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ここで働きたいんです!


「ユナ・マヨルカと申します! よろしくお願いします!」


 胸を張り、口を大きく動かして、ユナは自分の名前を伝えた。

 静かな小部屋に響き渡った威勢のいい声。目の前に座る男性は「ほー、君、元気いいね」と、柔らかく微笑む。

 

(よし! 掴みは悪くない)


 ユナは期待に満ち溢れた眼差しで「ありがとうございます」と答えた。


『戦闘員派遣会社ホワイトリング』


 ユナが志望している就職先の会社名。

『なんとしてでもこの会社に勤めたい』という一心で、人生初の就活をスタートし、面接まで漕ぎ着けることができた。


「どうしてうちに入りたいと思ったんだい?」


「はい! 戦闘員を派遣するという運営方法に魅力を感じました。人員不足になりやすいヒーラーとして、少しでも多く人の役に立ちたい私にピッタリだと思ったんです。また、色々なパーティーと一緒に仕事をする事で、ヒーラーとしてより濃く、早く、経験を積むことができるのではないかと考えました」


 ここ数週間で練りに練った志望動機は、スルスルと口から出てきた。


「なるほど。確かに、うちに勤めたら沢山のパーティーを手助けする事になる。希少な才覚であるヒーラーであれば、なおさら重宝されるだろう。是非、その能力を生かして活躍して欲しい」


「はいっ!」


 前向きな返答に、じわじわと手応えを感じ始める。

 でも油断はできないと、気を引き締めるユナだったが

 

「ぶっちゃけた話、君みたいな素質もあって意欲もある子は採用がほぼ確定しているんだ」


 願ってもみない言葉に、緊張の糸が一気に緩んだ。


「そっそれじゃあ!」


「ああ、君が望めば採用させてもらうよ」


(やった! これで夢に近づける!)


 自分の思い描いた通りの道筋。

 明るい未来が確定し、その場で跳ねたくなるのを必死に堪える。

 

(やばいやばい、落ち着け)


 体は抑えられても、ニヤけ始める表情筋が言う事を聞かない。

 込み上げる嬉しさを必死に堪えて、面接の時間が早く過ぎる事を願う。


「あとは、君自身がうちに入社する気が本当にあるかの確認になる」


 今更確認されたって、ユナが内定を断るつもりは一切ない。

 だから、その後続いた会社の実績や労働環境の()()()()()を浮ついた心でなんとなく聞き流していく。


 幼い頃から、冒険者になるのが夢だった。

 ヒーラーとしての才覚が目覚めてから、より一層その思いは増している。


『最強のヒーラーとして、七聖人に選ばれる!』

 

 夢に向かって踏み出した最初の一歩を、ユナは希望に満ちた足取りで踏み出したのだった。


 

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