光の美女
「そーそ、クローの言うとーり」
濃い蜂蜜色の毛先をいじりながら少女は言う。
少女の名はアリエス・フラーレン
水の魔法を使う聖天魔術師。
見た目や言動は五、六歳の子供のようだが、実は魔法で姿を変えている変わり者。
実年齢は不明だが、噂では四十を超えているとかいないとか……
今の聖天魔術師はおろか、ゼウス女王さえも、アリエスの本当の姿を見た事がないらしい。
ちなみにアリエスは、自分が気に入った相手の名前をかなり省略して呼ぶ癖がある。
「そうですね……ところでお二人はこれから広間に?」
「あぁ、食事会も魔術師の仕事だからな」
「出ないとゼッちゃんに怒られちゃうからねー」
「ゼッちゃん? まさか、ゼウス女王の事?」
「うんっ! かわいー名前でしょ?」
顔をキラキラと輝かせ、花のように微笑むアリエスに、あのゼウス女王に不釣合いだとは口が裂けても言えない二人は、黙って愛想笑いを浮かべていた。
「あ、そろそろ広間に行かなくちゃ……」
「そうだな」
「まってまって、アリエスを置いて行かないでよー」
風歌、クロード、アリエスの三人は、昼食会の行なわれる大広間へと急いだ。
大広間の到着すると、既に他の王やその魔術師たちは席に着いていた。
もちろんその中には、ブライトとリュクの姿もあったが、唯一アイオンの姿だけがなかった。
「遅かったな、早く席に着け」
上座に席から凛とした張りのあるゼウス女王の声が響く。
「はい」
「はぁーい」
正午を告げる鐘の音が聞こえてきたのを合図に、広間の外から侍女たちが料理を載せたワゴンを押して現れた。
「さぁ、食事を始めようか」
全ての料理を運び終えた侍女たちが下がると、ゼウス女王はにこやかに笑ってそう言った。
「「いただきます」」
みな挨拶を済ませ、豪華な料理を堪能しつつ、たわいもない会話に華を咲かせていた。
その中で風歌は、アイオンが居ない事に疑問を抱きながらもそれを口に出さず、ふっくら柔らかくて香ばしい甘さのステーキを、ただ黙々と食べていた。
その様子を右斜めの席に座る炎の魔術師ブライトが、何とも複雑な面持ちで見つめていた。
「ん? どうしたブライト、そんなに食い入るようにミルフィアを見つめて……惚れたのか?」
ブライトの主、ファイスがニヤニヤと笑いながらブライトの顔を見つめる。
「違います、そんなんじゃないですよ」
「何だ、つまらないやつだ」
ファイスはフンと鼻で笑って、残っていた最後の一切れを口に運んだ。
「そういえばアイオン女王が居ませんが、国報会で何かありました?」
「あぁ、あいつ会議中に昼寝してな、罰として書物庫の掃除を命じられた」
「なるほど、それで……」
ブライトの視線が未だ風歌に向けられている隙に、ファイスはブライトの皿に残っていた肉に手を伸ばしたが、ブライトは取られる前に自分の胃袋に収めた。
クリスマスのこの日に、何とか更新できました。
次の更新は来年の予定です
お楽しみに。




