イチ
女性同士の性的な描写を含みます。
現代社会でありながら身分格差を感じる描写があります。
ぱちり、と眼を開く。意識が覚醒する。
一人用にするには大きすぎるベッドに、ちょうど収まるようにして私は彼女と二人で寝ていた。
むくり、と身を起こした。
私の隣に横たわる彼女の頬に手を伸ばし、こちらへ向かせる。桜色の唇と長い睫毛が目立つ、端正な顔立ちだ。
衣服は何も身に着けていない。私と同様に。お互いの身体を合わせて、ひとつの毛布にくるまっている。
肢体の線が浮き出ていて、どうにも艶かしい。
「どうしたのですか。赤音様」
起こしてしまったようで、彼女が心配そうに私を見る。
如月赤音。私の名前だ。そう呼ばれるまで、私は自分が自分であることに気付かなかった。
夢見が悪かったせいだ。私が私になる前の夢をみていて、そのせいで。
「いいえ、なんでもないわ。どうやら寝ぼけていたみたい」
時計を見やると、針は朝五時を指している。
「そうですか。てっきり、朝からご所望かと思いました」
「昨夜に十分交わったでしょうに」
「わたしはいつだって、その、なんというか。我が事ながら浅ましいとは思いますが」
彼女は俯きながら頬を染める。
貞淑さと淫猥さを兼ね揃えた、蠱惑的な表情だ。並の男なら、いや、女でもひとたまりもあるまい。
だが、今の私はそういった気分にはなれなかった。今朝見た夢のせいである。
「それもいいけれど、今はもう少し眠りましょう。貴女を起こしてしまったのは申し訳ないけれど、私はそうしたい」
「はい。赤音様」
横になる。抱き心地のいい枕のように、お互いを埋め合うかのように身を寄せる。
彼女は、如月琴峰という。如月家の養子であり、私と同年代で、私のパートナー。
そして、私専用の奴隷。