黒騎士と姫と離乳食作り1
台所に置いておいたオートミールがどうなったか確認するためだった。
「……少しなじんだか……な?」
いや、全然なじんだ気がしないな。
少し柔らかくなったかな? と思うくらいだし。もう少し置いてみようか。
いや、やっぱりこれはちょっと違う気がする。マレさんはふやかしてからすりつぶすんだと言ったんだが、このままだとあと数時間かかりそうだ。
むむ、半分をとって先に煮るのも試してみよう。
俺はボウルの中のオートミールを鍋に半分くらい移した後、鍋を魔道焜炉の上に乗せ、火をつけた。
魔道焜炉から火が上がり、しばらくすると、鍋がぐつぐつと沸騰し始めた。
俺は魔道焜炉を弱火にした後、木べらで鍋をかき混ぜた。
「おお、いい感じ」
香ばしい香りとともに、オートミールがゆっくりと解けてきた。
ただ、まだ大きなかたまりがたくさん残っている。小さいかたまりは少しずつほぐれても、大きなかたまりが残っているところを見ると、マレさんの言葉通り、すりつぶす必要があるようだ。 この場合、すりつぶすにしても、一度冷ましてからになりそうだが。
「冷ます時間を考えると、先に水に浸した方が早いかな」
いや、やっぱりそれはないな。
食卓に戻って水につけておいたオートミールを確認したが、先ほど確認した時と大差はなかった。
水につける時間も長くかかるし、あれをすりつぶそうとすると間違いなく大変なことになる。
もちろんフルパワーでやれば一瞬で粉になるだろうが、その場合、オートミールを入れているボウルも粉になる可能性が高い。
力加減が難しいのだ。
「はあ、ミキサーが欲しい」
ミキサーさえあればこんな苦労はしなくて済むのに! 現代日本の文物が恋しい!! くそー!!
よし! 次はレディンにミキサーを依頼しよう! 今回俺に研究費をたくさん取られたから嫌がるだろうけど、こんな面白い研究を拒否はできないだろう!(笑笑笑)
……まあ、どうしても無理だといえば、研究費をちょっと追加してあげることも考えなくちゃならないけど。
「う、うえええええーーーーッ」
そんなことを考えていると、ベベがいるベッドの方からベベの泣き声が聞こえてきた。
なんだろう、まだご飯の時間には早いというのに。
ということは……。
「ああ、やっぱりか」
赤ちゃんのオムツは時間を選ばない。
どんなに忙しくても、子供はおむつを濡らし、それに合わせてどんな時でもオムツを替えなければならないのがお世話係の宿命だ。
俺は慣れた動きでベベのお尻を拭き、オムツを替えた。
すると、たちまち機嫌が良くなったベベが「ぴゃあ♥」と笑った。
「ぴゃ♥ ぴゃあー♥」
「よしよし、気持ちいいか」
「ぴゃあ♥ ぴゃあぁーー♥」
でもそれも一瞬で。
「む、むぅん……!!」
ベベがいつもと違った声で喃語を発した。
……何だろう、先ほどまでは元気だったのに、まさかどこが痛いのか?
不安を抑えながらべべを見ていると、ベベが左の手足を右に上下させながらうなり声を出した。
一体何がしたいのだろう。
「はぁー、でも痛いわけじゃなさそうだな。よかったぁ」
俺は血色のいいベベの頬を軽くツンツンした後、腰を上げた。
「さて、それじゃあ、もう料理に戻る……うん? 何か焦げた匂いが……」
……焦げた匂い?
「あっ! ヤバイ!!」
鍋の火を消すのを忘れた!
急いで台所に戻ると、鍋から煙が上がっていた。
「うわー!! 水! 水!! って言うか、窓!! 窓を開けないと!!」
赤子がいる家で煙が出るほど鍋を焦がすとは。
失敗した。俺は急いで家の窓を全部開けて、ベベが寒くないように薄い毛布をかぶせた後、再び台所に戻った。
慌てて魔道焜炉に直接水をかけたせいで、台所は水でびしょ濡れだった。
「あぁ、これは掃除に時間がかかりそうだな」
はあ。オートミール粥も焦げて食べられなくなってしまったし。
「……今日はもう無理。床だけ拭こう……」
離乳食は、明日作り直そう。はあ……。
***
「せ、成功した……!!」
結局俺が離乳食作りに成功したのは、それから2日後だった。
料理をするたびにベベが泣いたり、変な声を出したり、おむつをぬらしたりしたからだ。
その2日間で俺が知ったことは2つある。
一つ、子供の世話をしながら料理をするのはとてつもなく大変だ。
二つ、何んだかベベが寝返りを打とうとしているような気がする。
赤ちゃんってこんなに早く寝返りを始めるんだなぁ、と思った。
この2日間、ベベが突然左の手足を右に上げたり下げたりしてうめき声を上げるのが増えた。
最初は姿勢が悪いからだろうかとも思ったが、どうやらそうではないようだ。昨日は背中が少し浮き上がったりもしたし。 結局出来なかったけど。
俺は最近それをほほ笑ましく見つめている。
「問題は、寝返りができないと泣くことだったけど」
たかが寝返りが思い通りにならないくらいで泣くなんて、赤ちゃんは謎だ。
おかげで料理中にベベをなだめようと飛び出して何度鍋を焦がしたことか。 ハハ。
最初は魔道鍋の火をしっかり消しても、すぐまた泣き出すと慌てて消すのを忘れて行っちゃうんだよな。はあ。
「まあ、それでも結局、完成したんだけどね」
離乳食用のオートミールのレシピは、やはりオートミールを煮込んでからすりつぶすのが正解だった。
マレさんの言ってたレシピどうり水につけた後すりつぶすのも一度やってはみたが、無駄に力が入り、うまくすりつぶせなかった。
それに比べて、一度煮込んだオートミールは、ざらざらした感じはあるものの、なんとかすりつぶすことができた。
そうして完成したのが、この具なしオートミール粥だ!
煮込んだオートミールをすりつぶした後、一度濾し、ざらざらした食感をほぼ取り除いたオートミール粥は、見た目だけ見るとほとんど具のないスープに近かった。
「ちょっと濾しすぎたかなぁ」
でも粗いよりはマシだろう、うん。
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