第四話 これは現実だろう?
誤字ハッケン……いくらでもあるよ(汗
名前まで間違えていたなんて(汗
こんにちわ。
私、異世界でダンジョンマスターを営んでいる、山口聡史と申します。
このたび、どういう理由か不明ながら、元の世界に戻って参りました。
しかも、かつて転移した頃に戻りはしたものの、能力とかは引継ぎになっています。
なのではっきり言って世界最強かも知れません。
ああ、今更ながら現実と認識したんです。
もうね、親とか誤魔化すのが大変なのよ。
メシは食っているが、趣味が思いっ切り変わっちまったからさ、かつてのような事をやる気が起きなくてさ、飽きたと言っていたんだけど、妙に心配されるんだ。
まずはゲームだけど、以前は確かに熱中していたが、今では全くやる気にならない。
特にモンスターと戦うようなのは全くだ。
なんせモンスターと言えばオレの配下になるんだし、なんでそれを殺さないといけないんだと思ってしまうんだ。
しかもだよ、ダンジョンマスターになるってゲームもありはしたが、それが全く面白くない。
ついついあちらのオレの迷宮と比べてしまうんだ。
しかも殺さないとポイントにならないとかってさ、すぐさま討伐対象になっちまうだろ。
そんな迷宮、運営する気にもならんぞ。
しかも、迷路とかにもやたらポイントを食うし、リソースの問題とかであんまり複雑には出来ないんだ。
だから迷路にしてもすぐに攻略されて、直接対決になったら殺られちまうんだ。
今のオレの身体能力なら余裕な雑魚に、あっさりと殺されてしまうんだよ。
そんなのやってられっかよ。
次にオレが向こうでやっていた日課がちょっと拙いんだ。
なんせ運動が苦手だったはずが、毎朝ランニングとかやると変に思われてさ、心境の変化とか誤魔化していたんだけど、それも妙に心配されている。
オレは迷宮の中を走り回り、罠を設置し直したりしていたんだ。
確かに最下層でもやれるけど、実際に見ないと不具合ってのは判らないものだ。
オペレーションシステムでの設置だと、確かに最適化はされているんだけど、現実に即してない場合があるんだよ。
判り易く言うと、階段の途中に罠があれば引っかかり易いとシステムは判断するものの、サイズが大きくて丸判りになるとかさ。
まあそうだよな。
誰が階段の途中にあるトラバサミに引っ掛かるよ。
そんなバレバレな罠とか、回避するに決まっている。
色とかもそうだ。
確かに指定の位置の地面の色と合わせていても、人が歩けば色が変わるよな。
真っ赤な血とかさ。
だから血の海は迷宮に吸収され、真っ赤に色づいた罠がポツンと置いてあるって、そういう状況になっていたりするんだ。
確かに致死の罠というのは無いけど、出血しない訳じゃない。
だからどうしても罠が汚れて、隠蔽の体を成さなくなるんだ。
そういうのは現地に行って確かめないと判らないようになっているから、オレは作動した罠の再設置は現地調査をやってからにしていたんだ。
そういう理由で走るのが日常になっていた事もあり、怠けていたら走るのが辛くなっちまう。
だから毎朝のランニングをやっているんだ。
後は衣服かな。
かつては拘りの服装とかあって、親が買った服とか嫌がっていたものだ。
だけど今ではそんなのどうでも良くなって、言われるままなファッションになっている。
そういうのを全て鑑みて、以前とは違うと思われているんだ。
でも、今更どうにもならないよな。
人外なのは不可逆なんだしさ。
◇
「おはよう」
「あら、おはよう、山口君」
「あ、あの、おはようです」
「新浜さんだっけ? おはよう」
「おはようございます」
妙におどおどしているな。
こんなの見ると嗜虐心が刺激されちまうぜ。
おっと、いかんいかん。
こんなパンピーな奴らの中で、こんな気配は拙い。
しっかし、こいつはきついな。
授業でも同様だ。
やたら偉そうな先生とか、その命を散らしたくなる。
拙いな。予想以上にきついぞ、この環境は。
ああ、ストレスが溜まる。
どっかに悪人は居ないものか。
さすがに善人はちょいと殺し辛いが、この世界には神託とか無いだろうから、殺しても問題無いのかも知れんが、オレは慎重派なんでな、そういう余計な危険には手を出したくないのさ。
◇
何とか今日もやり過ごしたと思い、それでも日々強くなるある種の渇望。
この法治国家では決して認められないその渇望は、あちらの世界では起こり得なかったものだ。
このままだと何時か暴発しそうだが、何とかならないものか。
「おめぇ、最近、増長してるそうやな」
おおお、もしかして荒事へのお誘いか。
「それがどうした」
「ケッ、マジに増長してんぜ。おうっ、今日、河川敷に来い。いいな」
「いいだろう」
いやぁ、待ち焦がれた展開だな。
殺っても良いんだろ、全員、なあ。
となると、範囲指定で30階層の大広間にご招待しちまうか。
あそこならどんな声も地上には届かないし、逃げ道はひとつしかない。
しかもカギが掛かっているから、開錠スキル持ちじゃないと開かない仕組みだ。
