黒騎士と姫と総合技術研究所1
「最近、ご主人様に決闘を申し込む者が一人、おりますが……」
「え? 決闘? 俺に!?」
ロベランの話に、俺は書類を置いて問い返した。
決闘って、あの決闘!? なぜ俺に!? もしかして俺の凶悪な噂を知らないのか!?
昔ならともかく、最近はこんなことがなかったので、俺は慌てて聞き返した。
「はい。ご主人様に、決闘を申し込みたいと」
「……無視しろ。弱い奴には興味がないとか。適当に言い返せばいいだろう」
俺は決闘なんて絶対しないからな。
身を守るために奪命王という凶悪な異名を名乗ってはいるが、俺は元々戦いが好きじゃない。むしろ嫌いだ。いっそのことこの世で戦争なんて無くなればいいと本気で思ってるくらいだ。
「かしこまりました、そうお伝えします。それと、ご主人様にお願いしたいことが一つ
あるのですが」
「お願い……? ロベランが頼み事とは珍しいな。言ってみろ」
「ぴゃあー」
俺は大事な書類にヨダレまみれの手を押すベベから書類を遠ざけながら言葉を許した。
あぁ。この一瞬で書類によだれが……!! はぁ。これは後でもう一度書いてもらわないといけないな。
俺はダメになった書類を横に置いた後、ロベランに視線を向けた。
するとロベランが深く頭を下げながら言った。
「そのベベという子の世話を私に任せていただけませんか? どんなに偽りの姿をしていても、あなたは私たちの主人です。相手が一国のお姫様であろうとも、お主人さまが赤ん坊の世話に直接手を煩わす必要はありません」
俺は書類で遊ぶことを止められ、ぐずるベベをなだめながら考えた。
まあ、確かにその通りだ。いくら魔王の命令とはいえ、俺が直接ベベの世話をする必要はない。下の者に任せてもいいのだ。このくらいのことで怒ったり罰を与えたりはしない。魔王にもその程度の融通はある。
でも。
「ダメだ、それは許可できない」
「なぜですか? 人間の子供の世話くらい、このロベランでもできます」
「そんな問題じゃない」
もっと根本的な問題だ。
「この子が何者か知っているな」
「はい。聖国のお姫様だと……。まさか?」
「ああ、この子は聖力を持っているんだ。それもかなりの量を」
だからダメ。
聖力というのはアンデッドにとって最大の弱点だ。
アンデッドは基本聖力に対する耐性が低い。他の魔族たちよりもずっと聖力によわいのだ。
俺の部下達はみんなかなり強い方だが、だからといって聖力にダメージを受けないわけじゃない。少なくとも俺が受けたちょっとした火傷よりは痛い目に遭うのは間違いないだろ。それに下手をすると致命傷を負う可能性だってある。
さすがにそれを知っていて部下にベベを任せるわけには行かない。
労働災害はダメだ。ぜったい。うん。
すると、状況を理解したロベランが深く頭を下げ謝罪した。
「申し訳ございません。出過ぎた真似をしてしまいました」
「いいよ。ロベランのことだし」
忠心から言った言葉に怒ったりしないから。
そんないい雰囲気でロベランと目を合わせている時。
「ぷっぷっぷっぷ!! ぷばっ!! ぷえええ!!」
「あっ! ベベ、 よだれ!!」
書類というおもちゃを奪われたベベがよだれを飛ばしながら怒った。
まだ泣いてはないが、このままではまずいな。
俺は顔に飛んだよだれを袖で拭いた後、ガラガラを振りながらロベランに言った。
「それより、城で働く人達に伝えてくれる? できるだけ俺が一緒にいるけど、もし俺が不在でも勝手に手を出さないように、と」
「かしこまりました、注意させておきます」
「うん、頼むよ」
さて、色々話してる間、書類の整理も終わったし。
「よし! じゃあ、そろそろ綜技硏に行くか!」
総合技術研究所。略して綜技硏。
秘密アジトを出るときは、疲れたから行きたくないと思っていたけど、実は今日のスケジュールである綜技硏の会議は俺が好きなスケジュールだったりする。そりゃあ楽しいに決まってる! 夢でしか見れなかったいろんな空想をあそこでは実現できるんだから!
「ぴゃーー♥」
「おう! お前も楽しいか、ベベ!」
俺の気分に反応したのか、ベベは満面の笑みを浮かべ、まんじゅうのような手を振った。
ベベが握っていたガラガラに少し顎をやられたけど、大丈夫。聖力にやられることに比べたら痒いくらいだし。それにこの後は楽しい綜技硏の会議があるから! うんうん!
そんなことでやって来ました、総合技術研究所!! 略して綜技硏!!
本城から少し離れたところにある綜技硏は、地上3階、地下98階の巨大な施設だ。最初は俺が欲しいものを作るために設立した2階建ての小さな建物だったが。研究だけに集中できる場所を提供してくれるという噂をどこから聞いたのか、次から次へと人が集まり、どんどん規模が大きくなって今の規模になった。今となっては魔界ところか人界まで含めても、比べる所のない規模の研究所だったりする。
そんな建物がなぜ地下に広がったかというと、
ドオン……!!
毎回このように爆発事故が起こるからだ。
地下にすると、職員が少し埋もれるくらいですむんだけど。地上にすると建物が崩れ、周囲に被害が出るので仕方なかったのだ。
まあ、これも職員が全員アンデッドだからできることだ。アンデッドにとって、地面に埋まるのは布団に入るのと似たものだから。
ちなみにこうして一回爆発すると、その吹き飛ばされた爆心地を片付け、そこから研究所を増設していくのが基本なので、綜技硏は常に大きくなっている。
「それにしても今日はちょっと近いな」
俺は少し眉をひそめるベベの注意をガラガラでそらしながらつぶやいた。
防音壁のせいで音はかすかに聞こえたが、それでも近い。この感じだと地下3階くらいかな。
今日はまた何をやらかしたのか。
「さて、とりあえず行ってみようか」
いつもなら報告を受けて終わりなんだけど、ここまで来たんだし原因を把握しておきたい。後々で問題が起きたら嫌だし。
俺は万が一の事態に備え、ベベの周囲に軽くシールドを張って中に入った。
確か爆発音が聞こえたのはこっちだったよな。
ていうか、この声は……。
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