人生には何の役にも立たない知識・思考をつらつらと書くエッセイ集
関西で阪神ファンではない人の悲哀と友情
日本では野球が最も人気のあるスポーツだと言われている
そして私が住む関西地方ではやはりというか当たり前というか
阪神タイガースが一番の人気球団だ
ところがである
私は関西で生まれ、ずっと関西で育ってきたにも拘らず、阪神ファンではない
ちなみにどこかというと、中日ファンである
愛知にも中部地方にも何の縁もゆかりもないのであるが、中日ファンである
これは関西では非常に稀有な事であると思われている
関西、特に私が一時住んでいた大阪市内では
阪神タイガースの勝った負けたが相当重要な事であった
それは大阪の人間の生活の一部であった
「おはよう、昨日は阪神勝ったねえ」
「おはよう、ほんまやわ。勝ってよかったわ」
「おお、どうも。昨日は負けましたな」
「こりゃどうも。昨日はダメでしたな」
こんな感じで、挨拶の次に出てくるのが阪神の話題である
大阪に住んでいる人は阪神ファンである事が当たり前
だから阪神の話題を振るのが当たり前
勝ったら喜ぶ、負けたら愚痴を言う
阪神ファンの阿吽の呼吸はまるで漫才のようである
このような町で、阪神ファンでないというのは非常に居心地が悪い
私が中日ファンを名乗ると、珍獣でも見たかと思われる位の反応をされる
「ボクは中日ファンなんです」
なんて言おうものなら
「へえ、そうなん。なんで大阪に住んでて中日ファンなの?阪神じゃないの?愛知出身なの?」
と言われてしまう
こんな感じで関西人にとって、阪神ファンではない人間は不思議な存在なのだ
ところがである
そんな阪神ファンたちが気付いていない事があるのだ
関西圏のような大きな都市には
各球団のファンがちゃんと存在しているという事を
何故私がそれに気付けて、阪神ファンの人たちが気付かないか
それはもちろん、私が中日ファンを公言しているからである
関西で阪神ファン『以外』を名乗るのは非常に勇気がいる
私の経験からも分かる通り、珍獣扱いされ、ある意味変人扱いである
だから関西在住の他球団のファンは
応援している球団をわざわざ聞かれるまで言わない人が殆どだ
そして大阪では当たり前に相手は阪神ファンであるという前提で話が進む
となると、多くの他球団ファンは自分のひいきを言わずに過ごすことになる
聞かれない事を良い事に、隠匿して過ごしている人も多い
そしてまた多くの他球団ファンは
阪神の話題が出たらそれなりに阪神ファンの話に乗って話す
会う人会う人から阪神の情報が飛んでくるので、それなりに選手も知ってるし
昨日勝った負けたも知っている
だから話題に困る事はほとんどない
だが実際は自分の球団の話もしたくてうずうずしているのだ
そこへ中日ファンを公言する私がいたとしよう
関西圏では珍獣で、普段は変な人扱いだ
だが、だからこそ彼らは私に自分のひいき球団の話をしてくれる
私と話す時は、阪神の話題をする必要は無いのだ
そんなこんなで私は大阪で『阪神ファンじゃない』人をたくさん知っている
いやむしろ、仲の良い知り合いには阪神ファンが少ないくらいだ
あの人は南海時代からのホークスファン
あの人は阪急時代からのオリックスファン ← ここと
あの人は近鉄時代からのバファローズファン ← ここ、違うんですよ?
あの人は小笠原いた頃からの日ハムファン
あの人は森黄金時代からの西武ファン
あの人はバレンタイン時代からのロッテファン
あの人は前田いた時からのカープファン
あの人は大魔神いた時からの横浜ファン
あの人は古田いた時からのヤクルトファン
あの人は藤田監督時代からの巨人ファン
あの人はそういや阪神ファンだったっけ
私と同じ中日ファンも3人いたっけな?
比較的新しく、東北が本拠のイーグルスのファンを覗けば
私とファンの知人で11球団のファンが揃う
阪神ファンが当たり前、他球団ファンは珍獣扱いの大阪でだ
我々は、阪神ファンがいない場で自分の球団の話をして
チームの愚痴を言ったり選手を褒めたりする
特にお互いの主力選手の話は盛り上がる
昔の選手の話も盛り上がる
だってそんな話、お互いに大阪では出来ないから
なので、こういう関係からお互いの妙な連帯感が生まれる
といって、けして阪神ファンが嫌いとかそういう事ではない
私は特に、どの球団のアンチでもない
ただただ、大阪の阪神ファンに知って欲しいのは
他球団ファンはあなたの身近に意外といるよという事だ
だから、出来れば珍獣のような扱いはしないで欲しいと思う
あなたたちが知っている以上に、我々は存在しているのだから
第一期星野監督・三冠王落合移籍時代からの中日ファンより
関西在住の楽天ファンの方、知り合いたい