黒騎士と騒がしい森3
ギャルルは絶望した。
死んでしまった。
バカすぎた僕のせいで。
なんの罪もない人が。
触れただけで、足が石に変わってしまうほどの毒だ。あのように真正面から打たれたら、もう生きているはずがない。
「あ、ああ。僕のせいで⋯⋯!!」
僕が浅い森まで奴を連れてきたせいで。
僕が周りの人の言うことを聞かずに勝手に深い森まで入ったせいで。
僕が自分の実力を過信したせいで。
何の罪もない人が死んでしまった。
ギャルルはお母さまの子なのに。もうお母さまに会う顔がない。
あ、でもーー。
「⋯⋯もうそんなこと考えても無意味か」。
だって、僕はここで死ぬんだから。
「ごめんなさい、お母さま⋯⋯」
ギャルルはそうつぶやきながら目をぎゅっと閉じた。
その時、
「こほっ! こほん! あ、もう、臭いじやないか」
あまりにも衝撃的な出来事に耳がおかしくなったのだろうか。
煙の中から人の声が聞こえてきたような気がした。
しかし、衝撃的なことはそれで終わりでは無かった。
驚いたことに、足音とともに、煙の中から人が出てきたのだ。
大蛇の毒煙にやられたと思っていた、あの仮面の男だった。
「ね、君大丈夫かい?」
「⋯⋯え?」
え? 幻聴? 幻想? 何、何だ!? どうやって生きてるんだ!?
ぜひ、その秘訣を教えてほしい!!
あ、いや、そんなこと言ってる場合じゃなかった!!
「あ、あんた! 逃げろ!! まだあいつが⋯⋯!!」
そう、信じられない光景に驚いて呆然としていたが、今はそんなことで驚いている場合じゃなかった。
何故か今は動きを止めているが、まだ目の前にはあの大蛇がいた。
あの大蛇をどうにかしないと、この絶体絶命の状況からは逃げられないのだ。
同じ失敗は決してしない。
今度こそこの人を逃げさせないと⋯⋯!
そんなことを考えながら揺れる足で立ち上がると、仮面の男がふと思い出したように呟いた。
「⋯⋯あ!あいつか、あいつならもうすでにーーーー死んでる」
その言葉が終わるのと同時に大蛇の体が二つに割れ、大蛇の首から血の噴水が噴き出した。
それを見ながらギャルルはぼんやりと思った。
一体何が起こったのか、理解できない。
今日は理解できないことだらけだ。
理解できるのはただ一つだけ。
「⋯⋯助かっ⋯⋯た?」
震える足で何とか立ち上がろうとしてたギャルルは、結局また地面にへたり込んでしまった。
***
バジリスクの体がしばらくくっついていたのは、早く切りすぎたからである。
早く斬り倒すのはそれでいいけれど、殺しても死んだのがすぐわからないのがすこし困る。たまに斬られても動く奴もいるからな。まったく。
俺はそんなことを考えながら、地面にへたり込んでいる獣人の子に尋ねた。
「おい、君大丈夫か」
疲れたのだろうか? 状態を見るかぎりけっこう長い間バジリスクに追われていたようだし。
とりあえず。
「水でも飲むか」
「う、うん。飲みます⋯⋯」
水筒を渡すと、獣人の子は慌てて水を飲んだ。やっぱりかなり喉が渇いていたようだ。
「干し肉もあるよ。干し肉はーー」
「食う!!」
「お、おう」
元気だなぁ、幼いとはいえやっぱり獣人、肉への食いつきが半端ない。
手のひらサイズの干し肉を差し出すと、獣人の子は夢中で干し肉に食いついた。鋭い牙で干し肉を引き裂くと、手のひらサイズの干し肉がなくなるのはあっという間だった。
俺は獣人の子に水と干し肉をもう一度差し出しながらそっと聞いた。
「ここまではどう来た? 保護者は」
「うぐっ!」
「⋯⋯もしかして一人来たのか? 保護者に内緒で? こっそり?」
「⋯⋯くっ! こほっ! こほっ!!」
獣人の子が慌てて水を飲んだ。
どうやら正解だったらしい。
「ダメだろ、一人でこんな所まで来たら。森は危ないんだから、次からはちゃんと保護者と一緒に来なさい」
「⋯⋯わかった」
おっと。初対面の子にきつく言いすぎたのかな。
獣人の子の耳がしょんぼりになった。
うーん、子供にいいすぎるのも大人として良くないよな。
「次から気をつければいいんだからさ。そうおちこまないでくれ」
「⋯⋯ん」
「よし、いい子、いい子。ご褒美に干し肉をもう一つあげよう」
「ありがとう!」
干し肉を追加で差し出すと、落ち込んでいた獣人の子の耳が元気を取り戻した。
やっぱりまだ子供だからか単純だな、干し肉一つで元気になるなんて。
さてと、じゃあ事情聴取も終わったし。次に大事なことを聞こうか。
「ねえ、君の家ってどこ?もしかしてタイガー領地かな?
「う、うん、そうだよ!」
「そうか、じゃあ結構遠いな」
「えっ、遠いの?」
獣人の子が理解できないように首をかしげた。
「そうか。バジリスクに追われていて気づかなかったみたいだな。 タイガー領はここから歩いて1時間はかかるぞ」
「ええっ⋯⋯!!」
獣人の子の尻尾がプワッとなっだ。
そして次の瞬間、おちこんだようにシナシナになった。
「と、遠い⋯⋯」
石になった足をちらりと見るところを見ると、歩くのもままならない足でどれくらいかかるか考えているようだった。
うーん、確かにあの足では無理だな。
とはいえ、小さな女の子を抱っこして町まで行くのも気が引ける。
⋯⋯はぁ、仕方ないな。
「ねぇ、君、ちょっと目を閉じてくれないか」
「ん? わかった」
答えるのと同時に獣人少女が両目を手でふさいだ。
「⋯⋯」
あまりにも素直な獣人少女の行動に俺は一瞬言葉を失った。
俺が頼んでおいてこんなこと言うのもなんだけど、この子警戒心がないな。まあ、悪いことをするつもりはないからいいけど。
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