第7話:告白
ヤバイ…飲み過ぎ…思考回路が…。
「ひなたちゃん、もう飲まないほうがいいんじゃねぇの?」
「いや、今日は飲むって決めてたんです!止めるなぁ。」
私は持っていたグラスをドンッとテーブルに置く。今、お酒は2杯目。けれど、酔いはかなり回ってきてた。龍樹さんは運転があるからって1杯しか飲んでないけど。
「…何してんの?」
座敷で向かい合って座っていたはずの私は、いつの間にか龍樹さんの隣に移動してきていた。
「う?」
「いや、だから、なんで隣にいんのって…。」
「あぁ−、あたしが隣にいるのが嫌なんだ。そうなんだ。はいはい。」
私は四つん這いになって元の位置に戻る。龍樹さんは少し困惑した様子だ。
ごめんね、龍樹さん。困らせたいわけじゃないんだけど…。
「すねんなよ−。」
そう言われても私は頬を膨らませたまま、そっぽを向いていた。
「こっちに来たいの?」
目は合わせないで、首だけ縦に1回振る。
「何で?」
「…だって、今日1日あたしの彼氏だよ?だから、何してもいいの。」
酔いに任せてそんな事を言う私に、龍樹さんは真剣な顔で問いかける。
「ちょっと待て。お前の好きな奴って誰や?」
「…。」
私はびっくりして酔いが一気に覚めた。体が凍り付く。『どうしよう、どうしよう』って頭の中でリフレインしてる。
「ひなたちゃん?」
私はゆっくりと龍樹さんと目を合わせると、ただずっと黙っていた。その意味が伝わったのか、龍樹さんはため息をついて俯いた。
「…ごめんなさい。困らせるつもりはなかったんですけど。」
「いや、ひなたちゃんの気持ちは嬉しいよ。」
「あたし、別に彼女との関係壊そうとか考えてるわけじゃないですから。ただ…気持ちだけ伝えたくて。だから、今日だけ思い出に恋人として龍樹さんと一緒にいれたらなぁって。明日から全然普通にしてください!あたしも全然気にしないんで。」
「う−ん…わかった。元から今日限定で彼氏役ってつもりだったからな。」
龍樹さんは優しく微笑んでそう言うと、唐揚げを一つ口に入れた。
そう、今日だけは思い出に…。