昔の世界にタイムスリップできるようになったので「できなかった愛の告白」とか「死なせてしまった人を助ける」とかはどうでもいいので、宝くじで大儲けしたいと思います。
過去に戻れるならなにをする?と聞かれたら、大抵「結局できなかった告白をする」や「死んでしまったあの人を助ける」などと答えるだろう。
だが、この男は違った。この男の考えることはただ1つ。
「よっしゃー宝くじで大儲けするぞー!!!」
そう、宝くじで大儲けしようと考えていたのだ。番号を確認し、その前に戻り、その確認した番号の通りに数字を買う。それだけで大儲けできるのだから造作もない。
「よし、さっそく行くか!」
銀色の機械に乗る。これが男の開発した、タイムマシンだ。過去のどの地点にでもいける優れものだ。これに乗れば過去に行けて今言った計画が遂行できると言うわけだ。
「行ってくる」
そう写真の男に話しかける。その男は貝のネックレスをつけて笑顔で写っている。
この男は別居している父親で、貝のネックレスは母親から貰ったものらしい。そう言えば宝くじを買った後に出会ったとか言っていたような、まあいい。
父の手には大きなやけどの跡が残っているがなんだったか...?
「おっと、そんなことより早く行かなければな」
そんなこと語ってる暇はない。早く遂行しなければ。大きな音を立てて、銀色の機械は揺れ、すぐに姿を消した。
「ここか...」
付いたのはとある地点。新聞を拾い上げ、読むとそこには当選番号が書いてあった。この時すでにスマホというものが普及しているだろうが使ったことがない。
1等当選番号を記憶して再びタイムマシンに戻った。
「これか...」
ニヤリと不気味に笑ってのち、また銀色の機械に乗り込んだ。
その機械はゴゴゴって再び音を立てて揺れ、そこから姿を消した。
「えーっと番号は...」
「かしこまりました!!」
俺は先ほどより過去だということを確認し、宝くじのところに急ぐ。そして小走りで駆け込み、番号を告げる。これで俺は大金持ちだ。
「あなたは運が良いですね!!これが最後の一枚でしたよ!!」
「そうですかー!!」
最後の一枚か。なんとうんのいいことrだ。これを買ったやつは、さぞラッキーだっただろう。
とても気分がいいので近くの店により、コーヒーを頼んだ。なかなか美味しい。おそらく今いる時代だと潰れてしまっていたがこんなものがあったのか。
「くそーもう売り切れかよ!!」
隣ではスマホを見ながらそうつぶやいていた。おそらくスマホで現在の状況を見ることができたのだろう。俺の一番最後に買った奴を買う予定だったのが、俺の到来でその夢も潰えたのだから
「スマホで買えないのは不便だな...この時代」
今生きている時代ではとっくのとうにそんなものはできている。まあ大金持ちになって元の世界に戻るのだから、なんでも良いが。
よく見るとその男は手にやけどの跡がある。
「さて、発表の時まで飛ぶとするかな」
コーヒーをぐっと飲み干して、隠してあった銀色の機械に乗った。
とても好い気分だ。これから大金持ちになるのだから。
だが、そこからはうまくいっていなかった。体の様子が何かおかしいことに気づいた。
「あれ?あれ??」
体が消えかかっている。半透明になっていく体。一体どうなっているのか。
「あ....あぁ....何をしてるんだか。欲に目が眩んで大変なことをしてしまった」
バタフライエフェクトという言葉を思い出す。簡単に言えば少しの行動で大きく変わってしまうことのことを言う。過去に戻るもので使われたりするものだ。
「そうか、俺は消えるんだな」
そう呟き上を見上げる。
カフェで隣で「売り切れていたか」と呟いていたのは、手のやけどの跡から見て、父親だったのだ。買いに行った後に母親と出会ったと言っていたので、俺が最後の一枚を買ってしまったせいで売り切れたことにより、買いに行く必要がなくなったのだ。
つまり、買いに行かなくなったので買った後に出会ったと言う事象自体がなかったことになり、俺は生まれてくることがない。
「はー」
そうため息をついた。先ほどから分かりきっていることを、説明口調でとても申し訳ないが、もう消えるのだからいいだろう。
「さて、次に生まれ変わるのはなにになるんだろうな」
そんなことを考えた。バタフライエフェクトにちなんで、蝶にでもなるか。それもそれでいい。
そんなことを考えてるうちに、男は消えていった。