不器用な思い2
教室に入って一番にすることは、敵意がないと示すことだ。これだけだと、たいして面白くはないが害はないため放置される大人しい人間という扱いになってしまう。つまり、閉じられた空間でいいポジションを獲得するには
敵意がないと示し、一緒にいて楽しく、得になりそうだと思わせることが大切だ。そのために、空間に所属する人間の力関係を見極めて、笑顔で挨拶、仲間には楽しい話題を提供する。もちろん仲間外にも気配りを欠かさない。
これをぬかりなく行い、さらに自身の容姿は悪くはなかったので、私はすぐに望み通りのポジションを築くことができた。
「じゃあよかったじゃない」
ユキの言葉は最もだ。私はそれを望んでいたのだ。多くの人に愛されて、羨ましがられて、人気者。望んでいたものを手に入れたはずだったのだ。
「なにが不満なの?」
これは、私自身問いかけていることだ。望んだ立ち位置にいるのに、なにが不満で、なにがかなしい。
「私は…」
私は、きっと、他の人がねたましい。幸せそうな人がねたましい。
必死でマイナスから這い上がってきたのに、何の苦労もなくいい場所からスタートできる、そんな人間が、ねたましい。
だから私は、幸せな人を壊したい。
あんたたちの幸せなんて、しょせん偶然の産物なんだって、笑いながら壊したい。
そうしたらこの気持ちが晴れるかもしれない。そうしたら私は本当の意味で幸せになれるかもしれない。
「意味なんてないんだもん……!」
どれだけ作り笑いをして、楽しそうにふるまってみせても、意味なんてない。偽物だ。笑顔の下では他人を見下し、耳障りのいい言葉の裏では口汚くののしっている。
私自身は楽しくない。私自身は現状に満足していない。楽しそうな人を演じているだけであって。
だって、こんなの私じゃないのよ。
わたしはわたしがだれなのか、わからないわ。