プロローグ
新入メイドマナは、今日ものすごく運が悪かった。
朝からメイド服のリボンが見つからず朝礼には遅刻、メイド長からは説教を受け、結局朝ご飯の時間にも遅れてしまった。
おかげでパン一つ手にすることができず、薄いスープだけで食事を済ますこととなった。
午前中は廊下を拭きながらバケツを倒してしまい、またもメイド長に叱られ、あげく昼ご飯の後にはその罰として普段使わない倉庫の掃除を一人することとなった。
まさに災難続き。
しかし、その中でも一番の災難は今この瞬間だろうと、マナは確信した。
黒い鎧を纏う黒騎士がマナの前に立っていた。
頭からつま先まで真っ黒な鎧に、背中からなびく紋章が入った赤いマント、兜のすき間から見える赤く光る二つの眼光。何より全身から漂う悍ましい気配。
噂の「彼」に間違いない。
魔王国四天王の一人、黒騎士「奪命王」
会えば最後。死が約束されると言われる、その名そのものが恐怖と謳われる者。
自分は運悪く道に迷った廊下で、その恐ろしい噂の持ち主と出くわしてしまったのだ!
「ひぃっ……!!」
め、目が合った……!
マナはあまりの恐怖に腰を抜かし、その場でへなへなと座り込んでしまった。
悍ましい二つ名の持ち主の前で、しかも、魔王国四天王の一人である「奪命王」の前で地に座るなど、許されざる行為。
今すぐにでも立ち上がり、許しを得て、この場から去るべきだ。
しかし、腰が抜けてしまったマナにはそれが出来なかった。今彼女にできるのはただ一つ、体を震わせながら許しをこうのだけ。
「も、もう、申し訳ございません……!!」
誰が見ても哀れむようなその姿。
しかし漆黒の騎士は何も言わず、ただ無言で彼女を見下ろしすだけだった。
「……」
沈黙が続いた。
そして、その沈黙の中、マナは死を感じた。
もう生き残る道はない。
私はきっとここで死ぬんだ……!!
マナはこれから訪れるであろう苦痛に怯えながら、ぎゅっと目を閉じた。
「……?」
しかしマナの予想とは裏腹に、いくら時間がたっても苦痛が訪れることはなかった。
代わりに聞こえてきたのは、いつもと同じ、厳しい厳しいメイド長の声だった。
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