黒騎士と姫とサンドイッチ作り4
俺は仕方なくもう一度マヨネーズサラダを作り始めた。
「ぴゃあー♥ ばぁー♥」
「ちょっと待ってくれ。ベベ」
とりあえずみんな大好きなリンガは少し多めに入れて、今回はピーナッツも入れてみよう。きっといいアクセントになってくれるだろう。
「ぴゃあー♥ ぴゃあ! ぴゃ!」
「はいはい。もうすぐだよ、もうすぐ行くからちょっと待っててね」
本当にもうすぐ終わるから。
果物もほとんど切り終わったし、力を使うピーナッツつぶしさえ終われば、すぐにベベのところに行くつもりだった。
いくら獣人とはいえ、ピーナッツをつぶすのを幼い女の子たちに任せるのは少し抵抗があるからだ。
しかし、俺が動くより先に、ハンナが前に出た。
「あ、私が見てます」
そう言ったハンナが包丁を食卓に置き、ベベの方へ向かった。
そしてその時、さっきから「ぷ! ぱぁあー!」とちょっと飽きたようにリンガを吸っていたベベが突然金色に輝いた。
「ぴゃあーー!!!!」
パアッ!とリンガが空を飛んだ。
赤子が投げたとは思えないスピードで飛んでいくリンガ。その姿を見て俺はすぐにそれが何なのか気づいた。
今まで一度もベベが使ったことのない力だが、あれが何なのかはよく分かっている。あれは浄化の次に有名な聖力の使い方である身体強化だった。
まだ生まれて一年もたってないというのに。何という才能だ。
いや、こんなことを考えている場合じゃない!!
ベベが投げたリンガが向かってる先には、ちょうどベベの方へ向かっていたハンナがいた。
ハンナが危ない!!
ベベが今投げたリンガは普通のリンガであって普通のリンガじゃない。
聖力で強化されたリンガなのだ。市場で売っている普通の果物だとしても、聖力で強化すると石よりも硬くなる。
それが優れた聖力を持つベベならなおさらだ。
今、ハンナに飛んでくるリンガは、鋼鉄にも負けない強度を持ってるはずだ。
「ハンナ、避けろ!!」
リンガに含まれた力の大きさを感じたのか、ギャルルはハンナに向かって叫んだ。
しかし、そんなギャルルの声にも関わらず、ハンナはその場から一歩も動かなかった。ハンナの顔が真っ青になっている。何も分からないはずのハンナも、自分に向かって飛んでくるリンガから威圧的な気配を感じたのだろう。
必死なギャルルの叫び。
ハンナの絶望に染まった青い顔。
その中で俺は、
パーン!!
思わず、ハンナの方へ向かっていたリンガをつかんだ。
「…….」
意図したのではない。
ただ、姪っ子のように思っているハンナが危ないところを見ると、体が勝手に動いてしまったのだ。
ギャルルの前だから実力を隠さないといけないと思っていたにもかかわらず。
瞬く間に食卓を飛び、ハンナの前まで移動し、リンガを掴んでしまったのだ。
ジイイ。
横顔に当たるギャルルの視線が熱い。
俺はそんなギャルルの視線に気づかないふりをしながら、ハンナに尋ねた。
「ハンナ、大丈夫か」
「あ、は、はい」
まだ緊張か解けないのか、ハンナがぼんやりとした声で答えた。
俺はそんなハンナを椅子に座らせ、いつの間にか聖力が抜けて普通の果物になったリンガを食卓に置いた。
自然に、何事もなかったかのように。
しかし、どんなに頑張っても、さっきのことがなかったことになるわけではない。
うおぉ、もしかしてバレたか?
そんなことを考えている時、ギャルルの叫び声に遅れて驚いたのだろうか。 それとも、自分が投げたリンゴにハンナが当たりそうになったことに驚いたのか。
「おぎゃああああーー!!!!」
突然、ベベが泣きだし始めた。
俺は泣き叫ぶベベの前にガラガラを振りながら、驚いたであろうハンナに水を注いだ。
ええっ! どうしよう!? ひょっとしてひょっとしなくてもバレたか!? マジでバレたのか!? 今からでも魔道具を使ったとしらばくれるか!? いや、でも今更マジックバッグから魔道具を出して何の意味がある! どう考えてもおかしいだろ!! いや、そうだ! その、ちょうど俺が捕まえた時にリングに宿っていた力が抜けたとか? いや、それもおかしいだろ!! そんな都合のいいことが起こるはずがないじゃないか!!
ああ、もう! どうすればいいんだ!!?
俺がそうパニックになっている時。
「なんだ!! 何があった!! ハンナは無事なのか!?」
こちらの騒ぎに気づいたのか、ハンスが慌てて台所に入ってきた。
ハンスの視線は、驚いてボーッとしているハンナ、泣いているベベ、二人をなだめる俺、そしてそんな俺をジイイと睨みつけているギャルルに順に行き、俺のところに戻った。
「ナイト、何かあった」
「いや、その……」
「ぐだぐだ言わないでさっさと言え。何があった」
「はあ、それが……」
ハンスの硬い声に、俺は仕方なく事情を説明した。
「……で、こうなったんだよ」
説明を終えた俺は、そっとハンスの顔を覗いた。
「……」
俺の説明を聞いたハンスが口を固く閉ざした。
予想はしていたが、やはりハンナが傷つきそうになったことに怒っているようだった。 角を立ってる目からハンスの怒りが感じられた。それでも怒りを表には出さないようにするのは、今この場に自分以上に驚いているであろう子供たちがいるからだろう。
「……気をつけろよ」
結局、ハンスはそれだけを言い残し、厨房から出て行った。
「あの、ナイトさん……」
「ああ、ハンナ、大丈夫か?」
「はい、私は大丈夫です。その、はい……」
俺の問いかけに、ハンナが元気なく答えた。
気が利くハンナのことだ。ハンスが俺に怒っていることにも気づいているのだろう。
だから今、あんな風にチラチラと俺の顔色を伺っているのだろうな。
そんなに気にしなくていいのに。
そもそもハンナは今回の事件の被害者である。
今は周囲に気を使うより、自分のことを優先すべきだ。
「ちょっと待っててね」
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