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ユカイ  作者: 香枝ゆき
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純粋無垢な悪意2

私が目を覚ましたのは、自分のベットの上だった。目がしょぼしょぼしているところをみると、昨日の私は泣いていたらしい。このところずっと泣いている気がしている。いちいち覚えていられない。

父母のけんかはいつものことだから、 私は傷つかない方法を覚えた。当事者意識をなくすのだ。

さて、昨日はなんだったろうか、おまえは進学できないと2時間みっちりいわれたことだろうか。願書をすてられたことだろうか、なんだっただろう。思い出せない。

朝の5時、私は一人起き出して、シャワーを浴びることにした。これでもかというほどたまった目やにをごしごしとこすって落とし、ごわごわになった髪の毛を洗ってやる。

この時代に、家長がなんでも一番というクソみたいなルールがどれほど採用されているのだろうか。すくなくとも、この家には適応されている。風呂も例外ではない。クソみたいだと思いながら従っているわたしもクソだ。なぜ抵抗しないのだろう、牙をぬかれたのだろうか。

屈していないはずと自己分析していたけれど、いつのまにか牙をとかされたのかもしれない。

シャワーのあと、適当にテレビをみようとして、チャンネルをつけると、住宅メーカーのCMが流れていた。四人家族で、かえりたいとかいっている。むかついてチャンネルをかえた。今度はソースのCMで、家族団らん。意地になって別のチャンネル。車のCMで家族のレジャー。

みる気力をなくして、電源をきった。

幸せそうな家族をみていると、たとえ虚構でもねたましくなる。

人間は平等なんてうそだ。生まれた瞬間から、スタートラインは違っている。たとえば家族。たとえば経済力。

恵まれたところに生まれ落ちなければ、ひとはマイナスからのスタートだ。

そう、突きつけられるから。

だから、幸せそうな家族像をこれでもかと垂れ流すのは。

お願いだからやめてよ。



ダサくはない、と信じている。まかり間違っても派手ではない。よくいえばシンプルな服装が、自分にとっては心地いい。髪は真っ黒で、ちゃらけた態度をとらないからか、人からは総じて真面目だと評される。初対面で真面目と言われるのに、このような容姿も関係しているのかもしれない。

それが今回は役立った。

こどもとぶつかって謝らないなんて、彼女らしくない。ここは思いっきりからかってやろうか。普段は弱味の類いを一切合切見せないから、いいネタになりそうだ。

含み笑いをしながら、私は友人に近づいていく。

「……壊したい」

かすれてはいたが、私の耳には、はっきりとそう聞こえた。友人の目には、先程の園児と母親はうつっていなかった。だけれどはっきりとわかった。彼女は、さきほどの幸せな親子を壊したいのだといっている。

私は彼女、ユカイのことが大好きなので、間違っても犯罪者にはしたくない。

「いこうか」

その場から離れた方が賢明だとおもい、私はユカイの手をひいて、園から離れた。


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