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黒騎士と姫とサンドイッチ作り3

おはようございます。

昼に用事があるので早めに投稿します。


「「……!!」」


 はむ! と、フルーツサラダを口に入れた二人は、黙々と口の中のものを噛み、味わった。


「……ど、どうだ?」


 しばらく時間が経つまで何も言わない二人に、なんとなく緊張を覚えながら俺は尋ねた。


 すると、口の中のフルーツサラダをゴクンと飲み込んだ二人が大きな声で言った。


「……美味しいです!!」

「……美味しい!! 同じリンガのはずなのに全然違う!! なんか、なんか! もっと甘くて、香ばしい! とにかく美味しい!!」


 よかった。これ、俺以外の人にあげるの初めてだったから、ちょっと緊張してたんだよね。 美味しいと考えていても、初めてはやっぱり緊張するものだな。


「初めて見る食べ物ですけど、これは何ですか」

「マヨネーズサラダだよ。ちなみにこのソースの名前はマヨネーズと言うんだ」

「マヨネーズと、マヨネーズサラダですね! 覚えました」

「僕も覚えた!」


 そう言いながら、ギャルルとハンナはマヨネーズサラダをパクパクと美味しそうに食べた。

 気に入ってくれたのは良かったけど。たくさん食べると太るって、先に教えてあげるべきかな。いや、でも二人はまだ子供だし。このくらいいいかな。


「じゃあ、とりあえず、ハンナも試しに作ってみようか」

「は、はい! 頑張ります!」


 ハンナが元気よく答えた。

 俺は熱心に腕を動かすハンナを見ながら「頑張れ!」と本気を込めて応援した。

 なぜなら、マヨネーズを作るのは想像以上にたいへんな作業であることを俺はすでに知っているからだ。


 そして予想通り、約15分後、ハンナは疲れ切った顔でテーブルに頭を下ろした。


「う、腕が痛いですぅ……」

「だよなぁ」

「ぴゃあぅー♥」



 ハンナがマヨネーズを作る間、ベベの世話をしていた俺は、ハンナの言葉に共感しながらうなずいた。

やってみないとわからない。あの苦痛は。

 マヨネーズ作りは想像以上に体力を使う仕事だ。

 生クリームを泡立てるのもそうだが、マヨネーズも結構筋力を使うからな。

 いくらハンナが獣人とはいえ、まだ子供。マヨネーズを一から作るのは難しいに決まっている。


「ふーん。ハンナ、だったら僕がやろうか?」


 ハンナがマヨネーズを作るのを見ながら、フルーツサラダを食べていたギャルルがハンナに言った。

 ハンナがマヨネーズを作ってる時に何もしなかったところを見ると、料理に興味があるようには見えなかったし。だからずっと黙ってみているんじゃないかと思っていたのだが。友人が苦しむのを見ているのが嫌だったのかな。

 だとすると意外いい子かもしれない。


「むむぅ」


 ギャルルの提案にハンナが眉間に皺を寄せて悩んだ。

 一人でマヨネーズを作りたい気持ちと、腕が痛いからギャルルに頼みたい気持ちがぶつかったようだ。

 しかし、長い悩みの末、ハンナは首を横に振った。


「いや、私一人でやるよ」

「そうか」

「うん。自分で作ってみないと、後で一人で作れないからね」


 そう言うと、ハンナは休んでいた腕を持ち上げ、再びマヨネーズを混ぜ始めた。

 そしてそれを見ていたギャルルの耳が何故かシュンとなった。


 なんだろう。言ってみただけじゃなくて、本当に手伝いたかったのか?


 そう思った俺は少し迷ったが、結局ギャルルにこう言った。


「よかったら、ルルちゃんも作ってみないか」

「え、僕が?」

「ああ、そうだよ。 マヨネーズは案外いろんなところに使うからさ。少し多めに作ってもいいんだ。君さえ良ければ作ってみるか?」


 とはいえ、健康を考えるとそんなにたくさんは食べられないけど。

 こっちには時間停止魔法がかけられたマジックバッグもあるし。何ならハンスに押し付けることもできるからなんの問題にもならない。被害といえばハンスが少し太るくらいだろうか。ん。問題ないな。

 ハンスもハンナの友達のためなら迷わず身を差し出してくれるだろう。


 まあ、拒否しても構わないけど。


 そうなったら、ハンスの口にマヨネーズを突っ込んでやるだけだ。

 何せ俺はまだ恨んでいるのだ。事情を知っていながら、ギャルルと俺を会わせたハンスのことを! 

 ハンスなんて、マヨネーズを食らって太ればいい! ハハハハッ!!


 陰湿にそんなことを考えていたが、ギャルルはなかなか首を縦に振らなかった。


「いくらなんでも、自分で料理をやるのはちょっと」


 ああ、そういえばそうか。こう見えてもカプカ・タイガーの子なわけだし。それはつまり領主の子であり貴族ということだ。

 そんなギャルるに台所に立つのはちょっと抵抗があるかもしれない。

 これは無理強いはできないな。

 俺がそんなことを考えていた時、ハンナが明るい笑顔で言った。


「えっ、どうしたの、るるちゃん。料理、楽しいよ?」

「そ、そうか?」

「うん。だから一緒にやろう?」

「むむ、……わかった」


 一瞬ためらったギャルルだが、ハンナの推しに無事倒れてくれた。

 どうやら自分で台所に立つのは無理でも、友達に頼まれて台所に立つのはギャルルの中でギリギリ可能なことだったようだ。

 結局、ギャルルもハンナと一緒にエプロンをつけた。


「で、できました……!!」


 約一時間をかけて結局マヨネーズを作り上げたハンナがバタンと椅子に腰を下ろした。


 パチパチパチ!


「お疲れ、ハンナ」

「お疲れ」

「ありがとうございます、ナイトさん。ありがとう、ルルちゃん」


 優れたスペックを持つ肉食系獣人らしく、ハンナより先にマヨネーズ作りを終えたギャルルと一緒に拍手で祝ってあげると、ハンナが達成感に満ちた笑顔で答えた。

 正直、子供には難易度の高い料理だから、カプカさんの子で力ではどこにも負けないギャルルならともかく、ハンナには無理かもしれないと少し思っていたが。

 完成したのは完璧なマヨネーズだった。

 さすがだなぁ獣人。あ、いや。これはハンナの根性がいいと言うべきか。 獣人の子だからといって誰にもできるとはさすがに言えないし。


 俺はそんなことを考えながら、ハンナが作ったマヨネーズを軽くかき混ぜた。

 すると、ドロドロになったマヨネーズが、ふわりと形を変えた。

 よし、マヨネーズはこれで完成ーと。


「さて、じゃあ次はサンドイッーー」


 ……チィを作ろうと思っていたんだけど。


 ジイィーー。


 二人の視線が痛い。

 二人の目の中にマヨネーズサラダの文字が見えるような気がした。

 そういえば、ハナはマヨネーズを作っていたからあまり食べられなかったけ。

 はぁ、しょうがないな。


「...... チィを作る前に、もう一度マヨネーズサラダを作ろうか」

「「やったーー!!」」


 マヨネーズサラダをもう一回作るという俺の宣言に、俺に熱い視線を送っていた二人がお互い手を合わせよろこんだ。ヤレヤレ。


 

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