさんもかなり驚いたようだった。


 そりゃあ、自分たちのミスで人を殺しそうになったんだから。当たり前だよな。


 俺はガラガラとガラガラを振りながらそう思った。

 基本的に頑丈な魔族だが、ミノタウロスに轢かれても大丈夫なほど頑丈かというとそうではない。普通に怪我もするし、下手にすると死ぬこともあるだろう。

 農場主としてそれを誰よりもよく知っているノールさんだから、なおさら重く感じるのだろう。

 まだベベも落ち着いてないし、とりあえず落ち着くまで待ってみよう。

 雰囲気を考えるとガラガラを振るのもやめたいんだけど。ガラガラを止めるとすぐにベベが泣き始めるので、そこは理解してほしい。


「ふー、ごめんね、乱れた姿を見せてしまって」


 しばらくして、ようやく落ち着いたノールさんがテーブルにお茶を置きながら謝った。


「大丈夫です。ノールさんにとっても大変だったでしょうし」


 本当に問題なかった。おかげでベベをなだめる時間も取れたし。

 むしろ冷静に対処するのがおかしいくらい大変なことだったしね。

 でもノールさんはそうは思っていないようで、真剣な表情で首を横に振った。


「ええ、でも、お客さんの前で見せる姿ではなかったと思います」


 まあ、それもそうか。


「じゃあ、本題だけど、私は今回の件で皆に迷惑をかけたお詫びをしたいの。何か要望はないかしら?」


 私にできることなら何でもします! と、ノールさんは真剣な声で言った。

 うーん、何でも、と言われてもなぁ。


「俺は特に何も欲しくないんですけど、ハンナはどう?

「うーん、私もあまりないです。ノールおばさんにはいつもお世話になってますし」

「あら、嬉しいことを言ってくれるのね。でもハンナちゃん、それでも何かないかしら、私もこの農場の主人として何もしないまま終わるわけにはいかないから。このままではハンスさんにも申し訳ないし」


 ノールさんがそう言うと、ハンナはうーん、と少し悩んでから口を開いた。


「うーん、じゃあ後で言ってもいいですか? 今は何も思いつかないんです」

「あら、そうなの。じゃあ焦らなくていいから、後で思いついたら言ってね」

「はい!」


 ノールさんとハンナちゃんの会話が終わったところで、横から幼い男の子の声が入ってきた。


「ねえ、ママ! もうそろそろ大丈夫? 僕、ハンナちゃんと遊びたいんだけど!」


 この小屋に来た時に職員からノールさんの息子だと紹介されたデールだった。

 彼はハンナの友達のようで、俺たちがこの部屋に入り、会話をする前から待っていたのだが。そろそろ待ちくたびれたようだった。


「ああ、そうだね。ハンナ、少しだけデールと一緒に遊んでくれない?」

「はい! 行こう! デール!」

「うん!!」


 ハンナがデールの手を引いて外に出ると、小屋には俺とノールさん、そしてベベだけが残った。

 するとノールさんが俺の目を見つめながら言い始めた。


「じゃあ話を続けましょか、お礼に何か欲しいものありますか? 聞いたところによると、かなり危険だったらしいし、魔道具も使ったでしょ。可能な限り要望に応えるつもりなんですから、魔道具の代金を含め考えてください」


 ノールさんはそう言いながら、緊張した表情で唾を飲み込んだ。

 魔道具というのは基本、結構な値段がするものだが。ノールさんは自分が言った通り、本当に出来る限りの補償をするつもりのようだった。

 だが、緊張しているノールさんには申し訳ないが、本当に俺は彼女に望むものがなかった。


「うーん、特にないですね。あえて言うなら牛乳をちょっと安くしてもらえないかな? ぐらいですかね」

「えっ、それでいいわけ!?」

「はい。それでいいですよ、そもそもここにきたのもこの子の牛乳を買うために来たんですから」

「そ、そう……。あんた、欲がないのね」


 別にそんなことはないけど。今持ってることに満足しているだけだ。

 しかし、ノールさんは俺が言った報酬では納得出来ないようだ。

 しばらく悩み続けたノールさんは、ぱち! と両手を合わせた後、俺の腕に抱かれているベベを見て言った。


「よし! これから1年間。その子のミルクは私が担当するわ。そしてあなたの分も!」

「えっ、いいんですか? 販売品ですよね?」

「平気平気、子供一人に食べさせるミルクは、さっきあなたが捕まえた子一匹で十分だから! むしろ余るくらい!」


 まあ、俺が捕まえたミノタウロス一匹で十分なら良いか。


「じゃあ、ありがたく頂きます」


 これでベベの食事はしばらく心配しなくていいかな。離乳食を作る時が来たらまた違うけど。

 ……その前にこの任務が終わればいいけど、無理だろうな。


 そんなことを考えていると、何か言いたげな顔をしたノールさんが目に入った。


「他に何か言いたいことでもあるんですか?」

「ええ、その、あ、あるといえば、あるんだけど……」

「良いですから、気軽に言ってください」


 これから長い付き合いになるだろうし。

 難しいことでなければ、受け入れるつもりだ。


「……あの、うちのミノちゃんを捕まえたあの魔道具! 私たちに売ってもらえないかしら!」


 なるほど、そういうことか。



 

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