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黒騎士と姫と綜技硏6

「……ふん。全然なってないな」


 レディンがシイちゃんの魔道具を指でさしながら言った。


「まず、魔石の連結から話にならん。風の魔道具のようだが、これを作った者は、災害でも起こすつもりだったのか」

「いや、それはないと思う。 本人もその魔道具の威力に耐えきれずに吹っ飛ばされてしまったし」

「それならなおさら話にならないな。 基礎もできてないのに魔道具を作ろうとするなんて、何て愚かな奴なんだ。

「それが、お姉ちゃんに聞いたら独学で勉強したらしいんだよ。それでか、着眼点はいいけど、お前の言う通り基礎が足りないみたいだ」

「……そうか」


 俺の言葉に、レディンが何かを考え込むように口を閉じた。

 よし、いい反応だ。

 うまくいけば、レディンがシイちゃんの先生になってくれるかもしれないな。

 しかし、今ここでそれを口に出すと逆にやりたくないと言うのがレディンという骸骨なのだ。なので、俺はこの辺で話をそらすことにした。


「そういえば、他にも頼みたいことがあったんだ」

「何だよ、今日は色々多いな」


 そう言いながらもレディンは考え込むのをやめ、俺の方に視線を向けた。

 俺はそんなレディンの前にひびの入った仮面を差し出した。


「これ、直してくれないか? しくじって壊してしまったんだ」


 テヘペロ。 と笑いながら言うと、レディンが壊れた仮面を指で差しながら言った。


「お、お、おま、お前ェ……!! それを作るのにどれだけ苦労したか分かってて言ってるのか!!」

「まあ、うん」


 もちろん知っている。

 普通の魔道具は一日あれば作ってしまうレディンが、この仮面を作るのに、なんと3ヶ月もかかったんだから。そしてその後、次からはこんな仕事は頼むなと言ってたし。

 たぶん、一般の研究員に任せてたら、3ヶ月どころか3年、いや、30年はかかったんじゃないだろうか。

 とにかくそれだけ作るのが難しいものということだ。この認識妨害魔法がかかった仮面は。

 この小さな仮面に10個以上の魔法陣が入ってるんだから当然といえば当然なんだけど。

 まあ、それはそれとして。


「とにかく頼むよ。他の人に頼むこともできないことなんだからさ」

「こ、コホン! そ、それはそうだな!」


 レディンが照れくさそうに体をクネクネとした。

 骸骨が体をクネクネしている姿は見るに耐えないものだったが、俺はその気持ちを隠し、レディンを褒めつつけた。


「そうだよ! この研究所の所長であるレディンだからこそできることなんだ!」

「ぷへへ」

「さすがレディンだな! 素晴らしい! 尊敬する! だから、レディン、頼んでいいか」

「ぷっ、ぷへへへへ!!」


 続く褒め言葉に、レディンが鼻筋を伸ばしながら笑った。

 しばらくしてやっと笑いが止まったレディンは、鼻を鳴らしながら言った。


「ふっ、ふふん! 見る目があるじゃないか!」

「それじゃあ……」


「でも、タダじゃ無理だ! 俺でもこれは他の研究を止めてまで時間をかけて作らなきゃ作れないものなんだからな!」


 肩をそびやかしながら自慢げにいうから、タダでやってくれるんじゃないかと思ったが、さすがにそう簡単にはいかないようだ。

 ベタ褒め作戦だけではやっぱり無理だったらしい。

 俺は仕方なくベタ褒め作戦を諦め、今度は脅すように言った。



「お前、俺がこの研究所の主人の奪命王てことを忘れてはないな」

「もちろん覚えてるさ! 我々の主人、奪命王様! だから、楽しみにしているよ! 御褒美!」


 レディンはそう言いながら、くすくすと笑いながら指でハートを描いた。

 どうやってやったのかはわからないが、骸骨の中で赤く輝く眼光が褒美という文字で輝いていた。


 俺よりも頭一つ大きい男の骸骨に指でハートを描かれるなんて、メチャクチャ気持ち悪い。

 そそくさと視線を逸らした俺は、ベビーカーの中でガラガラで遊んでいるベベを見て、目を清めた後、話を続けた。


「ふぅ。わかった。何か欲しいものでもあるのか」

「ふふっ。どうしようかな。今度はウチの領主様に何をしてもらおうかなぁ」


 壊れたこの仮面を作って貰った時にもかなりの金額の物を対価で払ったというのに。今回はどれだけぼったくられるんだろうか。

 いっそのこと、他の人だったら楽だったのになあ。

 お世辞ではなく、本当にレディンじゃないと作れないものだからな。

 正直、他の人に頼められるものならもうやってる。真面目な性格のローデンなら素直に仕事として引き受けてくれそうだし。


 だが、無理なことは無理なのだ。

 この小さな仮面に魔法陣を10個も付与する神技は、この広い魔界でもレディンにしかできない。

 だから最初この仮面を依賴する時も、弱みを握られる事をわかっていながらも、俺の正体を明かすしかなかったんだ。

 あの時も調子に乗って一線を越えようとしたから、それ以上調子に乗ったら今持っている研究費も全額カットすると言ったんだっけ。

 ああ、もう本当に何を要求してくるか不安だな。


 俺はそんなことを考えながらマジックバッグから適当な大きさの魔石を取り出した。


「とりあえず、これ。今回使う魔石。形はちょっと変だけど、大きさはいい感じだから使ってくれ」

「ああ、わかった……て! 何だよ、これ!!」

「あ? 仮面用の魔石だよ。 前にお前がその仮面を作るのに、拳より大きい魔石が必要だって言ってたたろ」

「いや、そうじゃなくて! こんなものどこで手に入れたって聞いてるんだよ!」

「家の近くの森で手に入れたんだけど」


 正確にはタイガー領地近くの森にいたバジリスクから手に入れた魔石だが。

 実は以前、ギャルルを街まで送った後、回収しておいたんだ。

 俺は赤く輝くバジリスクの魔石を見ながら言った。


「そんなに珍しいか? 形はちょっと変わってるけど、他は普通と同じように見えるが」

「全然違う! 魔物の魔石がこんなに効率のいい形をしているのはあんまないんだよ!」

「そうかぁ」


 俺にはよくわからないが、専門家であるレディンが言うのだから、そうなのだろう。


「それで、これで仮面は作れるのか」

「もちろん作るのは問題ないが……」

「が、なんだ」

「仮面には別の魔石を使って、これは俺が貰ってもいいか? ちょっと研究してみたくてさ」


 レディンが眼光をウルウルさせながら言った。

 本当にどうするんだろう、それ。

 まあ、でも、ちょうどよかった。


「 いいよ。お前が持らっても」

「やった!!」

「その代わり。今回の仮面作りはタダでしてくれ」

「えっ。流石にそれは……」


 ふむ。流石にバジリスクの魔石だけでは足りないか。

 あと一押しだな。


「代わりに、その魔石が出たバジリスクの素材、全部お前にあげる。これでどうだ」

「乗った!!」


 俺が差し出した無傷のバジリスクの死体を見たレディンが食いつくように言った。


 フッ。チョロいな。


 

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