第一話 望郷の夢?
この作品は思い付くままに書いています。
なのでちゃんとした物語がお好みの方は、そのままブラウザバックしてください。
他に読む物がなく、しかも暇で仕方なく、どんな物でも構わないという方以外は耐えられないと思います。
しかも不定期連載だったりします。
それでも宜しければどうぞ。
これは夢か? そうだよな。
オレが何度……いや、もう数え切れないぐらいに熱望した光景だ。
ああ、しかしこのベッドの質感、まるで本物のようじゃないか。
いわゆる仮想現実ってこんなのじゃないのかな? なんてな、ハハハ……
『さとし~起きなさい~遅れるわよ~』
ああ、そうだったなぁ。
こうして母親が起こしてくれてたんだったな。
懐かしいなぁ。
もう……どれぐらい過ぎたのか忘れちまったが、確かこんな風に……
例え夢だとしても、覚めたくないな。
ああ、こんな夢が見られるなら、何時までも……
「何してるのよ。遅れるわよ」
「ああ、ごめん、母さん。うん、用意するよ」
「あらあら、今日はやけに殊勝ね。何かあったのかしら、うふふっ」
オレにまだ涙なんてものが残っていたとはな。
とっくに枯れ果てたとばかり思っていたが、やっぱりこれも夢だからか。
懇願しても全く出てくれなかった母さんが、遂に夢に出てくれたんだ。
嬉しくないはずがないじゃないか。
でも、思ったより老けてなくて、やっぱり夢だからだろう。
まるでオレが転移する直前の朝に見た頃のままだ。
そういうところは夢なんだなぁ。
学校か、それもまた懐かしい。
行ってみるか、久し振りに。
それにしてもこの身体も当時のままか。
となると、数々のスキルに身体能力も無いんだろうな。
《身体情報開示》
《サトシ=ヤマグチ》
《情報は秘匿されています》
ああ、やっぱり夢だ。
うん、オレのステータスはこうして封鎖しているんだ。
かつては一喜一憂していたが、もうそんなのどうでも良かったしな。
けど、これが出るって事は……
《収納空間》
ああ、これは最近の倉庫だな。
一時、興味のままに色々やったのが全部あるからなぁ。
そういや……ハハハ、なんだよ、この枚数。
調子に乗ったとはいえ、よくもまぁこんなに拵えたもんだ。
データのままに拵えた贋金……カエデの葉の金貨。
望郷の念も手伝ったのか、当時は本当に熱中したもんだ。
どうせ夢なんだし、これを売っ払うか。
先立つものは金だしな。
◇
学校帰りにちょいと寄り道。
「1枚が16万5512円だね」
「どれぐらい買い取れる? 」
「そうですな。どれぐらいありますか」
「100枚いけるか」
「そんなにも……少々お待ちください」
「早くしてくれよな」
「畏まりました」
意外と高いな。
まあ、1オンス金貨だからそんなもんか。
それにしても覚めなくて嬉しいが、学校が終わってもこのままなんだな。
しかもスキルが使えるからこうして変装してのあれこれもいけるし、この夢サイコーだぜ。
「困ります、そんな事は」
「頼むよ、ここ1週間の最低額でさ」
「参りましたな」
信憑性を出す為に設定を出してみた。
確かにスキル《詐術》もありはするが、下準備というか背景はあったほうが良い。
つまりこうだ。
オレはどっかの小さな輸入代理店経営で、会社の経営が思わしくないんで財産整理をしてたところ、妻にへそくりの金貨がバレ、全部処分する羽目になったというもの。
1週間前に通達されて、今日が期限なのだと。
妻には換金中と言ってはいるが、手放したくないと今まで持ったままだったと。
なのでそれを利用して、ここ1週間での最低額で買い取った事にして受領書を書いてくれと頼んだのだ。
2日前に少し落ち込んで16万5145円らしく、その差額×100をへそくりにしたいからと偽装をお願いしてみた。
つつましやかな偽装のお願い。
それこそがこの嘘を真実足らしめるもの。
「今回だけですよ」
「恩に着る」
よし、いけた。
僅か36700円の嘘。
女房に尻に敷かれた哀れな野郎が願う、ささやかなる抵抗。
それをメインにすれば、金貨自体の出所はもはや気にもならないと。
完璧だな。
かくして額面1651万4500円、内実1655万1200円獲得した。
ご丁寧にわざわざ別に金を分けてくれるとか、完全に信じているな。
「ありがとう。これだけあればまた、以前のように」
「その代わり、金貨の購入はここでお願いしますよ」
「ああ、判ってるさ。その時には頼むな」
「またのご来店を心よりお待ち申し上げます」
もう来ないけどな。
そうすりゃメイクマネーに失敗したと思うだけだろうし。
いきなり誤字ハッケン……修正しました(汗