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漆黒の魔女  作者:
第1章
2/19

1.魔女の物語



この世界には幼い子供から老人まで必ず知っている物語がある。




この世には唯一人、魔女がいる。魔女は不死身で何処かでこの世界を見守っていて、500年くらい前までは人間と共存していた。日照りが続けば雨を願い、疫病が流行れば治すために寄り添った。けれど、500年前のある時を境に魔女は姿を消した。それは人間が起こした欲にまみれた過ちのせい。



人間はこの世に唯一の魔女を恐れ、使役しようとした。しかし、魔女を使役する方法がないことがわかった。だから、人間は魔女を捕らえ殺そうとした。


魔女は悲しみと怒りからか人間の前から姿を消した。

人間は魔女が消えてから気付いた。

森が川が海が、姿を変えてしまったことを。これまで、自然が豊かな姿を留められていたのは魔女のお陰だったということを。


魔女が消えて人間は自分達の犯した過ちの重さを知った。魔女が毎日、自分達のために何をしてくれていたかを知った。だか、もう全てが手遅れだった。

魔女が消え資源は枯渇し、森は枯れ、川は干からびた。


その時、誰かが天に向かって言った。

「魔女よ、本当にすまなかった。私達は滅ぶ種族なのだろう。だが、滅ぶ前に最期に貴女に謝罪と感謝を伝えられないだろうか。」

涙を流しながら言った男はある国の王だった。


魔女はその男の前に姿を現した。何故現れたのかはわからない。だが、魔女はその男からの謝罪と感謝を受け取った。

そして魔女はその男に問うた。

貴方はこの世界が好きか、と。

男は真っ直ぐ魔女を見て答えた。

はい、と。

男はその時に気付いた。魔女が泣いていることに。


魔女が去り際に言った。

「お前がこの世界の王になるのなら、世界は変わるのかもしれない。もう一度だけ私は人間を信じる。」

そう言って、魔女は地面を人撫でして姿を消した。


魔女が去り、世界は前の姿を取り戻した。そして、男はこの世界の王となった。

男はこの国の象徴を魔女とし、魔女を絶対不可侵の存在とした。



そして、500年後の今も人間は消えた魔女を愛し続けている。




「はい、おしまい。」

私は精霊の子達に誰でも知っている話を聞かせてあけだ。柄にもなく昔のことを思い出してしまったけれど。

「なんで、ディアナは人間を許したのー?」

ディアナ=テミス。唯一無二の魔女であり、私の名前。

「何でだろうね。」

私は聞いてきた水の精霊の子の頭を撫でてあげた。


私が住んでいるのは人間の住んでいる場所から少し離れた森の中。

ここには人間が来ることはほとんどない。それ程までに森の奥地だった。

あれから500年。人間は進化を続けた。

一番大きな進化は魔法が使える様になったことだろう。まぁ、魔力に限界があり個人差があるみたいだけれど。

そして、あの時の男の子孫が今もこの世界の王を務めているらしい。私はあの男の綺麗な蒼い目が好きだった。あの目には嘘がなかったからだ。

「懐かしいな。」

私はこの時、500年振りに人間の世界に足を踏み入れようと決心した。


「行くのか?」

心配そうに私を見つめるのは四大元素の精霊王達。

この世界には、基本となる火、水、風、土と特殊な光と闇の元素がある。人間達には、一人に一つその体に元素が宿るらしい。稀に二つ以上宿るケースもあるらしいけど。

「えぇ。そろそろ人間達を見たくなったの。」

「そうか。風の王ウェン、我が主との契約を成し、何時如何なる時でも従うことを誓う。」

「火の王ファイ、水の王レイ、土の王アム、我が主に忠誠を。」

「そんな契約なんてしなくてもいいのに。」

「我々がしたいんだ。」

「貴方達を呼ぶ様な事態は起こらないと思うけど、ありがとうね。」

「漆黒の魔女、お気をつけて。」

そうして私は500年振りに森の外へ出た。



私は王都に着いてとても驚いた。昔に比べ、王城は立派になりどこも神聖な空気が流れている。そして、魔法は日常的に使われているらしい。至る所から魔力の波動を感じる。

「そこの鳶色の髪に緑の目をしたお嬢さん、甘い物なんてどうだい?」

「んー、今は甘い物の気分じゃないの。ごめんね?」

「いや、いいよ!ありがとな!」

そう、私は銀髪黒眼の魔女ではなくどこにでもいそうなただの少女になっている。と言っても、髪と眼の色を変えただけだけど。

魔女は成長が遅いのだから仕方がない。今の私は10代後半の少女にしか見えないだろう。


「だれか、その男を捕まえて!泥棒よ!」

前方から女性の悲鳴に似た声が聞こえた。

「どけ!邪魔だ!」

泥棒だと思われる男がこっちに向かってくる。

「はぁ。泥棒はちゃんと居るのね。」

複雑な気持ちになる。取り合えず、こらしめようか。

(アネモス)。」

その瞬間、男の体が浮いた。

「え、うわ、おっ!?何だこれ!降ろせよ!」

「降ろす訳ないでしょ。バックは貰うわね。」

「あ、おい!」

男が何か言ってるけど無視だ。

「はい、どうぞ。」

「ありがとうございます、助かりました。」

「いえいえ。」

その時、野次馬を掻き分ける様にして騎士団らしき人達がやって来た。


「泥棒が出たと聞いたが?」

シルバーの鎧に身を包んだ、背の高い男が周りの人に確認する様に聞いた。

「あいつです!」

野次馬が差した先には私がまだ浮かせたままの男がいた。

「丁度良かった、連れて行く手間が省けたわ。」

急いで騎士の元に男を降ろした。

「犯人確保のご協力、ありがとうございます。」

「いえいえ、たまたま居合わせただけですから。」

犯人の男は下を向いている。

「コノヤロウ!」

反省をしているかと思えば、突然襲いかかってきた。ご丁寧に手の上に火の玉を出して。


男は傍に居た女性を人質に私達を突破しようとしている。

「魔法はやめた方がいいと思いますよ。」

「うるさい!早くそこをどけ!」

折角、忠告してあげたのに。

「お嬢さん、危ないから我々の後ろに。」

「私は大丈夫ですよ。それより、少しだけ私から離れて下さい。・・・怪我、しますから。」

「はい?」

そうして瞬殺で泥棒は伸びた。




修正2025/4/19

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