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プロローグ

「さあ、今日もやってやりますかぁ」

 

 そう高らかに宣言し、俺は腰を手で押し、背筋を伸ばす。目の前に広がるのは、赤茶けた砂に大地一面が覆われている荒野。建物はもちろん、動物も人もいない。そんな土地で俺はとあるアルバイトをしていた。

 

 崖を勢いに任せて滑り降りる。足と接触したところから、霧のような砂埃が舞う。ここに来たばかりの頃は、こんなことできなかった。人は成長するだなあ、と他人事のように感じる。

 

 崖を降りたところから数分歩いたところに俺の仕事場がある。タイムカードなんて必要ない。なぜなら、仕事の成果など一目瞭然だからだ。

 

 巨大な穴――それが俺の仕事場だ。ただ、ここで穴を深く深く掘り続ける。それが俺の仕事であり、現在の生きがいだった。

 今日もここで作業をする。穴の深さは約二キロメートル。嘘のようだが、事実である。俺がここに来た数年前より五百メートルほど深くなっている。つまり俺が五百メートルほど掘ったということだ。自分でも誇らしく思うのと同時に、にわかに信じられない。

 

 俺は持ってきたスコップを片手に持ち、簡易エレベーターに乗り込む。こいつで一気に穴の底まで下降する。前は安全性が気がかりだったが、今はどうだっていい。どのみち何時死ぬかなんて判らない。日本にいたって、どこにいたって、死は避けられない。

 エレベーターから箸で金属を叩いたときのような音がなった。最下層まで着いたらしい。俺は気を引き締め、ヘルメットを深く被る。

 

 降りたところにある作業場には、もう光が灯っていた。俺が働く定時の十分前から付くようになっている。実際俺がいつもここに付く時刻は定時の五分以上前なので有難い。ここは明かりがなかったら本当に真っ暗なんだろう。俺は昔から暗いところが苦手だ。しかし何故今俺はこんな穴の中でなんて仕事をしているのだろうか。不思議だなあ、と他人事のように思う。

 

 俺の仕事はただこの穴を縦に広げるだけでいい。正直、そんなことをさせるオーナーの意図は掴めない。オーナーはどこかの大学の教授らしいから、なにかの実験か調査なのだろうけど、俺にはどうでもいい。俺はこの仕事が好きだ。ただ一人で、しかも閉鎖的な空間で仕事ができるんだ。その上給与も良い。実に都合がいい。しかし、なぜ一人なのだろうか。別に人と関わりたいわけじゃない。けれどこの仕事は全自動の機械を使ったほうが上手くいくと思うし、せめて大人数でやったほうがずっと効率的だろう。なにか一人でやる意味があるのか。まあ、どうでもいい。俺は一人になりたかったんだ。

 ただ無心にスコップで掘り進める。この仕事の条件として体力を求められたが、俺は大学時代にラグビー部に所属していたため体力には自信があった。実際きつい仕事だが、想像よりはずっと楽だった。一日の稼働時間も三時間と短い。しかし月に貰える給与の額は中堅の公務員並と破格。ここには店や娯楽施設といった類が一切なく、貯金は貯めに貯まっている。現在なにかに使う当てはないが、いつか日本に大きな家を買いたいと思っている。それはもう少し先になりそうだが。

 

 ふいに、こつとスコップになにかが当たるのを感じた。無性に気になって、掘り返してみる。最初は石かと思った。しかし、まったく別種のものだった。

 砂を払ってみると、虹色に光る宝石の神々しいその姿を露見させた。


「なんだこれ・・・・・・?」

 

 この宝石の光の源はなんなんだろう。魔法なんだろうか。

 ・・・馬鹿な。魔法の石なんて物はそうそう簡単に手に入らない。近くで竜が守っているなんてのが相場だ。おとぎ話では。

 俺は深く溜息をつき、興味を失ったその宝石を近くに投げ捨てる。俺には必要ないものだ。たとえ価値があったとしても、金には困ってないし、宝石なんてものにはてんで興味がない。

 

 スコップの動きがぴたっと止まる。

 

 ・・・待て。もしかしたら、オーナーである教授はこれを探していたのかもしれない。俺はただこの穴を掘れと言われただけだが・・・・・・。まあ、回収しといて損はないだろう。

 そう思い直し、今投げ捨てた宝石に手を伸ばそうとした。


「なっ――――!」


 虹色の宝石から発せられた強烈なフラッシュ。記者会見で見るような、数十台のカメラが一斉にシャッターを押したと思うほどの強烈さ。目を焼かれた。視界が・・・・・・。

 

 俺は酩酊に似た感覚に陥った。頭が溶けていくようだ。痛い・・・痛い!


「うぁぁぁぁぁ――!」

 

 俺の断末魔が穴全体に響き渡る。残響は止まらない。しかし、薄れている意識の中で俺は確かに感じた。そう、手で、肌で感じるように。

 

 その時、世界が変貌していくのを――。

初めまして。文章は雑。展開も雑。

完結はせずに終わると思います。

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