オレはワクワクする心を隠しつつ、ひたすらその時を待っていた。
◇
オレがこんな身体になってからというもの、食への意欲もかなり消えちまい、単なる栄養補給となっているからなぁ。
もっとも、こんな世界ではそうそう人の血脈を破る訳にもいかん。
栄養素と言えばあれが最高でお手軽なんで、すっかり吸血鬼していたしな。
そういう倫理やら道徳も、ダンジョンマスターになってから消えちまったんだ。
まあ、元々、冒険者の頃にも何人も殺しているし、薄かったんではあるんだけど。
殺らなきゃ殺られる時に躊躇していたら、支払うのは己の命って世界だったからな、自然とそうなっていったんだ。
そうしてダンジョンマスターを討伐して、そのまま凱旋になると思っていたんだがなぁ。
うっかり手袋が破れていたのに気付かず、素手で触っちまったからさあ大変。
気付いたらすっかりダンジョンマスターとしての登録が終わっちまってたってな訳さ。
しかもご丁寧にパーティメンバー全員が気絶状態でさ、オレが最後の砦での対抗劇でさ、ギリギリ討伐に成功しての交代劇。
しかもだよ、呆然としていたら《素体5個確認、回収しますか? 》なんて出るんだよ。
素体ってのが気絶したパーティメンバーの事だってすぐに判ったよ。
そうして保存した素体がどうなるかもな。
なのにオレはイエスと答えたんだ。
そうしてあいつらはオレと迷宮の糧になっちまった。
そしてあいつらが使っていた武具は、迷宮の中の宝箱に分配配置されたんだ。
だからさ、交代の時にきっと精神か何かをいじくられたんだろうと思う。
だからあんなにあっさり、かつてのメンバーを殺せたんだろう。
今でも当時の事を思っても、別に罪悪感なんかは皆無なんだ。
あの時は食糧確保としか思えなくてさ、今から思えばそれこそ、洗脳されたんじゃないかってぐらいに思う。
だから人類の敵という言葉も納得出来たし、人間を糧と思えるようになったんだ。
だけど今はまだ、人間を糧にしていない。
と言うのも、かつて人間の国に潜入した時に使っていた、保存食料があるんだよ。
大量に隣の国で荒らして手に入れた大量の食料はまだ、個別容器に入ったままオレの倉庫の中にある。
そいつを毎週飲んでいれば、腹も減らないし喉も渇かない。
だけど親のメシは毎日食っている。
味は判るが栄養には恐らくなってはいまいが。
だから本当に楽しみなんだ。
◇
30階層の大広間に受け入れの陣を描く。
そうして河川敷に向かい、たむろしている奴らを指定範囲に入れて、強制転移発動。
「なんやこれ」
「何処や、ここ」
「どないなってんねん」
ふふん、急に転移したから慌ててるな。
「やあ、皆さん。ようこそ、我が迷宮へ」
「てめぇも巻き込まれたクチだろうが、何が我が迷宮だ。この中二病が」
「くっくっくっ、面白い事を言うな」
「なんやと、この野郎。おい、こいつ、絞めちまおうぜ」
「ああ、なんや判らんが、とりあえずぶっちめるか」
「ナイフ解禁よろ~」
「まあ、待てや。光もんは後や」
わらわらと餌が近寄ってくるよ。
自ら食われに来るよ。
ああ、待っていたんだ、この時を。
今日は思いっ切り発散させてもらうからな。
そうしないと爆発したらおしまいだからさ。
「ど・れ・に・し・よ・う・か・な」
「死ね、この野郎……何、くっ、離れ、ねぇ」
「いただきまーす……カプリ……ゴクリゴクリゴクリ」
「お、おい、こいつを引き剥がせ」
「なんやこいつ、マジ飲んでるぜ」
「こいつほんまに中二病か? 」
「はようせぇぇ、意識が……もう、あかん」
「くそ、追いかけろ」
飲みながら走る。
ああ、美味いな。
最高だぞ、この味わい。
あれ、出なくなったな。
絞ると出るかな。
ベキボキバキ……
ああ、出た出た。
「あいつ、殺られちまったぜ」
「化け物だろ。人間の身体をあっさりとあんなに丸めて」
「うおおお、こっちに来たぁぁぁ」
「お替わり頂戴」
「離れろ~化け物ぉぉ……痛い、痛い痛い。こいつ、剥がしてくれぇ」
(無理だろ)
(逃げ道は無いか)
(あそこに扉があるぜ)
(おお、それだ)
(太一には悪いが、犠牲になってもらうしかないな)
(ああ、そうだな。あんなのに構ったら、オレ達まで飲まれちまう)
「助けてぇぇぇ、嫌だぁぁぁ、死にたくないぃぃ……せんばーい、助けてぇぇ、お願い、だ、ぁぁ、ああ……」
ああ、実に美味だな。
さてと、後は素体倉庫に入れとくか。
ふむ、ついつい夢中になって2匹飲んじまったが、これからも中々得られないとしたら、残りは大事に飲まないとな。
《オペレーター・システムスキル発動、素体保存》
(身体が、動かない、声も、出ない、あれ、眠たく、なって……)
最下層のスライム水槽の中に雑魚の死体を投入し、証拠隠滅と。
あいつらも部下だが、あいつら、本能しか無いんだよな。
だから気兼ね無く使い捨てられると言うか、あんまり部下って感じじゃないと言うか。
さて、匂い消しにはレモン果汁100パーセントのこのジュースで決まりだ。
「すっぺぇぇぇ」