黒騎士と姫とギャルル・タイガー4
「わかったわ。ナイトさんの好意に甘えるわ。とりあえず今日の分を除いて、これくらいもらえるかしら」
ノールさんがそう言いながら指を2本伸ばした。
ん? なんか思ったより少ないな。
「二個……ですか?」
「いいえ、20本よ」
二十個!?
思ったより多すぎる!!
二十個だと銀貨六十枚。円に換算すると六十万円ほどの金額だ。
つまり、ノールさんは今、一般人なら何ヶ月も働かずに暮らせる金額を払うと言っているのと同じである。
「ノールさん、そんなに買ってもいいんですか」
「確かにちょっと厳しいけど、構わないわ。お金で人の命は買えないし。 それに、ナイトさんへの恩返しでもあるしね」
「そうですか」
どうやらノールさんにも、今回のことは結構耐えられたらしい。
迷いのないノールさんの言葉に俺は首を縦に振るしかなかった。
そんな感じで話が終わった頃、
「ねえ、話は終わった?」
ギャルルが後ろから声をかけてきた。
「あ、はい。ぎゃあ......ルルちゃん。待たせてごめんね」
「大丈夫。待つのは慣れてるし。それより、あんたに聞きたいことがあるんだけど。
ギャルルが俺を見て言った。
「え、ええと。ナニカナ」
俺は背中に冷や汗をかきながら答えた。
さっきの『シャドウト・ラップ』でばれたとかはないよな。ギャルルが出てくる前に回収したし! 正体はバレてないよな!?
できるだけ自然な笑顔を演じながらギャルルを見ると、どこか恥ずかしそうにギャルルが言った。
「ぼ、僕にもあれ売ってくれないか」
「え?」
「さ、さっきの魔道具のことだよ! 僕も買えないかと聞いてるんだ!」
あ、ああ、OMH229号のこたか。
ま、いいけど。
でもそれがそんなに恥ずかしがることか。買いたいなら買えばいいと思うんだが。
「いいよ、一個で銀貨三枚だけど、何個買う」
「一、あ、いや、ニ個くれ!」
ギャルルはそう言いながら、銀貨6枚を差し出した。
流石は四天王カプカ・タイガーの娘。
ニ個なら銀貨六枚。つまり、円貨で六万円ほどの金額なんだけど、迷いも無く買うって言うとは、太っ腹だな。
俺はそんなことを考えながらマジックバッグから魔道具を取り出し、ギャルルに差し出した。
「はい、どうぞ」
「え? 三つだけど」
「一個はおまけだよ。使ってみて気に入ったら、あとで買ってくれ」
俺はそう言いながらOMH229号二個とOMH222号一個をギャルルに渡した。もちろん専用リムーバーも一緒に。
魔道具を受け取ったギャルルは小さな声で「ありがとう」と言った後、応接室のある小屋の方へ走って行った。
なんだろう、このくすぐったい反応。
なんとなく首の後ろを掻いていると、ノールさんがニヤニヤしながら声をかけてきた。
「あら、ナイトさん。モテモテね」
「いや、モテモテじゃないですよ」
からかっているのは分かるけどあまりいじらないで欲しい。
こっちはソロ歴200年以上なんだから。ちょっと傷つく。
魔道具をノールさんに渡した後、その代金と牛乳、そしてベーコンまで追加でもらった俺は、ノールさんのミノタウロス農場を出た後、寄り道もせずまっすぐ森の中にある家に戻った。
これ以上トラブルはゴメンだったからだ。
「……疲れたぁ」
本当に疲れた。
正直もう動きたくない。
このまま寝るのもアリだな、とも思った。
でも、そうするわけにはいかなかった。
まだやることが残っていたからだ。
「離乳食を作らないと」
マレさんは離乳食をこの時期から始めるべきだと言った。
もちろん今日から始める必要はない。だが俺は子供の成長がとうなるのかわからないので、できるだけ時期に合わせて離乳食を始めてやりたい、と思っている。
「とりあえずオートミールを水につけると言ってたな」
作った後は時間停止機能のついたマジックバッグに保管するつもりだし、ちょっと多めにするか。
俺は大きなボウルにオートミールと水を入れた後、ほこりや虫が入らないように上に布をかぶらせた。
「これはこのまま30分くらい置いておくとして、その間ベベのベッドをセットしよう」
位置は俺のベッドのすぐ横が良さそうだ。何かあってもすぐわかるし、位置も移動経路の邪魔にもならないから。
「ベベちゃん、ちょっとおとなしくしてってね」
俺はベベをしばし俺のベッドに降ろした後、マレさんからもらったベビーベッドをマジックバッグから取り出し、そっと床に置いた。
最初は中古はあんまり良くないかなと思っていたが、こうして置いてみると意外に悪くない。
使い込まれた木製家具ならではのぬくもりというか、あたたかさというか、そんな感じが心地いい。
ただ、問題が一つ。 もらったのはベッドフレームだけで、中に入る寝具は貰ってない。さすがに他人の布団をそのまま使わせるのはちょっと気が引けたからだ。
「寝具はロベランに頼もうかな。ベビーベッドとかと違って、城に余っている布団とかを使って作り直せばいいし」
寝具の用意ができるまでは、余った毛布を重ねて使おう。きれいな毛布はマジックバッグに何枚も入っているし、二枚三枚重ねて敷けば悪くはないだろう。
俺は毛布を折りたたみ、ベビーベッドに入れ、ベベをその中にそっと寝かせた。
「さあ、ベベちゃん。どうかな」
「ぴゃあーー?」
慣れないベビーベッドにベベが首をかしげながらバタバタとした。
うーん、もしかして毛布だけでは寝心地が悪かったのだろうか、でも慣れてもらわないと困る。
そんなことを考えていると、ベベが一瞬蠢くのを止め、満面の笑みを浮かべた。
「ぴゃ♥ ぴゃあ♥」
「おお! 気に入ってくれたのか! よかったぁ」
「ぴゃあーー♥」
気に入ってもらえなかったら、今からでも新しいベッドを買いに行かなきゃいけないのかと思っていたから、ほんとに助かった。
ベベがいい子でよかった。
俺は俺のベッドの上に設置していたカラーモービルをとり、ベベのベッドの上に設置した。
「さあ、べべちゃん。ここで大人しくいるんだよ」
そう言った俺はベベにガラガラを持たせた後、台所に向かった。
忙しい、忙しい。
ううっ。またおそくなりもし訳ありません。
これはダメだと思いましたので、明日からは6時に投稿する事にします。
本当にもし訳あれません。




