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第三話 本当に夢なのか?

ブクマありがとうございます。

励みになります。


改訂)表現と誤字を修正しました。

 

 それにしてもおかしいな。

 この夢、覚める気配が無いんだけど。


 あれからもう1ヶ月が過ぎたと言うのに、相変わらずこのままだ。

 そういやニュースで不良グループが行方不明とかって出ていたな。

 夢なのに辻褄が合うとか、おかしな夢もあったもんだ。

 彼らは今頃、素体倉庫の中だな。

 

 死の寸前を探知して素体倉庫に転送するように設定してあるんだ。

 だから食料も無しに潜った結果、餓死寸前で死なないように送るんだ。

 もっとも、別名、食料倉庫とも言うんだけどね。


 本当に夢か、これ。


 おかしいんだよ。

 こっちでのオレは17才、高校2年生だ。

 これぐらいの男子と言えば、女の身体を見るだけで本能が疼いていたはずだ。

 なのに全くそんな気配すらも無い。

 確かにダンジョンマスターになってからと言うもの、そんなの消えちまってたが、夢ならばこそ復活しても良いんじゃないか。

 それが戻らないのはこれが夢じゃない証拠にならないか?


 それはともかく、今、クラスの女子の態度が変わっている。


 かつては蔑んだような目で見られていたものだが、そういうのが少なくなってきたんだ。

 思えば、欲望でギラギラしていたのを敏感に感じていたんじゃないかと思っている。

 だからそれが消えた今、新鮮さを感じているのかも知れない。

 クラスでもオレと後数人ぐらいかな。


 もっとも、他の奴らはリア充とか言う奴らだ。

 相手が居ないのに平然としているのはオレぐらいだ。

 なんかさ、幼稚なんだよ、クラスの奴らが。

 かつてはオレもあれに混ざっていたんだなと、感慨深げに見ていたぐらいだ。


「あれ、山口君」

「橋崎か、どうした」

「山口君、なんか変わったね」

「ああ、つい最近、猫が剥げちまってな。まだまともに被れてないんだ」

「じゃあ今のが素なの? 」

「まあそうなるかな」

「そのほうが良いよ」

「確かにこのほうが楽だが、こういうのって不良に目を付けらないか? 」

「今の山口君って、ちょっと凄みって言うのかな。だから大丈夫だと思うよ」


 凄みねぇ……もしかして、殺気でも漏れたか?


 絡まれるとついうっかり殺っちまいそうになるからな、それを抑えるのに少々苦労したが、その時にでも漏れたかな。

 いかんな、人類の敵を長くやっていると、ついうっかり殺しそうで油断ならないぞ。

 こいつも色気より先に、急所云々で見ちまうしな。

 とことん人外になっちまってんだな。


「どうした、暇か」

「う、うん、まあね」

「甘いものでも食いに行かねぇか」

「もしかして、奢り? 」

「ああ良いぞ。好きな店に案内しろ。食い放題にしてやる」

「うわぁぁ、本当に良いのね」


 そうして女の後に付いていき、駅前の甘味屋に共に入る。

 早速、あれやこれやと頼む。


「山口君も甘い物好きなのね」

「ああ、オレも甘党なんでな」

「ちょっと意外かな」

「そもそも頭脳労働には甘い物ってのは定番だぞ。勉強するなら甘い物は必要だろ」

「そうよね、そう思うよね」

「なんだ、家で何か言われたのか」

「食べていると太るとか何とか煩いの」

「糖分だけでは太らないだろ。脂分とかを過分に摂らなければ問題無いと思うがな」

「やっぱりそうなのね」

「まあ、大量に食うとその限りじゃないぞ」

「あはは、やっぱし」


 そうして汁粉だの羊羹だのと……


「山口君って古風なのかな」

「爺さんみたいな、とは言わんのか」

「あはは、ごめんね。うん、そう思っちゃった」


 実際、爺さんだしな。


 けどこういう代物は向こうでもダンジョンポイントを使うしか方法が無かったし、それならそれでとコスパ重視していたら自然とこの手の奴が好きになっただけだ。

 お洒落なスイーツとか、ぼったくりポイントだったしよ。


 羊羹1本が5万ポイントだとしたら、モンブランとか50万ポイントとかだったからな。

 普通は10ポイントもあればそれなりのメシぐらいにはなるんだし、割高なのは確かだな。

 だけど砂糖とかが本当に高い世界で、だから仕方なく交換していたってのが実情だ。


 もっとも、最近では85階層に畑作っての栽培も始めたから甘い物に苦労しなくなりはしたが、

段取り整えるまで数百年とか、余りにも遠かったと思う。


 まずは自分の迷宮がある程度の難易度になったのを確認した後、ダンジョンコアに全てを委ねて迷宮を離れ、人間に混じって実績を積みながら誘致なんかもやり、後の幹部の育成をやりながらも少しずつ信用を得て産地まで到達し、そこで下働きから始めて農園を営むまでひたすら働いたんだ。


