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ユカイ  作者: 香枝ゆき
6/9

不器用な思い

腕のなかにある体は小柄だ。酒をのむように仕向けたユカイの顔は、やや赤い。どうやら、アルコール耐性がつかないのは相変わらずらしい。

思うようにからだが動かないので、彼女は不満げだ。

「はなしてよー」

「やだ」

「はなせばかユキ」

「いーやだ」

「はなせー!!」

じたばたと暴れるが、なにぶん酔っぱらいだ。十分あしらうことができる。

ユカイも体力の無駄だと感じたのか、不意に抵抗するのをやめた。

「……なんではなしてくれないの」

ユカイの問いに、さて、なぜ自分はわざわざ飲ませたのだろうかと自問自答する。

「酔っぱらってさっさと寝てくれたらいいなーって思ってたんだけどさ、案外寝なかったね」

さらりとなんでもないふうにいってみたが、ユカイは聞き捨てならなかったようだ。

「だれか寝るかバカ!むっつりスケベ」

これはひどい言われようだ。誤解されて友人関係にヒビを入れたくはないため、精一杯抵抗を試みる。

「別にやらしいことしないよ」

「まじめと定評のユキくん、じゃあなんで酔わせて眠らせようとしたのかな、あと今のこの状況はなにかな?」

「年頃の男の子が年頃の女の子をぎゅーってしてるね」

「……ユキはなに考えてるの?」

「なにも」

ユカイはやや辟易したようだ。

「……強いていうなら、ユカイの幸せ」

ユカイは緩慢に首を動かし、私の顔をみた。

「帰り道といいさっきといい、ユカイはどうも破壊衝動にかられてるみたいだからさ。全部言ってみ?」

だめ押しのように、ユカイを抱きしめる力を強くする。自分の指を組んで、手のひらは彼女に触れないようにした。

「はははっ」

突如大きめの笑い声が腕のなかから聞こえてくる。動揺を見せないようにして様子を伺うと、彼女は口元だけ笑っていた。

「ユキにはかなわないなあ」

私にとって、私を振り回すことを許した存在が、こんなにも弱気になっていた。

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