回り始めた歯車
青い空に白い雲、小高い草原の真ん中にドスンと鎮座する石の上に、少女が一人眠っていた。
「ふふっ、師匠」
彼女の口からポツリと寝言が零れた、その時だった。
ドォーンッ!
突然、遠くから何かが爆発するような、大きな音が聞こえてきた。
「な、何事?!」
彼女は慌てて飛び起きて、辺りを見渡した。
「あっ」
小さく呟いた彼女の目線の先に、ここから少し離れた林から煙が立ち昇っていた。
「火事?」
それにしては焦げた臭いが漂ってこない。
「とりあえず行ってみますか」
大きな石の上から飛び降りると、ゆっくりと林に向かって歩き出した。
「それにしても、アイオンには困ったものだわ。 連れて来ておいて勝手にどっか行っちゃうなんて」
彼女は丈の長い草木を掻き分けながら、ここに来るまでの経緯を思い出していた。
花々が見事に咲き誇る庭園のテラスに、彼女と腰まである長い金髪の女性がテーブルを挟んで楽しそうに話していた。
「そうだ風歌、これから旅行に行かないか?」
金髪女性は、突然思い付いたように目の前に座る彼女に提案した。
「これから、ですか?」
風歌と呼ばれた彼女は、紅茶の入ったカップを口に付けながら聞き返した。
「あぁ、急に政務の事など忘れてのんびりと温泉にでも浸かりたくなったのだ」
金髪女性の名はアイオン、神と魔法が織り成すこのアイリーン国の女王であり、時渡りの力を司る女神でもある。
「……相変わらず自由な女王様ですね、でもこんな急じゃ大臣や宰相が黙っていないでしょう?」
苦笑交じりで言葉を返す風歌は、別世界からこのアイリーンに飛ばされた17歳の女の子だ。
「それなら心配はない、大臣達には黙って行くのだからな」
「……」
そんなわけで風歌とアイオンは、アイリーン国より遠く離れたルディンという異世界にアイオンの時渡りの力を使ってやって来たのだが、着いた時には隣にアイオンが居らず、今に至るという訳だ。
「ホント、自己中な女神だわ。 よくあれで一国の女王が務まると思って感心するわ」
どこからともなく吹く風に、風歌の長い黒髪がサラリと靡いた。
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