 そうして満を持して迷宮に誘致したんだ。


 もうね、人類の敵ってのはそれぐらい、慎重にやらないとすぐ特定されるんだ。

 だから代替わりを演出して、あたかも子や孫に継承したように見せかけて、少しずつ馴染んでいったんだ。

 だからオレの農園に疑いの目は来ない。

 今でもあの農園は代理人の一族が経営しているはずだ。

 当時は可能な限りの輸送をやっていたものだが、自作の目処が立ってから少しずつ量を減らしていき、今では滅多に連絡はしない。


 それでも連絡したらすぐに送ってくれるから、未だに恩とか感じているのかも知れない。


「ふうっ、食った食った」

「羊羹1本食べちゃったね」

「ああ、家じゃ甘い物とかあんまり食べなくてな」

「おやつとは出ないの? 」

「いや、甘い物は苦手って事になっているんだ」

「え、どうして? 」

「母さんが時々ダイエットしててよ、なのに目の前で食えないだろ」

「優しいのね」

「いや、母さんがオレを口実にするんだ」

「あはは、そうなのね」

「だからまぁ、オレが嫌いって事にしておけば、口実が無いから諦めるだろ」

「成程ねぇ」


 そんなこんな話していたが、飲み物だけでの話にも限度があり、店を出る算段となる。


「さてと、この後はどうする? 」

「そうね。このまま帰るのも」

「帰るなら送っていくぞ」

「うーん、他にちょっと寄り道、とか」

「それはもしかして、不順異性交遊のお誘いか」

「うっ、山口君ってやっぱりそういうの興味あるのね」

「いや、特には無いぞ」

「えっ、でも」

「なんせ羊羹が好きな爺さんだしな」

「あはは、そうだったわね」


 興味からの誘いっぽい水を向け、反応が鈍い事に安堵するってか。

 そして肝心な事だが、こいつのオレへの感情は興味と好奇心のみだ。

 つまり、これは調査になるのかな。


 だからいくらか情報は渡したが、その程度の情報なら特に問題は無い。

 そうして好感を持つまでに到ったが、恋する乙女って感じじゃない。

 なのに最初に声を掛けたのは、やはり調査が目的なんだな。

 さて、どんな奴の依頼なんだろう。


 さすがにクラスメイトを洗脳するのはちょいとな。

 まあいいか、何かのアプローチがあるなら、それを待てば良いだけだ。


 これが夢でないのなら、その日を待てば良いだけだ。


 ◇


 やっぱり夢じゃないぞ、これ。

 いくら何でも長すぎるだろ。


 もうかれこれ2ヶ月になるというのに、全く覚める気配も無いんだぞ。

 となると、どうしてこんな事になっているかだが、それがサッパリ判らないときた。

 確かに帰りたいと初期は思っていたが、今となっては夢に見るぐらいで良かったはずだ。

 なんせオレの自慢の迷宮には、オレの配下が何人も居るんだ。

 あいつらを残してというのもアレだが、せめて伝達ぐらいはしておきたかったな。

 まあ、そのうちまた何とかなるかも知れないし、流れるままに流されるしかあるまい。


 そういや、あれからもあちこちで金貨を売り、今では数億の金が倉庫に眠っている。


 もっとも、そいつは迷宮に使うから日々減ってはいるんだが、無くなればまた偽造しても良い。

 なんせ偽造した時のデータが残っているから、作るなら今すぐでも作れる。

 この世界には500円という硬貨があるから、そいつをベースに錬金すれば良いだけだ。


 あっちじゃ大銀貨をベースにしていたから、両替が大変だったもんな。

 銀行とか無いし、両替商は手数料取りやがるし。

 かと言って殺したらヤバいし。


 まあ、洗脳して尖兵にしたけどさ。

 

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