黒騎士と姫とサンドイッチ作り2
本当に意外と時間がかかる。
何と言ってもあのサンドイッチの中にはアレが入るんだから。
ちなみにアレというのはマヨネーズのことだ。
「ハンナ、ちょっとベベの世話を頼んでいいか」
「はい!よろこんで!!」
実演の間、ハンナにベベを頼んだ俺は、流し台で手を洗い、食卓に置かれてる食材の中から、マヨネーズの主原料である卵と食用油、そしてレモンを取り出した。
「まずは浄化から始めようか」
「浄化……ですか?」
「なんで卵を浄化しなきゃいけないんだ」
ハンナが首を横に傾げ、ギャルルが理解できない、という顔で尋ねた。
生の肉もよく食う肉食系獣人には理解できないことのようだった。
だが、サルモネラ菌で食中毒になる可能性が高いから、卵は何があっても一度消毒してから使うべきだということを、元日本人の俺は知っている。
しかし、菌という言葉すら知らないこの世界の子供たちにそれを説明するのは非常に難しかった。
結局俺は遠まわしにこう説明した。
「ああ、生で食べると、卵に付いている体に悪いものも一緒に食べてしまう可能性があるから、それを防ぐためだよ」
「体に悪いもの……って何ですか?」
「お腹を壊したり、吐き気を起こしたりするものだよ。前にハンスもこれにやらられて、しばらく苦労したことがあるんだ。ハンナ、ハンスが卵を生で食べるの、見たことないでしょう?」
うーん。と、しばらく考え込んだハンナがびっくり驚いて言った。
「そういえば、一度もありませんでした!」
「昔は生の卵も結構好きだったんだけどね。 一度痛い目にあってから食わないようになったんだよ」
「そうだったんですね……」
ハンナが「お父さん、かわいそう」とハンスを哀れんだ。
俺はそんなハンナを見ながら、ベベの聖石を使って卵を浄化した。
ミノタウロスの乳を浄化したのと同じ方法だった。
ここがちょっと一般家庭では真似できない方法なのだが。いろいろと変わったものを集めているハンスだし、一般家庭にはない浄化機能のついた魔道具も一応あるはずだ。だからまあ、問題ないだろう。
流石にベベの聖石みたいに魔気まで浄化する強い力を持つものはないだろうけれど。
「あと、これから作るソースには卵の黄色いところだけを使うんだよ」
そう言いながら俺は卵を半分に割って、大きいボウルに卵の黄身だけを入れた。
「えっ! 卵の黄色いだけ使うんですか? じゃあ、白身はどうしたらいいですか?」
俺の言葉に、ハンナが首をかしげながら尋ねた。
「えーと。あとで目玉焼きにでもすればいいんじゃないかな」
「白身だけの目玉焼きですか、ぐぬぬ」
そういえばハンナは以前、卵の黄色いところが好きだと言っていたが、そうか白身だけの目玉焼きは嫌なのか。
「まあ、嫌ならシチューに入れてもいいし、そうしなくても卵を使う料理はたくさんあるんだしさ。 そんな難しい顔するなよ、ハンナ。それより次に進むぞ。泡立て器ちょっと貸してくれる」
「あっ、はい!」
「ぴゃあ ♥ ぴゃあ ♥」
目の前でキラキラしたものが動いたせいか、ベビーカーに座ってこちらを見ていたベベが泡立て器に興味を示した。
しかし、残念ながらこれは俺が料理に使う調理道具であって、ベベのおもちゃではなかった。
「いい子だね、ベベちゃん。ベベちゃんはこれで遊ぼうか」
俺は仕方なく、前回ベベが気に入ってたリンゴに似た果物、リンガを拭いてべべに渡した。そしてその後、ベベのリンガを熱烈な視線で見ていたギャルルにもリンガを一つ渡した。
最後に、ハンナだけ抜け出し者にするのはかわいそうだから、ハンナにも「食べるか?」と尋ねたが、ハンナは「このあともっと美味しいものを食べるんですから我慢します!」と断った。
「このリンガおいしい~~」
リンガを豪快に噛みついたギャルルが耳をびくつき、ベベは満面の笑みを浮かべながらリンガを抱きしめ、歯も生えて無い口でチューチューとしゃぶった。皮も剥いてないから何の味もしないはずなのに、とても楽しそうにしゃぶってる。
赤ちゃんはほんとう不思議だなぁ。
「よかったですね、あれで満足してくれて」
「そうだな」
突然発生した危機的事態を解決した後、俺は再びマヨネーズ作りに戻った。
俺はハンナに渡された泡立て器で卵を少し混ぜて、その後、食用油を少しずつ加えてかき混ぜることを繰り返した。
それをしばらく繰り返すと、卵黄が少しずつトロトロになってきた。
見た目はもうマヨネーズである。
しかし、まだ終わりではない。
俺は塩とレモンを絞って得た果汁をマヨネーズに少しずつ加えた。すると、ようやく固くなってきたマヨネーズが少し薄くなった。
ここでもう一度かき混ぜ、先ほどと同じようにトロトロになったらマヨネーズの完成だ。
「はい、ソースできあがり」
卵の黄色いところだけを使っているから、前世の日本で使っていたものより少し黄色いのだが、味に問題はないだろう。
木べらについたマヨネーズを少し取って味見をしてみると、予想通りマヨネーズの味がした。
コクコクうなずいた俺は、木べらについてるマヨネーズを熱烈な眼差しで見ている二人に尋ねた。
「食べてみるか」
「えっ、お、おいしそうには見えますけど……ソースをそのまま食べるんですか」
「ソースだけをそのまま食べるなんて、僕も流石に食べたくないかな」
あ、確かにソースだけ食べるのはちょっとアレか。
俺もマヨネーズの味を知らなければ、ソースだけを食べるなんてしなかったはずだ。
これはちょっと工夫が必要だな。
「うーん。ちょっと待ててね」
そう言って、俺は一口サイズに切った果物とマヨネーズを木製のボウルに入れて混ぜた。
そしてできたのはそう、マヨネーズ入りのフルーツサラダである。
簡単で美味しいなんて最高だよな。マヨネーズがないと作れないけど。
「できあがり。ほら、二人とも食べてみて」
「は、はい」
「う、うん」
ボウルを二人に差し出すと、ハンナはイチゴ、ギャルルはリンガをフォークで取り、口に入れた。
読んでいただきありがとうございます!
この小説を読んで
「面白い!」
「続きが読みたい!」
と思った方は、ぜひブックマーク!
それと、↓の★★★★★を押してください!
するとなんと!作者のテンションがめちゃくちゃ上がります!
上がり過ぎてもっと頑張ろ!となるので!
よろしくお願いします!ヽ(o^▽^o)ノ




