常夏の楽観主義者が来ました
題の通り、新キャラ登場です。
せっかくの移動陣、使うに越したことはないだろうとは思うけど、客を迎える準備もしてないのに、呼び寄せてもいいもんか?
私的には無い。とりあえずはもてなしの準備が整ってから移動陣で呼び寄せるでいいんじゃないかと霧矢さん達に言えば、彼らもしかりと頷いた。
「じゃ、移動陣が出現したってことだけは連絡しないとですねー」
「ああ、そうですね。夢未様が初めてもたらしてくださったものですからね、戸惑いも多いでしょうし、連絡だけはしておきましょう」
霧矢さんはそう言って、神官達に指示を出した。
桜の国から発信された情報は瞬時に各国にある主神殿に伝わり、そこから地方にある神殿へと伝わる仕様になっているらしい。つまり、その逆もしかりってことだよね。
便利だよねぇ。まぁ、ケイタイのメールみたいに個人に行き届くわけじゃないけど、やっぱり、情報って大事だし。
「こういうところは、さすがとしか言いようがないなぁ・・・」
さすが創造主様。いらん所に力を入れていたりするけど、こういう必要な所にもちゃんと手を入れてるんだよねー。
なんて考えながらあたふたと客を迎える準備を始めた霧矢さんと神官達を見ていた時だった。
カッ!
と、祭壇の移動陣が光を放つ。
「え!?また!?」
私、なんもやってないよ!!
ぎょっとしながら祭壇を見つめていると、次第に光が収まって、中からやたらと派手な・・・何っていうかアラブ風?な恰好の、褐色の肌をした若い男性がその場に立っていた。
「おー、すっげぇ!・・・マジで移動できた」
あ、なんか、うちのクラスの男子っぽい、この人。
「海斗殿・・・!?」
霧矢さんの知ってる人なんだ・・・まぁ、神殿の移動陣を勝手に使える立場なら、外交もやってそうだしねー。
「お、霧矢じゃん。久しぶりだなぁ?」
「ええ・・・まぁ、やると思ってましたよ。貴方は、珍しい物好きだから」
「ははっ、だろー?さっすが霧矢!俺のことよくわかってるよな!」
ニカッと笑う彼には邪気を一切感じない。まるでいたずらが成功した子どものような感じ。
あ。彼がどこの国の人か、何となくわかった気がする。
このあけすけな感じと、肌の色、工夫された民族衣装のような服・・・たぶん、この人は。
「夢未様、ご紹介しますね?―――海の国の第2王子、海斗殿です」
やっぱね!!海の国の人だと思った!!
「海斗殿、こちらの方が―――」
「夢未、様ね。お前が様をつけるってことは、この方が桜の巫女姫サマか・・・どうも!海の国の第2王子、海斗です。よろしくな、巫女姫サマ」
霧矢さんの言葉をさえぎり、無遠慮な視線を私に向けた海斗さんは、そう言って手を差し伸べる。
高圧的な態度にもとられかねない行動だっていうのに、どう見ても友好的にしか感じないのは、海斗さんに悪意が全くないからだ。
お人好しの桜の国、楽観主義の海の国ってとこね。そう考えると秋と冬が想像つかなくもないんだけど、とりあえずは仲良くできそう!
「夢未です、よろしくお願いします」
にっこりと笑って、差し伸べられた手をギュッと握る。
すると、海斗さんは一瞬ポカンとして―――その直後にぐいっと私の手を引いた。
まぁ、どうなるかはわかると思うのだけれど、私は海斗さんの腕の中に飛び込む形になってしまった。
うきゃぁああ!男性に免疫ありませんっなんてことは言わないけど!!言わないけどぉおお!!初対面の人に抱きしめられてるぅうう!!
「・・・ちょ、ちょちょ、ええっ!?」
「か、海斗殿っ!!」
戸惑う私と、慌てる霧矢さんをサラッと無視して、海斗さんは私を抱きしめて言った。
「巫女姫サマ、マジ、笑顔チョー可愛い!!すげぇ、お持ち帰りしていい!?」
「ダメに決まっているでしょう!!何のために来たんですか!貴方は!!!」
あ、霧矢さん怒ってる!!わー、これまた新鮮・・・!
「あはは!細けーこと言うなよぉ、森みたいだぞ、お前」
「細かくありません!創造主様から授けていただいた巫女姫様ですよ!無礼でしょう!!」
あう、無礼講で、って言おうとしたら先手をとられたー・・・。っていうか、森って誰でしょう?
それよりも、このノリ・・・クラスのお調子者と委員長的な感じだ・・・まさか、創造主様・・・学園ものの漫画かアニメ見てないよね?
この性格設定、日本のサブカルチャーが元ネタじゃないよね!!?いきなりツンデレとかヤンデレとか出てこないよね?!
やってそうで、すっごい怖いんですけど!!




