再会は戦いの始まり
「改稿箇所」
大幅な台詞の追加・サブタイの変更
外に出た風歌は、何かを探すように辺りを見渡した。
「ミルフィア、急にどうしたんだ?」
その後ろからフェイが風歌を見上げながら聞いた。
風歌は横目でチラリとフェイを見ると、すぐさま辺りに視線を移した。
「……フェイは感じない? ここに向かって来る強い魔力を」
「なに?!」
風歌の言葉に草花が生い茂る草地の周辺に気配を探る。
確かに複数の魔力がこちらに向かってくるのを感じた。
(この魔力……あいつら捕まったのか?)
フェイが感じた魔力の中には、ツィアとツェルの魔力もあった。
「フェイ、絶対に私から離れないで」
「なにをするつもりだ?」
フェイの問い掛けには答えず、風歌はその場でゆっくり瞳を閉じて深く深呼吸を始めた。
その様子を黙って静かに見つめるフェイ。
(ホントはあまりこの世界で魔力を使いたくないけれど、仕方ないわよね)
風歌は向かって来る敵の数を、感知魔法で探り始めた。
(七、八……いや、これは……フェイ?)
感知した魔力の中に、風歌は微かなフェイを魔力を感じた。
(どうしてフェイの魔力が?)
疑問に思ったその時だった、すぐ傍の茂みがガサガサと音を立てて揺れ動き始めた。
風歌は閉じた瞳を開け、その方向に目を向けた。
「……来る」
風歌が呟いた瞬間、茂みの中から二人の男女が現れた。
「「フェイ様!!」」
同時に叫んだ二人は、フェイの姿を見るや否や、急いでその傍に駆け寄った。
「ツィア、ツェル、無事だったか」
二人一緒に戻ってきた従者に、フェイはホッとしたような表情を浮かべた。
(あぁ、そういう事か……)
フェイの表情に風歌の疑問は解消された。
「フェイ様こそ、ご無事で何よりです」
「どこも怪我はしていませんよね?」
大きく肩を揺らしながら聞いたツィアとツェルの顔や腕には、草木の間を走った時に出来たのであろう切り傷が幾つも見られた。
「俺の心配より自分たちの心配をしろ、傷だらけじゃないか」
喜びもつかの間、フェイの表情は沈痛な面持ちに変わった。
「ご心配には及びません、こんなのただのかすり傷ですから」
「唾でも付けておけば、すぐに治りますし」
二人が笑いながら言っても、フェイの表情は変わるどころか、ますます重くなっていった。
そんな主にツィアとツェルはどう声をかけていいのか分からず、途方に暮れてしまった。
(まったく、主の機嫌くらい一瞬で直しなさいよ)
フェイと従者二人のやり取りを黙って見ていた風歌は、そう心の中で思った。
「はぁ、私が治してあげる」
途方に暮れる従者も、暗い顔をするフェイのどちらも見ていられず、風歌は半ば呆れたように言った。
「治すって、あたしたちの傷を?」
「他に誰がいるの?」
そう言って肩をくすめた風歌に、ツィアとツェルはお互いの顔を見合わせ、フェイは驚きの表情に変わった。
「今すぐにって言うのは状況的に無理だけど、あいつらを片付けたら治してあげる」
風歌はツィアとツェルが出てきた茂みに視線を移した。
その瞳は先程とは打って変わって、鋭くとても冷たいものだった。
「もう出てきたら? 隠れたって無駄よ」
途端に茂みの中から長いローブにフードを深く被った数人の男たちが現れた。
それを見たフェイの表情は険しいものに変わり、ツィアとツェルはフェイを庇うように少し前に出た。
(やっぱり戦闘は避けられないか、何か強そう奴がいるし)
風歌がそう思った男は他の男たちと違い、今にも恐怖心で心が押し潰されそうな、強い魔力を漂わせていた。
ツィアとツェルの二人も、男の強大な魔力を感じているのか、微かに身体が震えていた。
(結構頼りないのかと思ったけど、案外そうでもないみたいね)
風歌はフェイの従者を少しばかり見直した。
「女、大人しくソイツを渡せ」
男の一人がフェイを指差して言った。
「お断り、フェイは絶対渡さない」
「ならば、力ずくで奪うまで!」
男たちは腰に下げた鞘から剣を引き抜くと、風歌たちに向かって走り出した。
ここまで読んで下さって本当にありがとうございます。
次話をお楽しみに!