黒騎士と姫とハンナと山菜取り2
ハンナと俺は近くの平地にマットを広げて座り、弁当を取り出した。
ハンナの弁当は童話に出てきそうな小さなバスケットにカラフルで可愛い布をかぶせたもので、俺の弁当は木製の弁当箱を藍色の布で包んだものだった。
「ナイトさんのお弁当不思議ですね!」
この世界で弁当といえば、ハンナが持っているピクニックボックスみたいなものを指すので、俺の弁当は確かに珍しく見えるかもしれない。
でも俺はこっちの方がしっくりくるんだよな。
そんなことを考えながら俺はミノタウロスのミルクを入れたポットを取り出した。俺がご飯を食べるよりも、ベベのご飯を食べさせるのが先だったからだ。
「ハンナ、俺はベベのご飯を食べさせてから食べるから、先に食べてていいよ。お腹空いてるでしょ」
「えええと、やっぱり待ちます」
「ん? でも待たせるのは悪いし……」
本当に先に食べていいのに。
「いいんです! このくらい待てますから。それにご飯は一緒に食べた方が美味しいですし!」
「そうか、うーん。じゃあ、これでも食べてってくれ」
俺の分の採集カゴから拳半分くらいの大きさの黄色い果物を一つ取り出した俺は、それをハンナに渡した。
「えっ! いいんですか? これ、すごく美味しいですよ」
「ああ、大丈夫。だから食べてくれ」
そもそもハンナが探してくれなければ手に入れられなかっただろうし。まだ二つもあるから、俺が食べる分は十分だ。
「じゃあ、ありがとうございます! いただきます」
元気よくお礼を言ったハンナが、サクッと黄色い果物をかじった。
「あまーーい~~~~」
俺は美味しそうに果物を食べるハンナを見て思わず唾を飲み込んだ。
ハンナが今食べている黄色い果物は「リンゴマンゴー」という名前の果物で、文字通りリンゴとマンゴーを混ぜたような味がするフルーツだった。
ジューシーで、ほんのり酸味があり、ジュースとしても、食後のデザートとしても人気の果物だ。今は前菜だけど。
とにかく重要なのは、あれがめちゃくちゃ美味しいってことだ。
俺も食べたいけど、今はベベのご飯を食べさせるのが先だ。
今日はミノタウロスの乳だけを食べさせる予定だ。外で慣れないものを食べさせて体調を崩したりしたら大変だからだ。
俺はミノタウロスの乳が入ったポットをベベの口元にそっと近づけた。
すると、ベベが喜んでそれを飲んだ。
「……離乳食もこれくらい食べてくれると助かるのに」
「えっ! ベベちゃん、もう離乳食食べてるんですか?」
「うん。まだ始めたばかりだけどね。だけど、あんまり食べてくれないからちょっと困ってる」
ミノタウロスの乳はこんなにも喜んで食べてくれるのに。
離乳食はどうやって食べさせようかを考えだけで、ため息しか出てこない。
「ベベちゃんもそうなんですね。 マロンちゃん、あっ、マレさんの子なんですけど、あの子もそうでした。そういう時は頑張るしかないってマレさんが言ってました」
「そうか。子供にはたくさん食べてほしいんだけど、難しいものだな」
そんな話をしているうちに、ベベがポットの中の牛乳を飲み干した。
「今日はミノタウロスの乳だからか、早いな」
ベベにゲップをさせた俺は、マットの片側にクッションを置き、その上にベベを乗せた。さっきまで遊んでいたリンガをきれいに拭いてベベの上げると、ベベが「ぴゃあ♥ぴゃあー♥」と嬉しい悲鳴をあげた。
何が気に入ったのかわからないけど、今はそれでいい。
「じゃあ、ハンナ。俺たちもご飯にしようか」
「はい!」
明るく答えたハンナは、ピクニックボックスの上に被せていた布を外して、中から黒パン、チーズ、ハム、そして水が入ったガラス瓶を取り出した。
森でサンドイッチを作る気で、具材を別々に持ってきたのかな? と思っていると、ハンナがあーんと黒パンをそのままかじった。
そうだ。ハムや 野菜なんかも挟まれてない、ただの黒パンを。他の具材もちゃんとあるというのに。
もしかして黒パンをそのまま食べるのが好きなのだろうか。黒パンの独特の食感が好きという人もたまにいるし。
そんなことを考えていると、喉を詰まらせたハンナが慌てて胸をポンポン叩き、水をゴクゴクと飲んだ。
「ぷはぁ! お腹が空いて早く食べちゃいました。黒パンが嫌いなわけじゃないんですけど、喉がよく詰まるのはちょっとつらいですね」
ヘヘと笑ったハンナが再び見るからにも硬そうなパンをかじった。
えっ。好きで食べてるんじゃないのか。
俺はそんなことを考えながら弁当を開けた。
弁当の中には、白いパンに野菜とハムが入った食事用のサンドイッチと、フルーツジャムが塗られた甘いデザート用のサンドイッチ。そして口直し用に持ってきたミニトマトと一口サイズのフルーツがきれいに入っていた。
ハンナが黒パンをそのままかじってる前でこれを食べるのはちょっと勇気がいるなぁ。
そんなことを考えていると、ハンナが俺の弁当を見て感嘆の声を上げた。
「わあ! きれい! ナイトさんが作ったんですか」
よし、今だ。ハンナに俺が作った弁当を勧めてみよう。
「ああ、そうだよ。ハンナもどうだ」
「えっ! いいんですか!?」
「ああ、いいよ。もしかしてっと思って、ハンナの分も持ってきたからね」
むしろもらってくれないと困る。
黒パンをそのまんま食べている姪っ子のような子の前で一人で美味しい弁当を食べるなんて、普通に拷問だ。
苦笑いしながら弁当を渡すと、ハンナが弁当箱からサンドイッチを取り出し、パクッ! とかぶりついた。
そして、
「おいしいいいぃぃ~~~~~~~~~~~~~~」
と、とてもいい笑顔で叫んだ。
おいしい、か。よかった。作った甲斐があった。
「ナイトさん! これはどうやって作ったんですか!? 香ばしくて、しょっぱくて、何だか爽やかです!」
ハンナが頬にパンクズをつけたまま聞いてきた。
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