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黒騎士と姫と綜技硏5

 ABC兄妹の研究室を出た俺は、シールドのおかげで無事だったベビーカーにベベを乗せて、魔道エレベーターに乗った。

 ABC兄妹の研究室は比較的地上に近いところだったから階段で降りてきたが、今から向かうところはもっと深いところにある。

 なのでエレベーターに乗らないと行くのに時間がかかるのだ。


「きゃー♥ きゃあ♥」


 ウウンー。と軽い音とともに降りていくエレベーターが面白かったのか、ベベがはしゃいで笑った。

 俺は楽しそうに笑うベベの口元から流れる涎をハンカチで拭きながら、傷ついた腕の方に魔力を流した。

 すると、微かに違和感があった手から、すぐに違和感が消えた。


「よし」


 俺は拳を握ったり広げたりしながら感覚を確認した。

 動きも不自然な部分はなかった。

 傷が全部治ったのだ。


「さあ、どうしようか」


 傷が治った以上、包帯はむしろ動きを妨げるだけだ。

 包帯はもう解く方がいいだろ。

 しかし、今ここで包帯を外してもしまたABC兄妹に会ったりしたら、いろいろ聞かれるかもしれない。

 そこまで考えた俺は、包帯をしばらくそのままにしておくことにした。

 包帯が動きの邪魔になるのは事実だが、それでも後で言い訳をする事を考えると、このままにしておいたほうがずっとマシだと思ったからだ。


 そんなことを考えているうちに、目的地に到着した魔道エレベーターが静かに止まった。

 魔道エレベーターを包んでいたシールドが解けるのを見た後、俺は廊下に出た。

 目的地は一番奥にある部屋。

 ベビーカーを引いて部屋の前までたどり着いた俺は呼び鈴を鳴らした。


 ピンポーンー。


「…….」


 しかし、予想通りというか、中から答えはかえててこなかった。

 うん。こうなると思ったよ。

 コイツが素直に出てくるわけないよな。


 ウンウンとうなずいた俺は、ドアをトントンと叩いた。 すると、軽い反発が感じられた、中に人が入れないようにシールドまで張っているようだ。


「ふーん。そうか、そう来るか」


 俺は腰に手を当てて、ハハハと笑った。


 まったく。人を舐めやがって。

 そっちがそう出るなら、こっちにも方法がある。


「ベベちゃん、ちょっとおとなしく待っててね」


 ドアから少し離れたところにベベのベビーカーを置いた後、シールドを張った俺は、再びドアの方に戻り、固く閉ざされたドアを軽く蹴った。


 トオーン。


 通りすがりに靴の先がドアにそっと当たったような、そんな軽い音。

 しかし、結果は決して軽くなかった。


 ガシッ! パキッ! パキキキィィィ!!


 靴が当たったところから波紋が起こり、その波紋を起点としてシールドに薄いヒビが入り始めた。

 割れ始めたシールドが完全に破られ、シールドに守られていた扉が吹き飛んだのは一瞬だった。


「よしッ」


 完全に破られたシールドの前で軽く拳を握りしめた俺は、ベビーカーの中でガラガラで遊んでいるベベを連れて研究室に入った。


「おい、レディン。俺が来たぞ」

「なにが、俺が来たぞ、だ! 人の研究室をめちゃくちゃにしやがって!!」


 我々の丈夫な骨野郎レディンが、飛んできたドアに当てられてめちゃくちゃになった研究室の一角から出てきながら言った。

 だが、俺にも言いたいことはある。


「お前が悪いんだよ。人が入れないようにドアにシールドまで張っりやがって」

「たとえそうだとしても、他に方法があるだろ! ドアが開かないからってドアを吹き飛ばす奴がいるか!」

「ここにいるけど」


 ここにいるけど。

 堂々と言うと、レディンが頭が痛いという態度で頭を抱えた。

 まあ、そう言っても骸骨だからどんな表情をしているのかはわからないけど。

 それはそうとして。


「頼みたいことがあって来たんだが」


 俺の言葉に、レディンが顎の骨を大きく開いて言った。


「……お、お前はこの前、俺の研究費を削っておいて、しかも今俺の研究室をこんなメチャクチャにしておきながら、それを言うのか」

「言うけど」


 普通に言うけど。一度や二度のことじゃないし。それにそもそも研究費はレディンが悪かったし。


 堂々と言うと、言う言葉を失ったのか、レディンが深くため息をつきながら手を振った。


「はあ、何だ、言ってみろ。とりあえず聞いてやる」

「研究員一人の先生になってくれない……」

「断る!」


 俺の言葉を聞いたレディンは迷いなく俺の話を断った。

 いくらなんでも、もう少し聞いてから断ったらどうだ。

 まあ、最初から断るだろうとは思ってはいたが。


「まぁまぁ、聞いてみろよ」

「聞くまでもない。俺は弟子を取らないって前々から言ってるだろ!」

「今回削られた研究費、戻してあげるからさ」

「ふ、ふん! そ、そんなことで揺れるものか!」


 今、明らかに揺れただろが。

 まあ、ニンジンが嫌ならこっちにも方法がある。


「研究費3パーセントダウン」

「くうっ! ず、ずるいぞ!」

「研究費5パーセントダウン」

「い、いくら脅されてもやらないぞ!! これは研究者としてのプライドがかかっている問題なのだ!!」


 うーん。なるほど。研究者のプライドか。


「しょうがないな。じゃあこれだけでも見てみろよ」


 俺はそう言いながら、ABC兄妹の研究室から持ってきたシイちゃんの魔道具を差し出した。

 すると、研究者としての好奇心を抑えきれなかったのか、レディンが「何だ、これは」と興味を示した。


「さっき言った、弟子にしてほしい研究員が作った魔道具だよ」

「ふむ。そうか」

「お前も前に見たビイさんの妹なんだが、どう思う」

「……ふん。全然なってないな」


 

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