鶏肉好きの鳥山さん
完全にふざけました(笑)
暇つぶしにどうぞ
アナタはいくつの「とり」を見つけられましたか…?
鳥山さんは香港のビクトリアに住む紅茶と鶏肉好きの鳥人だ。
日本人だがいろいろあって此処に引っ越してきた酉年生まれの優男。
背が高くやせ型だが胸は鳩のように膨らんでいてふかふかしている。
本好きでよく読書をしているが目があまり良くないのか
暗くなると本を読むことを止めてしまう。
しかし、読書が好きなだけあって
物知りであるため近所の人たちからはとりわけ信頼されている。
そんな鳥山さんの朝は早い。
一番鶏が鳴き出す前に起きて朝の支度をして朝刊を取りに行く。
そして、千鳥格子模様のテーブルクロスのかかった窓辺のテーブルで朝食をとる。
メニューは鳥山さんお手製のうぐいすパンと紅茶。
朝食のお供に選んだ本は『TRICK―トリックthe novel』
…取り間違えたようだ。
昼は風見鶏が見える自慢の庭で野鳥の会のメンバーを招きお茶会。
極楽鳥花やオーニソガラムが咲き誇る温室があり
野鳥がよく訪れその姿を撮り放題できる
鳥山さんの庭はメンバーに大変好評だ。
たくさんのケーキと紅茶が庭のテーブルにならんだ。
選り取りみどりで迷ってしまう。
時間は流れてゴジュウカラの話で盛り上がっていたとき、
ふと見えたバードバスにアカメモズモドキが溺れていた。
急いで救出したが溺れていたからかアカメモズモドキは弱っていた。
とりあえず暖めなくてはと鳥山さんはそれをタオルで包んだ。
しばらく温めているとインコを飼っている
メンバーが自宅からミミズをとってきてくれた。
食べさせると
だんだんアカメモズモドキは元気になってそのうち
窓から颯爽と飛び立った。
その様子をメンバーと観察しているうちに烏が夕暮れを知らせに来た。
鳥山さんはメンバー達が見えなくなるまで見送っていたのだが、
はたと手を止め大きな鳩時計を見やると
「大変だ」
と呟きいそいそとどこかへ出かけてしまった。
やっと帰って来た鳥山さんの手には本が1冊。
近くの書店に取り置きして貰っていた様だ。
その書店は鳥山さん行きつけで
店主が世界中を飛び回り蒐集した稀覯本が山のようにある。
本好きの鳥山さんには堪らない場所だ。
特に用事がなくても訪れては世間話などをして長居している。
変人で頑固な店主も取り繕うこと無く
自然に振る舞う彼に一目置いているようで、
彼が好みそうな本をこっそり置いているらしい。
書店に長居したせいでもう夕食の時間となっていた。
今日のメニューは手羽先と里芋の煮物とごはん。
それと鶏もも肉のスープ。
醤油や里芋は香港でも手に入れられるが
故郷の味を再現したくて日本から取り寄せている。
鳥山さん料理も大好き。
トリッキーな事をしたがるのでそれが鳩目…
いや裏目に出て失敗するのが玉に瑕。
だけど失敗を取り返す力に優れているので大失敗は無い。
今日もなんだかんだで完成した。
1人で優雅に食事を摂っていたのだが突然電話が鳴った。
鳥山さんが慌てて電話を取ると
相手は日本にいるお母さんからだったようだ。
取り急ぎの報告や取り留めのない話をして会話を終えた。
鳥山さんのお母さんは海外に羽ばたいていった
息子を心配しているようだった。
まるで焼け野の雉子、夜の鶴と言った具合である。
当の本人は
「いつまで経っても巣立っていった子供から離れられないんだよな。」
と呟いていた。
そんな事を言っているが鳥山さんはどこか嬉しそうだ。
ゆっくりとした夕食を終えるとバスタイムである。
実はさきほど電話が鳴った時鳥山さんは
驚いて手羽先を服に落としてしまったのだ。
服と手にべっとりタレが付いてしまったので
着替えるついでという訳だ。
ワンポイントの青い鳥が可愛いタイルの浴室には猫脚のバスタブ。
それに大量のアヒルのおもちゃが浮かんでいる。
鳥肌が立ってしまうことを警戒してそっとお湯に入ったが
鳥山さんは
「とりあえず良しとしよう。」
と1人で言い訳を述べていた。
烏のような速さでお風呂から上がると
鳥山さんは寝る準備に取り掛かる。
マグリットの『大家族』のレプリカがある寝室に向かい
緑のふちどりのある赤いパジャマに着替え、
あったかい羽毛布団に入る。
寝付くまでは『リトル ターン』を読むことにしたようだ。
しかし既に鳥山さんは睡魔に取り憑かれたようで
眠い眼を必死に擦っていた。
午前零時を報せる鳩が鳴いた。
そろそろ鳥山さんはベットに入る時間だ。
私もここらで失礼させていただこう。
え?私は誰かだって?
鳥山さんの家に住んでるシャクトリムシだ。
勝手にお邪魔して早5年。
烏兎匆匆、とりもなおさず金烏玉兎の如くなり。
2019/02/11 大幅に加筆しました。