黒騎士と姫とドレス
「ふぅ。いい取引だった」
俺は流してもない汗を手で拭きながら言った。
バジリスクの素材を見るまでは固い態度をしていたレディンだったが、その後はとてもチョロかった。
バジリスクの魔石や鱗に夢中で、予備用の仮面製作依頼も追加料金なしで引き受けてくれたんだから、チョロイとしか言えなかった。
「この後は、ベベの布団を受け取りに行けばいいか」
数日前にロベランに頼んでいたベベの寝具が完成したらしい。
ちょうどこの後、時間も空いているし、霊墓城に来たついでにロベランにベベの寝具を受け取りに行く予定だ。
そのまま城に戻った俺は、すぐにロベランを探した。
「ロベラン、前に話した布団を見せてくれ」
「かしこまりました。御主人様」
俺の言葉に、ロベランはあらかじめ用意していたかのように、書斎の一角から綺麗に畳まれた寝具を取り出した。
「えっ、何か多くないか?」
「予備用に少し多めに用意いたしました。清潔さを保たないと、人間の子供はすぐ体調を崩すと聞きましたので」
「そ、そうか」
確かに予備があればいろいろいいだろうな。
そう納得した俺は、早速寝具を確認した。
下に敷くマットはふわふわで、上にかける布団は軽くて暖かい。まだ少し寒い季節なので、ベベが使うにはこれくらいがちょうど良さそうだ。
寝具の上にベベをそっと置くと、ベベが嬉しそうに笑いながら俺の指を掴んだ。
「ぴゃ❤︎ ぴゃあー❤︎」
「おお、気持ちいいか、ベベ。よかったな」
そう言いながらベベに掴まれた指を軽く振っていると、後ろで待機していたロベランが軽く咳をしてから言った。
「ご主人様、一つ申し上げたいことがおりますが」
「何だ言ってみろ」
俺はベベに手を掴まれたまま、体を少しだけ回してロベランに問いた。
するとロベランは軽く頭を下げながら言った。
「寝具だけでなく、服も用意されてはいかがでしょうか」
「服を?」
「はい。おこがましいかも知りませんが、今着ている服では、赤ちゃんにはあまり着心地が良くないかと」
ロベランの言葉に俺は視線を下に向け、俺の手で遊んでいるベベを見つめた。
ベベは今初めて会った時と同じく、ドレス姿だった。
もちろん、初めて会った時と同じドレスを着ているわけではない。ちゃんと着替えはさせている。初めで会った時のようにドレスを着ているだけだ。
なぜベベがドレス姿かというと、初めてベベと会った時に一緒にいた荷物に入っていた服が全てドレスだったからだ。
さすがに赤ちゃんにコテコテのアクセサリーは危険なので、身に着けていたアクセサリーは初日に全部外したが、それでも持っている服がドレスしかなかったので、今もベベはドレス姿なのだ。
それにしても、今までは慣れてて気にしてなかったけど、確かに聞いてみるとロベランの言う通り、このままずっとドレス姿なのはベベが可哀想だ。
魔王様の好みなのか。それとも聖国の王族のゴージャスな趣味なのかは知らないが。さすがにずっとドレス姿のままというのはちょっとないな。
「そうだな。ついでにベベの服も新しく仕立てようか。いつまでもこんな服ばかり着せるわけにもいかないからな」
「では、今すぐ針子のメイドたちを呼んで参ります」
俺が許可すると、そう言ったロベランがそのまま部屋から出て行った。
そして数分後。
「こんにちは、ナイトさん。ロベランさんの命令で参りました。 針子メイドのエマと申します。
「エマさん、こんにちは。早速ですが、この子の服を仕立ててもらえますか」
「はい。わかりました。皆さん、採寸を始めてください」
軽く頭を下げた針子メイドのエマさんが、後ろに続くメイドたちに指示を出した。
すると「はい!」と答えた後ろのメイドさんたちが素早い動きでベベのサイズを測り始めた。
測り始めたのはいいんだけど……。
「なんで私まで採寸されるんでしょか?」
「ロベラン執事長から、この部屋にいらっしゃる方々のお洋服を仕立てるように命じられましたので」
「えっ。ロベラン執事に?」
そう言いながら周りを見渡すと、いつもならエマさんたちと一緒に入ってきているはずのロベランの姿が見当たらない。
俺の正体を知っている自分がいたら、俺が服を仕立てるのを拒めるとわかってて、あらかじめ逃げたのだろうか。
もしかして俺、ロベランにハメられたのか?
前々から霊墓城の主人として相応しい服装を身につけてほしいと頼まれる事はよくあったけど。それにしても、まさかこんな方法まで使うとは。
確かにこうなると、下級魔族であるナイトのふりをしている俺は逃げられないけど。
それにしても俺はこの城の主人だというのに、あまりにも酷いじゃないか。くっ! 下克上だ!
「ナイトさん、少し腕を上げてもらえませんか」
「いいえ、私は……」
「ナイトさん、腕、上げてください」
「いや……」
魔族といっても普通の針子なのに。 この威圧感は何なんだろう。
勢いよく近づいてくるエマさんから一歩下がると、エマさんが二歩ほど近づき、メジャーを俺の方へ向けた。
何があっても俺のサイズを計ってみせるという強い意志を感じた。
「さあ、怖がらないで。ちょっとサイズを測るだけだから! さあ!!」
「あ、いや、俺は……」
いや、本当に必要ないんですけど! どうせ成長しない体だし! 丈夫なシャツとパンツを何枚か持っていれば普通に生活できるのに!
なんでそんなにサイズを測ろうとするんだ! あれですか! ロベランの差し金ですか!?
後ろに身をひき続けていると、背中が壁に当たった。
もうこれ以上引くところがない。
くっ。どうする!?
目を転がしながら、下級魔族ナイトとして不自然に思われないくらいの動きで逃げられる場所を探していると、ベベの採寸に行った針子メイドたちのほうから悲鳴が聞こえてきた。
「きゃああーー!!!!」
「な、何……!?」
仲間のメイドたちの悲鳴に、エマさんが振り返った。
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