探し当てた先には
草地を削るようにして書かれた複雑な模様の円陣。
その中心には、光を纏わり付かせたツィアが立っていた。
「かなり苦戦しているな」
「そうですね」
少し離れた場所で辺りを警戒しながら、フェイとツェルの二人がツィアを眺めていた。
ツィアは探索魔法の最中だったが、始めてから既に一刻が経つ。
探索や感知などの魔法を得意とするツィアにとっては、珍しいことだった。
「フェイ様、これは罠ではないでしょうか?」
「罠?」
「あの少女は奴らの仲間で、我々の魔力を減らす為に一芝居打ったのかもしれません」
ツェルはそう言い切ると、必死に少女の探索を続けるツィアを横目で見やった。
もしもこれが罠だとしたら、これ以上の探索は意味がない。
残り少ない魔力と自分たちを追う追跡者のことを考えれば、一刻も早くこの場を離れるべきだとツェルは考えていた。
「でも彼女が奴らの仲間だという証拠はない」
「それはそうですが……」
「百歩譲って彼女が敵だとしても、その場合はお前とツィアが俺を守ってくれるだろ?」
フェイはニヤッと笑ってツェルに言った。
「当たり前です! 全力でフェイ様をお守りします!」
意気揚々と返事をしたツェルに、フェイが満足そうな笑みを浮かべていると、ツィアに纏わり付いていた光が徐々に消えていった。
「フェイ様、見つけました!」
「それで?」
光が完全に消え去ると、口元に笑みを携えビシッと敬礼を決めたツィアに、少し呆れ顔のフェイが聞いた。
「ここから一キロ程離れた場所に、微弱ですが三つの魔力反応があります。 あの少女と二人組の魔力と見て間違いないでしょう」
ツィアがここまで言い切れるのは、ちゃんとした理由があった。
魔法というのは、使えば必ずその痕跡が残るもの。
人によって考え方や好みが違うように、魔力に同じものは存在しない。
ツィアは少女が連れ去られたあの草地に残されていた魔力から、そう断言したのだ。
最も、ツィアのような感応性に特化した魔術師で無ければ、魔力の痕跡を見つけ、それを辿る事などそう容易に出来るものでもないのだけれど。
「よし、ツィア案内しろ」
「はい」
フェイの言葉を合図に、三人はツィアを先頭にして移動を開始した。
「あれか」
「はい、あの小屋から彼女と奴らの魔力をひしひしと感じます」
探索魔法でツィアが探し当てた場所に向かうと、古ぼけた小さな小屋があった。
「ツィア、小屋の周りに敵の魔力は感じるか?」
「今のところ、何も感じないわ」
ツェルの問いかけにツィアは淡々と答えた。
「フェイ様、どうやって彼女を助け出しますか? 我々の魔力はもう残り少ないですし」
「それなら心配はない、俺に考えがある」
不気味な笑みを浮かべるフェイに、ツェルとツィアはゴクリと生唾を飲み込んだ。
この話を書き終わるのに、二時間近く掛かってしまった(汗)